極秘でおねがいします その23 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 途中で洋菓子店に入り、夏限定のゼリーを数種詰めてもらい、ユニのマンションの入り口で暗証番号を入れた。開いたドアから入ると、すでに顔見知りになった管理人がにこにこと挨拶してくれる。このマンションの売りは、24時間管理人が常駐しているという事で、ジェシンは会ったことはないが、芸能関係の人間も住んでいるという。

 

 ユニの部屋のインターフォンを押すと、は~いという軽やかな声とともにドアが開いた。

 

 「・・・誰が来たか確認してから開けたらどうだろうか・・・。」

 

 さすがにジェシンが言うと、

 

 「だって先輩以外には誰も来ないですし。」

 

 とユニは平然と言った。宅配も管理人受け取りにしてもらっているのだという。ユニの部屋に直接来るのは編集者だけだし、前編集者もジェシンも『行く』と知らせてからきてくれる、だからいいんです、と主張するユニに、それでも、とジェシンは扉を閉めながら言った。

 

 「何のためのモニターとのぞき窓だ。いくら俺しか来ないって言っても万が一がある。絶対に確認しろ。」

 

 

 不満そうな顔をしたユニにゼリーの箱を押し付けると、途端に大喜びして気抜けしたジェシン。誘われるままに上がり込むと、テーブルに夕食の用意がされていた。

 

 「あ、飯時だったな。今日はこれを渡しに来ただけだからすぐに出る。」

 

 少し慌てたジェシンに、ユニはファンレターの復路を受け取りながら首を振った。

 

 「ごはん時だから先輩の分も用意してるんです。食べて行ってくれないと、余っちゃいます。」

 

 へ、という顔でテーブルの上を見ると、確かに箸やスプーンが二人分向かい合わせに用意されていた。ガラス皿に涼し気に盛られたキュウリやニンジンの細切り、茹でもやしに茹で豚のスライス。キムチや総菜の小鉢。真ん中には鍋敷きが置いてあり、見えたキッチンのコンロには小さめの両手鍋が通気口から湯気を噴き出している。そしてご飯の炊ける匂い。

 

 「オンニも良く一緒にご飯を食べてくれました。ご結婚されてからも時々・・・旦那様に申し訳なかったけれど、嬉しかったの。今日は出版のお祝いだから一緒に乾杯してください。」

 

 

 

 空調の効いた涼しい部屋で食べるチゲは美味しかった。男の人には物足りないかしら、などと言うが、豆腐チゲとはいえ、ネギと豚バラがたっぷり入った辛みの効いた味付けは満足いくものだった。何よりも良く冷えたグラスで飲むビールに合う。一人で飲むときには缶のままま呷るジェシンには格別だった。歩き回って、昼は移動しながら吸い上げたゼリー飲料以外には水っ気しかとっていなかったことを思いだして、ユニが鍋のふたを開けて匂いと湯気が一気に広がった時、腹の虫が盛大になってしまうほどいきなり食欲が戻った。蒸した豚肉の薄いスライスにキュウリやもやしを巻き、甘味噌ダレをつけて食べるのも味が変わっておいしさが増した。途中ご飯もよそわれ、腹いっぱいになった、と笑うジェシンに、ユニもビールでほんのり頬を赤くして笑っている。

 

 かわいいな。

 

 そう思ってしまった。元からきれいな子だとは知っていたのに。付き合いが、仕事とはいえ深まるうちに、今まで知らなかったユニの人間性が見えてきてジェシンは困った。外見だけじゃなく、その存在自体が可愛い、そう思ってしまう。

 

 仕事のやり方ひとつとっても、ユニはきちんとしていた。それだけでも人は評価が高くなるものだ。なのにこうやって、一日歩き回った自分を、祝いだという理由をつけて労わってくれる心遣いに、ジェシンはすっかりやられたのだ。

 

 酔ったからだ。くたびれた体にビールを突っ込んだからな。

 

 とりあえずそういうことにして片付けを手伝い、一緒に頂きましょ、と嬉々としてジェシンの持ってきたゼリーを出してきたユニに従ってソファに落ち着いたジェシンは、読者からのプレゼントの扱いについて聞いてみた。

 

 ファンレターは今日持ってきたが、プレゼント類は作家ユニイは寄付する、と宣言しているのだ。動物の写真を作家プロフィールに張り付けるせいか、ぬいぐるみなどが良く届けられる。それらはすべて児童養護施設などに寄付する。菓子類は手作りは申し訳ないけれど、という事で編集部が頂くが、出所のはっきりしている贈答用のものや菓子メーカーのものできちんと未開封が確認できるものは路上生活者や生活保護を受けている人の援助をしているNPО法人などへ。花は役所や警察などの公的なところに飾ってもらうのだ。

 

 「そうですね・・・ただ私は、読者の皆さんのお気持ちを無駄にしたくなくって。オンニと最初の頃に必死に考えたんです。」

 

 ユニは思い出すように目をさまよわせて答えた。

 

 

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