㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
「そうですか!あの奥さんたち、ちゃんとホームに入られましたか!」
一日置いた後、会ったユニはソンジュンからホームに無事入った母子の話を聞いて手を打って喜んだ。
ジェシンはその日も二階の事務所で弁護士としての仕事をしている。ソンジュンが行った昼頃にはユニは既にいて、三階の事務所の窓は開けられ、恒例行事のように洗濯物が奥の部屋に干されていた。ユニは雑居ビルの通路や階段も掃除していたらしく、ソンジュンが着いたときには箒と塵取りとゴミ袋をもって一階の裏口の所で腰を伸ばしていたところだった。
「やだ、へんなところ見られちゃった。」
少々おばさんくさいその様子をあっけらかんと口だけ恥じらって見せて、ソンジュンと一緒に三階まで上がった。ムン弁護士事務所の事務員とはいえ、別に構えた格好はしていないユニ。だが、普段着とは絶妙に違う、形のすっきりしたニットと黒に近い細身のパンツ、一瞬パンプスに見えるフラットシューズはきちんとした印象を与えていた。
手を洗って戻ってきたユニに昼を食べたかを聞くと、まだだという。
「先生が急に頼まれて拘置所に行くらしくって、俺に構わず仕事終わったら帰れって言われたの。昼前に出るからって。」
「いつも先生と一緒に食べてるんだ。」
「ううん。先生朝からずっと裁判所の日もあるし。おられるときはよく喫茶店から出前を頼んだり、食べに行ったりはするけど・・・。」
じゃあ、とソンジュンはユニを誘ってその喫茶店に行くことにした。ヨンハと初めてここに来た時にごちそうになったピザやらキンパやらを出前してくれた喫茶店のことに違いなかった。
ジェシンが電話で今から行く、と知らせてきたのはそのすぐ後で、一応三階と二階の事務所のドアの施錠を確認してから二人はビルの外に出た。風は冷たくなっていて、冬の訪れをはっきりと知らせている。
歩きながら、一昨日ちゃんと帰れました?と聞くユニに、ジェシンにホームまで連れて行ってもらったというと、ユニは母子のその後を聞いてきたのだ。やはり気になっていたのだ。
「あのお客様はね、ちゃんとその後を準備していたでしょ?だからまあ・・・あんまり心配していなかったんだけど、でもね、気になるじゃない。」
ユニはそう言うと喫茶店に入っていった。ビルから出て曲がるとすぐのところにあって、ソンジュンはものすごくびっくりした。何度も来ているのに全然気が付いていなかったのだ。
「おやユニちゃん!今日は先生とデートじゃないんだね!」
大きな声でアジュマが叫んだので、ソンジュンはハッとした。ああ、もしかして・・・。
「もう~違うって言ってるでしょ。」
ち・・・違うのか、よかった・・・って俺は何を?!
「ああ。先生の友達の坊ちゃんと一緒に来てた人だね~。先生のところで働くことになったのかい?」
「ううん。お友達のヨンハさんの会社の人なの。研修でしばらくの間だけ来られているのよ。」
「先生の所は顔採用なのかね。ユニちゃんは美人だしこの人は偉くいい男だし・・・。」
「やだ、そんなわけないでしょ。」
ソンジュンはドキドキしながら、しゃべりつつも席に着くユニの後に従った。ユニはジェシンが急な依頼で今さっき出かけてしまったことをアジュマに教えている。
店の中にはいい匂いが漂っていた。昼時だが人が溢れている印象はない。食堂ではないからだろう。けれどカフェでもない。『喫茶店』というのがぴったりの雰囲気だった。
ユニに任せた注文でやってきたのは、千切りキャベツの上に切り込みの入ったフランクフルトがどかっと挟まったホットドッグ。その傍らには皮付きのフライドポテト。ぼってりと大きなマグカップにたっぷりのコーヒー。ユニも全く同じものを豪快にかぶりついている。
あははは、とアジュマが横を通りながら笑った。
「ユニちゃんの食べっぷりを見てると、確かに先生とカップルじゃないのは分かるんだよねえ。それからこのお兄さんともね。もうちっと色気を出さないとダメだよ!」
ほっといて、とでも言うように、ホットドッグでいっぱいの頬をさらに膨らませたユニに、確かに、とソンジュンは少しだけがっかりした。