レトリバーホーム 15 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ユニとソンジュンの間には、ジェシンと同じく8頭の仔犬が生まれた。雄と雌が半々。ソンジュンに似た巻き毛の子が多く、まるでぬいぐるみのようだとイ氏のインスタグラムでものすごい話題になった。

 

 ペット、特に犬や猫の画像は元から大層人気のあるテーマだ。だが、二頭のユニ似の丸々とした優し気な雌二頭を中心に、クルクルの巻き毛質が群がって眠っている様子は大反響を巻き起こし、イ氏がメキメキと会社を大きくし、財閥グループ企業に食い込み始めた新進の経営者だということもあり、取材も申し込まれた。

 

 仔犬たちが盲導犬になっているのも注目された点だったのだろう。ユニとヨンハ、ジェシンの仔犬とパートナーになった盲導犬ユーザーにも取材が行ったと聞いたイ氏は、あらゆる取材をお断りすると宣言した。勿論ユニたちレトリバーの事と妻に対してだ。

 

 そんな高尚な意識を持ってやっていることではない。レトリバーが好きで飼って、ブリーダーをするつもりはなかったが、繁殖期を迎える飼い犬たちを避妊手術を受けさせたくないという考え方を貫いた挙句の結果なのだと。親バカも同様だが、自分たちの飼い犬たちは穏やかで賢い。大層盲導犬に適していると助言されて、関わるようになっただけで、もし貰い手等がなければ自分たちで飼いきる覚悟をもってのことである、と。

 

 唯の犬好きなのだ、と。

 

 今までも家の犬たちはインスタに載せていた。可愛いのだから。自慢させてください。勝手に載せるので、ご自由にご覧下さい。このご報告でご容赦ください。楽しく、自由にこの子たちを過ごさせてほしい。ただの、ただの犬好きの親バカの記事だと流してください。

 

 

 アン医師と盲導犬協会もはっきりと後援してくれた。盲導犬に向かないと判断された仔犬は、こちらで飼い主を探すつもりで仔犬の提供をお願いしているが、もしそんなことになった仔は家で一緒に飼いますと言ってくださる、大層責任感を強く持って犬を飼っておられる御家庭です。せっかくできた縁。盲導犬はいつも数が不足し、困っているところに現れた救世主なのです。世の中に静かに貢献してくださっているイ氏とご夫人、そして飼い犬たちの生活をお守りください、と。

 

 

 それでも、このかわいらしい子犬を飼いたいと申し出られることが増えて、イ氏は困った。ジェシンの子を一頭、ジェシンの親の家庭とはいえ譲った実績があるだけに、断るのに苦労した。それに、パピーウォーカーに預けたソンジュンとユニの子達は、ものすごく優秀で、全頭盲導犬に合格したのだ。そう報告して、イ氏はとりあえず今回の仔犬騒ぎの収束を願った。

 

 本当はユニの出産をここでやめるつもりだった。人と犬との違いとはいえ、逆ハーレムのようなこの状態は、ヒートの時期になると少々居心地が悪い。それに発情期に交尾を行うと、ほぼ100パーセント妊娠する。出産するのはユニなのだ。体の負担だって、いくら安産であることが知られている犬だってないわけじゃない。実際、ブリーダーのところで出産を繰り返す犬は、年を取ると骨も腰も弱くなり、どうしようもなくなることが多いと聞いて、イ氏はそんなことをユニにさせるつもりはなかった。嫌だけれども、避妊させることにしていたのだ。

 

 けれどユニも、勿論ヨンハ達もまだまだ若かった。繁殖期の全盛なのだ。夫妻で悩み、アン医師にも相談し、ユニの健康を何度も確認してもらい。

 

 そしてもう一度ずつ、ユニは三頭と番ったのだ。

 

 計6度の出産を終え、最後の子たちを世に送り出したイ家の犬たちは今、また団子になって眠っている。皆それなりに年を取ったが元気だ。ユニは避妊手術を終え、ヒートすることはなくなったが、穏やかな気性は相変わらずで、5頭の犬たちの中心だ。それでも時折何かを探すしぐさをするのは、送り出した仔犬たちを思い出すからだろうか、とイ夫妻は心が痛む。

 

 そんなとき、少しの間、と言っても三か月ほどユンシクの姿がイ家から消えた。そして何事もなかったかのように戻っては来た。

 

 そしてさらに数か月後。

 

 イ家に新たな家族が増えた。

 

 

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