㊟フォロワー様500名記念リクエスト。
成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
「へい。妓生は格下の妓楼に売り渡され、男たちはコロ様にお引渡しいたしました。」
「何でコロ?あいつ捕り方じゃないだろ?」
「頭分は元両班なので、というか勘当されていますが身分は両班のまんまでして・・・親ってのはありがたいですなあ。」
蛇柄の男たちの処分について語るトック爺の話を聞いているのはヨンハとユンシク。片が大体つきましたんで、と王宮まで迎えに来たトック爺に連れられて、今日非番のヨンハと膳を囲んでいる。
ドヒャンの息子スヒャンがおぼれていた妓生は、あの日の男と蛇柄の男達と一緒に金をむしり取ろうとして一緒に二つかまったイロに、それこそ金を貢いでいたのだという。自分で彼の払うべき花代を肩代わりしただけでなく、小遣いをやり、欲しいものを贖ってやり、としている間に金が足りなくなり、借金するのも業腹だと、イロや客の花代をごまかし始めたのだ。自分でも金額が分からなくなるほどの回数をごまかしたため怖くなり、脅し取られるという形をとろうとイロに相談したのは妓生の方。妓楼に嫌がらせがあるのは当然知っていたから、そいつらを使おうと提案し、あとはイロの「任せておけよ、ついでにこの楼を乗っ取って、お前が女将になれよ!」という甘い、そして大ぶろしきを広げた言葉に、愚かにも乗ったのだ。
「若女将の経営方針はねえ・・・まあかなり男への恨みは入っていますがね、客としての男をないがしろにしているわけではないですよ。妓生もきちんと育ててますし、酒も料理もケチってはいない。でもねえ、全部が全部、自分の思う通りにはいきませんやね。」
他の妓生も、客に手紙を書いたり、次の登楼の約束をさせたりと、客引きは熱心だ。それを強引ととらえるかどうかは客次第だし、行きたくなければいかなければいい。しょせん籠の鳥の妓生たち。遠くから呼ぶ歌声に引き寄せられるのは男の勝手だ。それに引っかかった男が、座敷代を払うのは当然のことだし、それを阿漕な商売だと思われるのは心外だろう、とトック爺は笑った。
「恨みと商売にきちんと一線を引ける、そこが若女将の賢いところなんだろうねえ・・・大女将も人を見る目があるってことだ。」
楼に嫌がらせがあり、それが若女将の昔の男だと教えたのは大女将だ。若女将は療養中の大女将によく相談し、愚痴もこぼしていたらしい。若女将の賢さを信じていた大女将は、世間が噂する梅月楼の悪い噂と若女将の賢さを天秤にかけ、若女将の方を信じた。
もうあの子の楼ですよ。人が変わればお客様も変わります。先からのお客様でも、未だにうちに来てくださる方もおられて、あの子が女将になってからよくなったところ、例えば妓生たちの芸の技が上がったとか、男衆の働きがいいとか、褒めてくださる方も実際おられます。私が出来なかったことをしてくれてるんですよ、ヨリム様。また贔屓にしてやってくださいませ。
しっかり宣伝されちまった、と笑うヨンハの話も、ユンシクはにこにこと聞いていた。
「スヒャン君は真面目に学問にはげむようになったそうですね。それに兄上からお礼のお手紙を頂きました。」
「ああ、俺のところにも礼状が届いたよ。ドヒャンも人の親だな。律義なもんだ。」
粗雑な、よく言えばおおらかな行動の多かったドヒャン。あれからスヒャンと、トック爺にも席を外してもらって、ひざを突き合わせてお互いの思いを話し合って、親子で大泣きして、そして互いの仕事と学問に精進すると誓ったのだそうだ。感激屋なところは、やっぱりそっくりだったんだ、と、手紙を読んだユンシクは笑ってしまった。
「その礼状を姉上にもお見せするつもりなんです。お懐かしいでしょうから。」
「そうしてやれ。テムルは・・・ドヒャンと本当に仲が良かった。」
そういえば、とヨンハは笑った。
「ドヒャンがさ、お前たち四人衆に相談事を持ち込みやすいように、どこかに箱でも設置しろよ、なんて言ってきたんだけど。自分の面倒は自分で見ろ、って言いたいけどさ、この間のウタクの件のようなことは無視できないし、むしろ教えてもらった方が世のためなこともあるしなあ。」
命名はなんだ、『花の四人衆への頼み事入れ』か?箱か?と首をひねるヨンハに、そんなことをしたらしょっちゅう入りますよ、とユンシクは苦笑して見せたのだが。
箱はなくても、やっぱり向こうから事はやってきた。