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それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 はっきり言って、ソンジュンとユニでは、圧倒的にユニの方が大人になっていた。勿論年齢や体の成長のことではない。成犬として、繁殖という体の経験を積み、そのために交尾をするという行為を行ってきた雌として、雄のソンジュンより気持ちにも体にも余裕があるということだ。勿論ヒートしているから興奮状態ではある。けれどこれから自分の身に起こること、雄が雌の自分にすることをよく理解しているため、もう怯えることはなかった。

 

 いつも落ち着いている雰囲気のあるソンジュンでさえ、雌の発情の匂いに当てられると、目つきが変わり、体は興奮で熱くなるようで、舌を出して息が荒くなる。部屋にユニと共に入れるときにはすでにそうだった。勿論、入ったとたんにユニに飛びついたソンジュン。

 

 ≪ジュン、ジュン・・・ちょっと待って、待って≫

 

 ≪待てないよユニちゃん・・・!だって俺、ずっとずっと!≫

 

 ≪分かってるわ、でもね、こっち・・・こっちに来て・・・!≫

 

 

 入ってすぐ横に、ペットシートが設置されていて、いわゆるそこがトイレだ。興奮したソンジュンに押されて、ユニはそこに踏み込んでしまっていたのだ。まだ排泄はしていない新しいものだが、何しろ給水できるようになっているので爪が食い込み感触が嫌だ。その上ソンジュンがのしかかってくるので二頭分の重みで支えている足の裏が気持ち悪い。

 

 ユニは何とかソンジュンを振りほどき、とことこと部屋の奥に向かった。そこには動かないように固定されたラグがあり、そこに夫人はユニの好きな大判のタオルやひよこのぬいぐるみ、キャラクターものの毛布などをかわいらしく並べてくれるのだ、この時期。そこはユニの匂いで充満している。ユニだって犬、自分の匂いがあるところが一番落ち着く。そこはユニのテリトリーで、そしてソンジュンはそこに招かれたのだ。ヒートしている今、その場所はこの世で最もユニの香りが渦巻いているところで、そしてその場所が最も雄を興奮させると、ユニは既に本能で知っていた。

 

 ≪ジュン・・・こっちにきて・・・ここでしばらく一緒に過ごしましょ≫

 

 声をかけるまでもなく、ソンジュンはぴったりとユニのあとについてきていた。

 

 ≪一緒に・・・≫

 

 ≪そうよ、一緒に、だって私も・・・≫

 

 緩やかにしっぽが揺れ、ソンジュンを誘う。つやつやと光るユニの毛並みの間から、ソンジュンを引き込む生々しい香りが、ソンジュンにすることを教えてくれている。

 

 

 「うちの子たちは、紳士だね。」

 

 「・・・もう。悪趣味だわ。」

 

 モニターでイ夫妻は様子を見守っていた。これは最初からだ。どうしても雄たちの方が体が大きくたくましく、興奮のあまり噛みつくこともあると聞いて、ユニのためにそうした。だが、ヨンハは見るからに喜びにあふれて、戯れるようにユニと番い、ジェシンは抱え込むように情熱的に、けれど人間でいえば抱きしめるような優しさで番っていた。だから一日目の最初だけ見守れば、もうその後は時々様子を見に行くぐらいで安心していられた。今はソンジュン。ソンジュンも大丈夫だと分かった。魅入られるようにユニに近づき、ユニに覆いかぶさるその姿があまりにもスマートで、そうなるようにユニが誘導したようなものなのだが、まるでソンジュンが番うことに慣れているように見えるほど滑らかだった。

 

 「奥さん。」

 

 そう言って手を伸ばす夫に、妻は寄り添った。二人は番っても子が授からなかった。けれど、一年おきほどに見守るユニとその年のユニの夫の、犬という獣であるにもかかわらず、愛情あふれる様子に、夫婦の在り方を再認識させられる。彼らは確かに子孫を残すための行為だから行っている。だが、必ず子を作る、という意志があるわけではない。相手が雌で、相手が雄で、誘う雌に雄が応えて。その摂理しかない。自分たちはどうだ。出会った時、相手を認識したとき、子を作れるかどうかを判断基準にしたか?確かに結婚を決めたときには家族計画の中に子供という希望もあった。だが、お互いと共に生きると決めたとき、そこに子供は必須であったか。決めたのは一対一だ。そこに子が必要であるという条件などなく、お互いがいればよかったのだ。

 

 優しくユニの首筋を甘噛みしながら腰を送るソンジュンを見、そしてモニターの画像を消すと、抱きしめ合って口づけを交わした。

 

 

 

 

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