赦しの鐘 その101 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 宴に女人の姿はない。披露目される花嫁だけ。花嫁花婿の席近くは縁戚の中でもより近い者と、招待客の中でも位の高いものが並ぶ。正直品定めみたいなものだ。ジェシンの父は花嫁花婿両方の実父のつもりでいるが、今日に関してはムン家の主としての立場に居なくてはならない。となると、キム家側はどうしてもユンシクになってしまう。それは流石に荷が重い、とジェシンの父は宴早々にユンシクを呼び、退席させた。

 

 「花嫁の母御が、感激のあまり部屋で泣いておられるというのでな、うちの奥がユンシク殿を呼んでまいれと言うのだ。」

 

 酒を注いだり注がれたり、という宴席での行為でも、地位のあるジェシンの父に圧倒的に人が偏るし、キム家の方の親戚は誰も招待していないから、ユンシクはさぞほっとしただろう。ユニは花嫁だという事もあるが、隣の花婿、花婿の父が護衛よろしく見張っているので何という事もない。ただ、黙って座り続けているのが大変だが。

 

 ジェシンが最も心配していたのは、時折ある、キム家を下に見るような言動をする者たちの振る舞いだった。酒が入ると言いたいことを言う輩は身分関係なくいる。キム家の娘でありながらムン家で育てられた娘がそのまま子息の花嫁に収まった、という事に対して不満も不平も、妙な勘繰りをするものはいる。花嫁姿のユニは、朝、支度のできた姿を見たときに言葉も出ないほどかわいらしく初々しく、光がさすようだったが、それは今も変わらず、花嫁を一目拝みに、とジェシンやジェシンの父に酒を注ぎに来た者たちの不満を一気に消失させただろう。諦めさせたと言ってもいい。こんな美しい娘が傍に居たら、それは誰を見ても何も思わないだろう、と。だが、それを、器量を使って誘惑したのだ、いや、キム家の母親か弟がそうするように唆したのだ、とうっすら噂されていることも耳には入っていた。その噂を流した、そして信じた輩はユニの美しさを憎み、不平を口に出すだろう。そう思っていた。

 

 だが、ジェシンの父がそれを粉砕した。少し酒の入った父は、ジェシンをこき下ろし、ユニを褒めることに終始して止まらなかったからだ。

 

 「・・・本当は我が家から嫁に出さねばならなかったのだ。大切な他家の娘ごだからな。しかし、優しくて賢くて、自分の身をわきまえて、だが儂や奥の娘として仕えてくれるユニをな、手放すことなど儂たちが出来なかった。その上ジェシンはこんな男たぞ・・・何が出世頭だ、ユニ以外が起こすと朝の機嫌の悪さに下人や下女が逃げていくような態度をとるバカ者だ・・・帯ひとつ丸一日ちゃんとつけていられない。両班の面子丸つぶれの格好で平気な奴だ、我が息子ながらあきれるばかりの生活態度なのに、こんなかわいい娘を人身御供に、と悩んだのは儂たちの方だ。だがなあ、バカ息子はユニの言うことを良く聞くし、ユニだけは大事にする。ここは、儂の目の黒いうちはしっかりジェシンを見張ってだな・・・。」

 

 ちょうどジェシンに祝いを言いに来たヨンハとソンジュンが笑って聞いていた。その後ろにいる数人の大科に共に受かった同榜も。若い彼らの挨拶はぞんざいに、だが嬉しそうに受け取り、また目の前の男に演説を始めたジェシンの父を、ジェシンは睨むしかなかった。ついでにからかい顔のヨンハも。

 

 「やあ!やっとたどり着いたよ、愛しのコロのところに!とおかったなあ!」

 

 なあ、と同榜達を振り向くヨンハだけがこの場で堂々としていた。ソンジュンも姿勢よく座っているが、圧倒的にこの場ではソンジュンは異質な存在なのだ。敵対派閥老論の首魁の子息なのだから。しかし、小論の重鎮である父でさえ、長年の王宮仕えにも関わらず、成均館時代や大科の同榜で老論所属のものの中に友人はいて、今日も挨拶に顔を見せていた。だから、祝いの席にソンジュンがいるのはおかしくはない。花婿ジェシンの友人なのだから。

 

 「本日のよき日をお喜び申し上げます、コロ先輩。」

 

 「ヨンハ、これが正しい挨拶ってもんだ。」

 

 「コロに言われたくな~い!」

 

 そう言いながら皆でジェシンの杯に少しずつ酒を注いで、皆で乾杯をした。

 

 「で、花嫁様にもお祝いを!ユニ殿~コロを頼むよ~。」

 

 一斉に皆の視線がユニに集中する。そこまで少しうつむき加減にしていたユニが、ゆっくりと顔を上げた。

 

 

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