恋人よ その30 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 当然その場は凍り付いた。とジェシンは聞いている。ジェシンはそこにいなかった。学部が違うし三年にもなり専門分野の講義やゼミが増えるのだから当然だ。

 

 怖かった、と他の者から漏れ聞いたジェシン。何が怖かったって、終始ヨンハが異様に笑顔だったことだそうだ。

 

 アコギな人間っていうのは、相手に尊敬の念を持たないんだよ。だから自分のやりたいことだけやってあとは知らんぷりして平気なんだ。お前は父親そっくりだよ。俺の周りの人間関係をダメにして、俺がそれを何とも思わずお前と付き合いを続けるなんて思ったのか。俺は俺に対する尊重を俺の周りの人に対しても持たない奴らは信用しないことにしているんだ。お前の父親がやってきた、吸収した会社の顧客と技術を奪って人員を放り出すようなやり方は好きじゃないし、その手法をそっくりそのまま人間関係に使おうとするお前のやり方は認めない。何よりも、俺が世界一だと思っている親友とそのスティディを貶めるような奴は大っ嫌いだ。何?そんなにムン・ジェシンが大事か?大事だよ。俺はあいつに殺されたってあいつが大事だと思って死んでいくさ!

 

 最後まで満面の笑みで言い放ったヨンハに対して、少し言い返しかけたカン・テスも最後は黙りこくってしまったのだそうだ。勿論自分の父親のことを出されて憤ったからこそ反論しようとしたのだろう。だが、経済界では確かにカン・テスの父親の評判は悪かったのだ。同じ業種の企業は、昨今のデジタル時代の到来と国の半導体などの主力産業の影響もあって、多く出現し、食うか食われるかの企業間競争が激しい分野でもあった。力のあるもの、新たなサービスを作り上げたものが生き残り、倒れた企業の者はその技術や資格を生かそうと同種の他企業への転職をする。優秀な人材はいるが、小さい会社にはその頭数は少ない。その人材を会社から抜き取ってしまえばいいのだ。ヘッドハンティングして引き抜く。甘い話を持ち掛けて企業のマル秘情報を引き出し、取引先を横取りする。証拠がないが、贈賄だって多分している。水面下でのカン・テスの父親の起業のやり方は有名で、力はつけてきているが、だからこそ大手の財閥はその後援をしない。提携しないのだ。道連れになったら大事だし、テスの父親の起業の手を借りなくても、大財閥の子会社の同業の経営は成り立っているから。だからテスの父親は更に小さなライバル会社を吸収して自らを大きくしようとしている。それこそどんな手を使ってでも。

 

 

 ジェシン自体はその話は本当に終わってから漏れ聞いたし、ヨンハは何も言わないままだったので改めてこの話をしたことはない。ただ、ヨンハを通して顔見知りだったカン・テスは、元からジェシンのことを良く思っていないのはひしひしと伝わってきていたから、ジェシンだってそんな相手を好きになるわけはなかった。たいして知りあいでもないのに何で嫌われてるんだ、とは思ったが、性に合わない奴がいるのは仕方がない、とたいして接点もないから普段は気にしていなかった。ただ。

 

 「俺とユニとはそんなに目立つもんか?」

 

 とヨンハに聞いてみたことはある。

 

 「気づいてないのか?!お前ら目立ちまくりだぞ!」

 

 と大仰に驚くふりをするヨンハを二発ほどはたいてから、なんでた、と首をひねった学生時代のジェシン。

 

 「大体ね、コロ自体が目立ってたんだから、ユニさんは道連れだね。」

 

 そう言ったのはサークルの同級生だった。ジェシンはまだきょとんとしていた。

 

 「背が高いハンサムがさ、頭もいいんだ。目立たないわけないだろ。」

 

 「ハンサムってのはこう奴を言うんだろ。」

 

 ジェシンは目の前の雑誌の表紙を飾る俳優を指さした。

 

 「顔だけじゃないんだよ、ハンサムってのは。全体のバランスが整っているのが一番さ。目も鼻も口も輪郭も理想の形ならいいけど、僧じゃなくったってバランスよく配置された顔立ちと、いいスタイルが揃ってりゃ見た目が良くなるのは当たり前だろ。」

 

 それに、とその同級生が笑ったのを思い出した。

 

 「ユニさんはあんなにかわいらしい女の子じゃないか。お前じゃなくてもふと目に入れば見てしまうよ、コロ。その二人が一緒にいるんだ。目立たないわけないだろ。」

 

 

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