極秘でおねがいします その49 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 出版社に作家と編集者との男女交際が禁じられている条項はない。だがモラルとして暗黙のものはあるかもしれない。それはやはり仕事上のコンビとして結果を出している状態でないと、いいようにはとってくれないと予測されること。

 

 ここには、ユニが人気作家であることも関係している。ユニイという作家は今、小説部門では圧倒的なドル箱だ。多作ではない。だが定期的に間を置かずヒット作を出す。映像化にも耐えうるストーリーテラーは、その匿名性故他の出版社に移ろうとしない大切な宝物だ。その創作に良い影響を及ぼすならばいいのだが、悪い影響なら大問題だ。この場合、交際相手である編集者、そしてその編集者をつけた編集長並びに編集部が悪となる。

 

 ジェシンの身は別に考えなくてもいい。だが、そこにユニの意志が入ってこないのに騒ぎになれば、それこそユニイとしての活動に支障が出る。それは担当編集者としても、恋人としても、そして一ファンとしても困る。ジェシンが最もしてはならないユニイの活動の妨害だ。ユニイのこれからの作品、作家人生に泥を塗ってはならない。だから慎重に。時期を見極めなければ。

 

 

 「全部・・・私のため。先輩はそれでいいんですか。」

 

 ユニは静かにジェシンの話を聞き、そう訊ね返してきた。

 

 「当たり前だ。それに、君のためという事は俺のためでもある。」

 

 担当編集者として作家に何を求めるか。その創作への才能と情熱に力を貸し、よりよいものを作り上げ、それを世に出し皆に見てもらうことだ。その陰で支える仕事は、作家がその作品によって名を上げれば上げるほど報われる。ユニイが作品を評価されることは、ジェシンが評価され、夢をかなえることに等しい。

 

 そのひとの男として、支えたひとが世に認められ幸福になるのをどうして自分の幸せだと思わないことがあるか。ジェシンはいきなり始まったようなこの関係に、始まり方には慌てたが、それから先にことを自分が実は想定していたことを今理解した。

 

 なぜなら。

 

 ジェシンはたぶん、ユニと知り合ってから淡く、そう淡いけれどずっと好意は持ち続けていたのだ。だが、あまりにも浅い交流。自分の方が先に社会に出て、兵役で世間とも交流を絶つ期間を経、戻ってくれば後輩たちがトラブルに巻き込まれユニがその犠牲になったような話を聞かされてしまった。何も言えなかった。近くにいれば何かしてあげられたかもしれない。そう思ったが、何かをしてあげられる関係でもなかった。ただの先輩後輩。その間には彼女の弟が入る。友人としては決して近くない。そんな関係で淡く感じていた好意は、作家と編集者という間柄になって濃さを増していった。ジェシンの中では当たり前のことだった。作家ユニイを補佐し、守ることは、ユニという女性を補佐し守ることとイコールだ。そのために、ジェシンは胸の中でいくつかのルートを予測していたのだろう。このまま作家と編集者という仕事上の関係のままだけで行くにしても、そこに男女の想いが入り込むことになったとしても、早期に仕事上の関係が切り離されることになったとしても、ジェシンは自分がどうするか考えていたからこそ、落ち着いて今の状況からどうするかをユニに提案することができるのだ。

 

 重いなあ、と自分でも思う。結局、ジェシンは元から悪友のように軽く女性と関わることのない性格であり気質であるからこそ、一人の人に対する想いが重いのだ。そこ一点に集中する。だが、相手がユニだ。ユニに対して、ジェシンは無意識に思うのだ。それぐらいでないと、彼女は手に入らない。

 

 思い出す学生の日々。ソンジュンとのうわさにより壊れたユニの世界。だが、噂を流されるだけの態度を、ソンジュンがしていなかったわけがない。おそらくユニは男子学生から人気があったのだろう。それぐらい彼女は美しい。ソンジュンだってユニとなら、と思っていただろうとジェシンは共に過ごした短い間でも感じられていた。恋にくるった女なら、もっと敏感だ。自分に向けられない好意を貰っている、それがユニだったのだ。

 

 自分が支えきるつもりでないと、ユニは守れない。自分の想いが重すぎるぐらいで結構。ジェシンは腹を据えたのだ、今日。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村