ノワール その42 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 インスはその場から動かず、三人を睨みつけていた。

 

 「コロ・・・お前が余計な人助けなんかするから、とばっちりが俺に来たじゃないか。本当に俺の邪魔しかしない奴だよな。」

 

 「お前の邪魔なんか考えたこともねえよ。大体お前のことなんか頭に浮かばねえし。」

 

 「さすが、エリートのご子息、優秀な自分には関係のない奴なんか目に入らないってか?」

 

 「友人でもないのに考えている方が気色悪いだろ。てめえ俺に四六時中自分のことで悩んでほしいのかよ。俺は嫌だぜ。」

 

 「俺だっていやだ。」

 

 腕組みを解くと、インスは首を回した。こきこきと軽く音が鳴る。

 

 「ビョンチュンのことなんか忘れてたのに・・・。あんなのろま・・・。」

 

 「そんなこと言うなよ、お前のこと慕ってたじゃないか。」

 

 ヨンハが気の毒そうに口を出すと、お前こそ気色悪いこと言うな、とインスがいい、ジェシンが同じ嫌そうな顔で頭を小突いた。

 

 「俺もあらためてあいつのことを何も聞かなかったなとは思ったが、お前の父親のところで雇ったのじゃないのか?」

 

 カン・ムも聞いてきたので、あいつはさ、とインスは首をさらに回してから答えた。

 

 「年もまだ半端だし、何をさせてもどんくさかっただろ。頭も悪い。俺だって自信を持って紹介できる奴でも何でもなかったから、掃除係かなんかで仕事をやってほしいってお袋に頼んだんだ。」

 

 「家の下働きか?」

 

 「あいつを家の中に入れるのなんか嫌だ。お袋が経営している美容院だよ。忙しくなってきたから掃除とか片付けするのを雇いたいって言ってたからちょうどいいかと思って。掃除ぐらいできるだろ、って誰でも思うじゃないか・・・。」

 

 良く聞くと、インスの母親は実家が妓楼であっただけに、化粧や美容が身近だったようで、インスと妹が少し大きくなってから化粧品販売を始め、美容師を雇って美容室にも手を広げたのだという。なかなかの評判の店になってきたのは、まだ美容室という存在がソウルに少ないせいだが、とインスは自嘲した。

 

 「役に立たない、って毎日俺に愚痴を言われて。仕事を教えたらいいじゃないですか、って言っても、自分で仕事を見つけて動くのが普通だって言う。その上、母親と妹は毎朝一番の客として美容室で髪のセットと化粧・・・流石に化粧はお袋だけだが・・・をするんだが、妹が自意識過剰で、ビョンチュンがじっと見て来る、気持ち悪いなんて言い出して、それなら親父がうちの方で何かさせるって連れて行ったらしい。」

 

 だから、とインスは冷たい顔で言った。

 

 「ビョンチュンが何の仕事をしてるのか何か俺は知らなかったし、俺が紹介したのは真っ当な清掃の仕事だ。紹介した後のことは知りませんよ、ってしか答えられないだろう。」

 

 「じゃあ、お前の父親に警察が聞くんだろうな。」

 

 「聞いたらいいさ。そうしたら事務所でも何でも入れた後は知らないっていうだろ。あんな下っ端の子どもと一緒にする仕事なんて親父にはないはずだ。誰かに預けたんだろ。」

 

 それに、とインスは付け加えた。

 

 「俺には親父のやりたいことがわからない。今やっていることに満足できないらしくて、金がもっと稼げる方法が、としか言わない気がする。ビョンチュンがその方針の一つに使われたんなら、親父が尻拭いするだろう。」

 

 行くぞ、とカン・ムに顎で指示して、インスは背を向けた。カン・ムは、邪魔したな、と律義に口にしてからその背を追いかける。それでも他のインスの取り巻きとカン・ムが違うのは、すぐに追いつき隣に並ぶことだ。他の者たちはなんとなく一歩後ろにいる。やはりカン・ムはインスにとって友人なのだと感じさせる背中だった。

 

  「もっと金を稼げる方法が、か。そんなの商売をしている奴ならみんな考えているさ。それが分からないインスじゃないだろう。という事はインスが嫌う・・・というかインスでもそれはやっちゃいけないと思うようなことを考えているんだろうか・・・。」

 

 ヨンハがブツブツ言っている。そんな事俺たち子どもには関係ないだろ、とジェシンは言ってはみた。それでも、あの夜、薬を狙って医院に侵入してきた奴らのことを思うと、暴力を武器にする者たちを使うインスの父のやり方に不安しか覚えなかった。

 

 

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