『花四箱』と仲間たち その27 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟フォロワー様500名記念リクエスト。

  成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「不正入試?!」

 

 素っ頓狂な声を上げたのはヨンハで、ソンジュンはむうと腕を組んだ。ジェシンは黙ったまま酒を呷っている。

 

 「小科は以前から・・・替え玉が横行していると聞きましたが・・・受ける人数の多さから、取り締まりは不可能のようですがね。」

 

 そういうソンジュンの言葉に、ユンシクはひょいと首をすくめた。実は姉ユニは替え玉受験を『引き受けた』ことがあるのだ。急にまとまった金が必要になったとき。その金がなければ、ユニは花妻として両班に売られるところだったから、切羽詰まってはいたのだが。だが、実際に自分が小科を受けた後、やはり他人の力で合格する者がいるなんてだめだ、と言っていたのを思い出す。

 

 「どこから湧いたのかと思うほどの受験者がいるからなあ・・・。」

 

 そう嘆息するヨンハに、自分が受けた当時のことを想いだしたのか、ジェシンが眉をひそめながらうんと頷いている。

 

 「今回、博士が僕に調査を頼んでこられたのは、替え玉ではないんです。」

 

 「成均館は小科に合格している者の中から選ばれるだろ?特に成均館独自の入試はないし。」

 

 ヨンハにそう返されたユンシクはうなずいて、博士とのやり取りを告げた。

 

 

 『最近、王様が若い才能を見つけたいと、大科も小科も定期的に行われるようになっただろう?』

 

 はい。そのように聞いています。

 

 『それは喜ばしいことなのだ。ここにいる若い儒生たちにもはげみになり目標にもなる。成均館も、いつも試験が終わるたびに、合格者の数や成績を注視してきた。』

 

 僕もこの成均館で学んだからこそ、大科への足がかりが頂けたと感謝しています。

 

 『君は真面目だし優秀さも私たち博士が保証できる自慢の儒生だった。君のような儒生が合格するのが正しい大科だと私は思うよ。』

 

 博士、嬉しいお言葉です。精進いたします。けれど博士、どうしてそんなため息をお付きになるんですか?

 

 『ああこれは失礼した。人に相談するかどうか悩んだし、もしかしたら私たち教える側の力不足かとも考えたのだが、やはりおかしいのではないかと思っていたことがあってね。』

 

 

 

 「・・・試験の内容が事前に漏れている?」

 

 「のではないかと訴えられているのです。」

 

 

 博士が語ったのは、ある地方の書院の儒生が異様に合格率を上げているという事実だった。出身地だけが発表されるため、書院の存在があとから分かったのだという。それだけなら、優秀な学者が教えているのだろう、優秀な人材を出したから優秀な儒生が集まってきているのだろう、というところだが、実際官吏になった数名は、あまり賢くなく、ただ地方の力のある両班なだけに、地縁がある高官に賄賂で取り入り、のらくらと仕事をしているという。その地方出身の成均館の儒生に聞くと、書院の存在は知っていたが、可もなく不可もなく、跳びぬけて評判のいい書院でもなかったのだそうだ。その儒生に頼んで地元に連絡を取ってもらうと、別に主は変わっていないという。ただこの5年ぐらい、人の出入りは多くなったのだそうだ。儒生も出入りしているが、住み込むわけでもなく、数日滞在すると出ていくらしい。

 

 密かにうわさ話や、昨年度の大科に合格した元儒生があいさつに来た時に聞いてみると、試験にはやり方があるって教えてもらったんだよ、と自慢げにいうものがいたのだという。それで、親友のチョン博士、いや、元博士に会ったときに話題を出してみた。チョン博士は今、王様の片腕のようになって働いている。元は大科に壮元で合格した官吏だったのだ。その才を疎まれて、成均館に「左遷」されていたチョン博士。人事に力をもてるようになってきた王様が、呼び戻したのだ。

 

 『あまりにも大科の結果と本人の仕事上の実力に差があるものが数人いるとは、報告もあるし把握している。君が聞いたように、試験対策があると吹聴していることも耳に入った。ただ俺は、試験を作る側、審査する側にいる者だから、まず試験の内容が不備だったのかという疑いを自分に持った。で・・・。』

 

 

 「チョン博士は、試験の内容に不備はない、受ける側に問題がある、と確信されたのだね。」

 

 とソンジュンが腕をほどくことなく渋面を作っていた。

 

 

 

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