路傍の花 その89 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 

 後日談として。

 

 前吏曹判書ハ・ウジュはその罪の悪質さにより、斬首となった。ただ、親族は何も知らなかったこととして王の温情により、身分の保持と最低限の財産を手元に残すことを許された。だからと言って今まで通りの両班同士の付き合いができるわけもなく、それを見越した息子ハ・インスが、母、妹を連れて本貫の地へ一旦隠棲したのは間違ったことではなかった。自分たちが被るであろう恥辱と周囲に与える困惑を回避し、いずれ平静に相対するためには必要な逃避だった。

 

 ひと時の大騒ぎがおさまれば、残された者たちにとっては目の前のことに忙殺される日々が始まる。ユンシクたち成均館儒生は大科に向けての大騒ぎが始まったのだ。そして一年など瞬く間に過ぎ、大科は無事行われた。

 

 前評判通り、花の四人衆と呼ばれたイ・ソンジュン、ムン・ジェシン、ク・ヨンハ、キム・ユンシクは合格した。それも非常に良い成績で。ソンジュンは何と壮元、一位で。ジェシンも探花、三位。ヨンハとユンシクも十位以内という素晴らしい結果に、彼ら若者を待ちわびていた王様は大喜びした。

 

 勿論彼らの家族も喜び、鼻高々だったのだが、王様近くに仕える重臣のイ・ソンジュンの父とムン・ジェシンの父は、王様から息子の快挙についてお褒めの言葉を頂いたときに、王様の心情がまろび出たのを胸に刻んで息子たちが出仕するのを見守った。

 

 お前たちの息子らのように、前吏曹判書の息子も我が家臣として働いてもらいたかった。若者は宝よ。切磋琢磨し、表舞台で思い切り戦うべき者たちなのだ。

 

 憎むべきは表舞台を堂々と歩くことを難しくしている派閥の絡み合いよ、そうは思わぬか。そう呟く王様に、派閥の筆頭同志として存在する二人の父親は返答すらできなかった。お前たちの憎み合いが有為の若者と国の将来を潰しているのだ、そう言われたも同然だからだ。

 

 かといって、今すぐにどうすることもできない。派閥の力によって国を動かすことの喜びも知っているのだ。すぐに手をとり合うことなどできない。だから彼らにできることは、出身派閥を関係なく仲間として今もあり続けているソンジュンやジェシンの関係に口を出さないことだけだった。

 

 だから、彼らの恋のさや当てにだって、手を貸さなかった。口も出さなかった。彼らが恋い慕ったのはそれこそ派閥違いの令嬢であり、家としての力も何もない小さな家格の娘だった。けれど父たちは、そのさや当てが終るまで、何も言わなかった。実質、ソンジュンとジェシンの争いだった。二人は堂々と。そう、堂々と一人の娘を恋慕った。彼らより少し年上の、美しい娘を。

 

 

 ユンシクが大科に合格した後、ユニは茶店から身を引いた。叔父叔母のために家事をし、出仕するユンシクの世話に没頭した。禄がもらえるようになったユンシクは、母と共に住むために、南山谷村の小さな家を売り、小さな小さな家を叔父叔母の家の近くに求めた。勿論母を迎え入れたその家には、ユニも共に住むのだ。

 

 その頃から、ソンジュンもジェシンもユニへ直接求婚し始めた。驚いたのは誰でもないユニだ。ユンシクも驚いたくらい、ユニは二人からの好意に全く気付いていなかった。大科の勉強が本格的だった時期はまあ仕方がないが、それでもその前からの彼らの態度で、周囲は皆ほほえましいぐらいには感づいていたのに、本人ときたら鈍いにもほどがあるよ、とは叔母の言葉だった。叔父は泣いていた。どちらの若様でもいい、ユニは幸せになれる、と。

 

 時折ヨンハが、「どっちかに決められないなら俺でどうですかお姉様っ!」と割り込んできていたが、こちらは許嫁がいた。お姉様のためなら破談にいたしますっ、などと不穏なことを言うからユニが叱ると、叱られた~、とうっとりするものだから始末に悪いが笑ってしまった。そうしたらにっこりと笑って、お姉様はそれでいいのです笑っていてください、と言われてしまった。

 

 「あいつらは、どちらをお姉様がお選びになっても、いつまでも友人のままでいますよ。お姉様は心のままにお選びになればいいのです。俺のお勧めは、俺なんですけどねっ!」

 

 そしてユニは、ソンジュン、ジェシン、二人とよく話をし、そして決断したのは半年の後であった。

 

 

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