『花四箱』と仲間たち その16 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟フォロワー様500名記念リクエスト。

  成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。 

 

 

 「そのパク・ギョンスって男ですがね、今じゃ博打場の兄い株ですよう、あのあたりを牛耳ってる親方の娘とねんごろになっててね。」

 

 とトック爺が調べてきたことをヨンハに告げた。

 

 「いい男なんですよ見かけは。年は30半ば、ぐらいでしょうねえ、色白の優男、ちょっぴり太ってきてるのは酒のせいでしょうかねえ、昔は細っこい本当に若様、って感じの男だったようで。」

 

 その頃だったらテムル様に似てたんでしょうねえ、とトック爺は顎を撫でた。

 

 「梅月楼には足を運んでないですね。若女将が博打場の方に出向くことも、まあありませんや。ですがね、昔の関係を言いがかりにして嫌がらせを仕掛けてるかもしれませんね。」

 

 「それで金を引き出す。」

 

 「そうなんですよ。今のところ、楼の裏口のあたりに犬猫の死骸が捨ててあったりとか、堆肥が巻かれたりとか、ちょっとガラの悪い客が座敷で暴れてみたりですとか。」

 

 「うわ、十分な嫌がらせじゃないか。」

 

 「客に関してはね、得意客からの紹介がない一見を上げるからそうなるんですよ、用心しなさすぎると思いますがね。ただ、そういうことを繰り返して、辞めてほしければ金を出せ、またはまたよりを戻せ、なんてことを言っているのか、それとも、俺が何とかしてやるから、と親切ごかしに近づくつもりなのか、ってとこでしょうねえ。」

 

 今のところ、登楼客に気づかれないようにどうにか始末はしているらしい。ギョンスの差し金じゃないかと思われるのは、何度か見張るうちに、その嫌がらせの行為をした男たちを見つけてつけたところ、ギョンスがいい顔になっている博打場に入り浸って、借金漬けになっているチンピラだということが分かったからだ。

 

 連絡を取っているユンシクからは、今のところ楼からしつこく何をされたこともないと聞いている。そっちの始末で忙しいか、とヨンハも首をひねり、成均館の試験中ということで、少々ドヒャンの息子の訪れに日が開いていることもあって、ユンシクにちょっとばかり知恵をつけた。

 

 

 「最初にこの見世に上がった夜に一度ご挨拶いただいたけれど、こちらの女将は大層若い人だね。」

 

 珍しく酒の膳を頼んだきれいな若様のお客様に、娘は喜んだ。今夜こそお手を付けてもらえるのかもしれない。周りには隠しているけれど、床で共ねをしていないことは、妓生としては恥だ。魅力がないことを宣伝してしまうようなものだ。それぐらいはいくら新人でも分かっている。最初になじみになるお客がこんなきれいなお方なら、いくらでもお相手するのに、と娘は張り切っていた。

 

 「ええ、大女将様が体を壊して、すっかり見世をお任せになってるんです。とてもしっかりされていて、私同じぐらいの年になったって同じことなんかできません・・・。」

 

 「君には君のできることがあるよ。ほら、君も飲みなさい。」

 

 客に手ずから酒を注いでもらって、娘は舞い上がった。一口、二口と酒を体に流し込むごとに、頭もぽんやりとしてくる。

 

 「若女将様ね・・・すごくすごくお金に困ってこの世界にきたんですってえ・・・みんな似たようなものですけどォ・・・でね・・・初めて惚れたお方が疫病神で・・・って若女将様が言ってたんですよう・・・貯めた金を吸い取られて・・・ようやっと自分の借金を払い終わったときにぃ、もうこの男はいいや、って醒めちゃったんですってぇ・・・ちょうど大女将様がお体が辛くなってぇ・・・養女の話が出たときにぃ・・・いいきっかけだってんで、別れ話をしてぇ・・・怒った男を楼の男衆で寄ってたかって押さえつけて追い出したんですってぇ・・・あたしその時まだここにはいなかったからぁ・・・。」

 

 「いなくてよかったよ、危ないからね。できるだけお客は選ぶんだよ。」

 

 若様みたいなお方ってことですねえ、としなだれかかる娘に、ユンシクはにこにことまた酒を飲ませた。

 

 

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