恋人よ その24 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 午前中一杯を、成均館の遺構と博物館で使ったジェシンとユニは、久しぶりの母校の構内を少し歩いた。植えられている背丈の低い樹木が鮮やかな新緑に染まっている。休日故、学生の数は少ないが確実に大学は動いていて・・・生き生きとしていた。

 

 だから、自分たちは現代に生きているのだから、と思ってもいいと感じた。それをそのままユニに言ってみた。ユニも頷いている。

 

 「ただね。」

 

 とユニは頷きながらも言った。

 

 「それほど気にしなくてもいいかな、とは思っているの。それはサヨンが今言ったことと同じだと思うの。今の私は一人きり。私の人生だわ。だけど、もし、前世があったとして・・・。」

 

 ユニは振り返った。博物館が邪魔をしてもう遺構は見えない。だがあの時代を置き忘れてきたかのような一角に、なぜか様々な感覚や感傷を覚えたのは事実だった。それはジェシンも自覚するところだ。

 

 「あったとしても、サヨン。もし私たちが違う人生を生きたことがあったとしてもよ、私も、サヨンも、その人生を懸命に生きたと思うの。何か後悔があってもう一度の人生を生きようと思ったのではないと思うの。」

 

 「じゃあ、もし輪廻転生したのだとしたら、どうしてだと思うんだ?」

 

 それはね、とユニは言いかけて、思い切り顔を真っ赤に染めた。

 

 「さ・・・サヨンのバカ!」

 

 「何がだよ!」

 

 ユニはつないでいた手を振りほどいて走り出した。ちょうど芝の敷かれた広場に差し掛かっていた。ユニは芝の中に駆け込んでいき、振り向いてべえ、と舌を出して見せた。けれど相変わらず顔は赤らんだままだった。

 

 「おい、待てよ!」

 

 待てキム・ユニ、お前答えてねえぞ、とジェシンはユニを追いかけた。ユニはきゃあきゃあと逃げたが、流石にジェシンの方が早く、あっという間に捕まって、息が上がる暇もなかった。背の高さが違うんだから、背じゃねえ、足の長さじゃねえのか、としばらくじゃれた後、しっかりとジェシンに片を抱かれて捕獲された状態のユニはふくれっ面を見せた。頬は染めたまま。

 

 「さて、答えを貰おうか。」

 

 「自分で考えてくださ~い・・・。」

 

 「面倒だから教えろ。」

 

 「えええええ・・・。」

 

 がっちりと掴まれた肩の上にあるジェシンの掌に触れて、ユニはうつむいた。

 

 「だって・・・私ばっかりじゃ、重たいって思われるかもしれないし。」

 

 「何がだよ?」

 

 心底不思議そうに聞くジェシンに、ユニはむうっと唇を尖らせて憤慨しながら言った。

 

 だって、だって、後悔じゃないなら、私がサヨンにまた巡り会いたくてこの世に戻ってきたってことじゃない。もしサヨンがそう思っていなかったとしたら、私ばっかりサヨンに会いたいと思っていることになるでしょ!

 

 

  そして二人はソンジュンを前にして並んで座っている。ユニがびしりと件のセリフを決めた瞬間、何してるんですか、と声がかかったのだ。振り向くと、5歩の距離の所に立っていたイ・ソンジュン。そう言えば。

 

 「ここは・・・お前のテリトリーだったなあ・・・。」

 

 と感心したように独り言ちるジェシンに、忘れないで下さいよ、とソンジュンはため息をついた。

 

 「冷たいですね、先輩は。可愛い後輩の進路を忘れてるなんて。

 

 「忘れてねえよ。ただ・・・まあ、そうだったな、ってとこだ。」

 

 「ほら忘れてるじゃないですか。」

 

 「悪い悪い。」

 

 そんなやり取りを聞いて、ユニはにこにこと笑った。

 

 「ソンジュンさん、院にご進学、おめでとうございます。」

 

 「ありがとうございます、ユニさん。ユンシクは元気にやってますか?元気だよ、としか言ってこないので。」

 

 「元気ですよ。すぐに寝ますけど。今家で一番早寝なのはユンシクなの。」

 

 「やっぱり働き始めると疲れるんでしょうね。」

 

 「心配してくださってありがたいわ。でもちゃんと食べてちゃんと寝ているから大丈夫だと思うの。それに会社ではク・ヨンハさんがいらっしゃるでしょ?」

 

 ジェシンとソンジュンはそこで同時にため息をつき、同時に同じことを言った。

 

 「「あいつ(ヨリム先輩)がいるから心配なんだ(です)よ・・・。」

 

 きょとんとしたユニの顔が、ユンシクに重なって見えた気がした。

 

 

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