路傍の花 その41 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「・・・そんな勝手なことを言われても、ユニ様は困ると思います。」

 

 そう言うソンジュンに、ジェシンは片頬を上げた。

 

 「困るのはお前だろうが、イ・ソンジュン。」

 

 「ユニ様の意志とは関係のないところでこんな話をしたところで、何になるというのです。」

 

 「おう。今はユニ殿の意志は関係ねえな。俺は自分がどうするかを決めただけだ。後は実際に俺が実行に移したとき、ユニ殿がどう判断するか、それだけだ。」

 

 ジェシンの片頬は上がったままだった。お前は?と挑発するように。

 

 「・・・たとえ先輩がお父上に了解を得ていたとしても、周囲は?お母上様は?親戚は?派閥違いという問題はどうするのですか?」

 

 「は・・・そんなもの、一つずつ解決していくしかねえだろ。一つ一つを心配していたら何も進まねえ。その時にしか対応できない事態何ていくらでもあるんだ。まず・・・決めることが大事だと俺は思った。だからそうしただけだ。」

 

 「それでも先輩は小論、キム家は南人です!」

 

 「それがどうした。先王様からこちら、派閥を超えた婚儀は推奨されている。国法に触れるわけでもねえ。それに父にも承諾は得た。派閥違いでも構わないか、と。親父は言ったぜ。老論のイ家とハ家に近い縁戚を持たなければどうでもいい、ってよ。」

 

 「それでも・・・。」

 

 「お前はそうやって怖がっとけよ。俺だって・・・。」

 

 ジェシンはそこでゆがんだ笑顔を納めた。無表情に近い、静かな瞳が重たげな瞼の下からソンジュンを見つめている。

 

 「何もかもがうまくいくなんて、小指の先ほども思っていないぜ。親父だっていつ変心するかわからねえ。それにユニ殿を困らせるわけにはいかないから、こればっかりはユニ殿に気取られてはならない俺の決心だ。ただ、一つだけ。俺にとって婚儀という避けて通れない人生の出来事の一つに、せめて自分で選んだ人を、と思った時、ユニ殿しか浮かばなかった。シクだってユニ殿だって、お前だってそうだろう。選んで今の家の子として産まれたわけじゃねえ。派閥だってそうだ。俺たちは決められた枠の中で生きてきて、これからもしなきゃいけないことの方がほとんどだ。その中ででも、自分の意志で何かを為せるのならば、全力でそれぐらいはしなきゃ満足なんぞできねえよ。兄上だって、虚弱な体であっても、あの年で自分が死ぬなんて思っていなかっただろうよ。やり残したことだらけだぜ、絶対。両親を安心させ満足させるために必死に体を保ち、学び、同年代の中では並ぶ者のいないと言われた学識を持って誉れを得たのに、簡単に死んじまったんだ。おかげで、婚儀に縛られないことだけが唯一の得だった次男の俺が、兄上の背負った家を受け継ぐことになったんだ。だから全力で行く。」

 

 お前は、と最後に言い放った。

 

 「父親の顔色を窺い、父親の望む子息で居たらいいだろ。こんな娘がいいだろうって、それなりの老論の家の娘が婚約者になるだろ。そうしたら波風なんか立たないし、すべて丸く収まるじゃねえか。俺はもう、怖くねえんだよ。一度我が家は壊れかけた。踏みとどまったのは親父の力だ。俺だって、不平不満はあっても家を潰すつもりはねえし、そんなことをしたら母を悲しませることになる。兄上が守ろうとしたものを壊すつもりはないんだ。だからといって、兄上の代わりの人生を送るつもりもねえ。兄上のようにはなれそうにないしな。だが全力で自分が生きるときに、共に生きる伴侶を自分で選んで手をとったっていいだろ。そのために俺は強くなる。」

 

 邪魔したな、と言い捨ててジェシンは出ていった。その後姿を眺めてからヨンハは苦笑した。

 

 「偉そうなこと言ってるけどさ、多分今まくし立てたことは小科に合格してからまとまった考えさ。君たちもまず小科に合格することだね。そうしたらあんな風に・・・またその先のことに決心がつくようになるだろ。ユニお姉様のことも、小科に合格してからしっかりと考えたらいい。本当にお邪魔したよ、勉強頑張れ。俺たちも明日も明後日も講義に浸かってくるよ。」

 

 ヨンハのとりなしがあっても、ソンジュンの膝の上の握りこぶしは、なかなか開かなかった。

 

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