レトリバーホーム 3 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ユニ号とユンシク号の新生活は順調に始まった。元からフレンドリーな犬種なのだ、レトリバーという犬は。訓練を受けていないと言っても、ラブラドールという盲導犬や介助犬などの候補の筆頭に上がる犬種であるユニ号とユンシク号も、その性質を十分に持っていたし、穏やかな家庭に引き取られたことでさらに開花した。

 

 ただ、先にいる三頭との体格差は明らかで、それが三頭のユニとユンシクに対する庇護欲を刺激したようで。

 

 ユニは元々の性別の違いによって、雄よりもどうしても一回り小柄になる。薄い茶の毛の色が、さらにその姿を優しく見せて、近隣の子供たちの人気者にのし上がった。犬が苦手な子すらユニのことは撫でることができるのだ。だからイ夫妻はユニに熱心に躾をした。飼い主以外には飛びつかない、ウエイト、ラン、ストップ、OK、ダウン、シット、カム・・・数多くの指示の言葉をユニはしっかりと覚え、守る犬だった。笑顔のような表情でフェンスの傍にいるユニを、ユニちゃんユニちゃんと皆呼んで撫でたがった。おかげでユンシクも同じように躾が進んだ。

 

 ユニとユンシクは、本当にペアのように寄り添う姉弟だった。ユンシクは、先輩犬たちの立派な体格を見て奮起したらしく、一緒になって走ろうとし、実際駆け回り、そのおかげで食事量も増えた。けれどやはり先輩犬たちより体力がなく、休みたくなると、一緒に走り回るユニの傍に寄ってくる。するとユニはユンシクを連れて日向に行き、寝そべるのだ。ユンシクはそのそばにくっついて一緒に寝ころぶ。毛並みを優しく舐めるユニの温かさに安心して、しばらく眠るのだ。だから成長し、ユニよりは大きくなれたユンシクだったが、ジェシンやソンジュン、ヨンハには及ばなかった。

 

 周囲には、三頭がユニとユンシクを守っているように実際見えるらしい。子供たち相手の時にはないが、大人がユニやユンシクに声をかけたり撫でようとすると、どれか一頭が素早く近づいてくる。特にジェシン号にその傾向があった。

 

 ジェシン号はヨンハ号のようにふさふさはしていないが、黒い毛は長く、元の体格が骨格から逞しく、特に胸の筋肉が分厚い。見た目はかなり厳ついのだ。そしてあまり吠えない。ユニ号の傍に黙って佇みじっと相手を見るので、時々ユニ号にしっぽでぱしりと叩かれるぐらい、レトリバー種としては愛想が少なく見える。

 

 ≪もう!サヨン!そのお顔、怖いわよ≫

 

 ≪何がだ、別に吠え掛かってないだろうが≫

 

 ≪にらんでるの!気が付いてないの?≫

 

 ≪睨んでねえ、見てただけだ≫

 

 そのうち、ユニが鼻先で促してその場を離れる。そして二頭で争っているのかじゃれているのかわからない言い合いをしながら仲間のところに行く。

 

 ≪にらんでるね、あれは≫

 

 ≪にらんでますね、あれは≫

 

 ≪にらんでるよね~サヨン≫

 

 呆れている三頭の視線もものともせず、ジェシンはユニを守るような行為を辞めない。しかし古い仲間のヨンハもからかいきれないのは、ユンシクに対してもジェシンは同じようにふるまうからだ。ソンジュンもジェシンと同じようにユニとユンシクを気にかけて世話を焼くが、ジェシンは素早くいつもユニやユンシクの傍に立つ。それにはソンジュンは敵わない。

 

 そしてそれは、今も。

 

 「こんにちは、みんな。さ、病気にならないようにしようね~。」

 

 でっぷりと太ったアン医師がやってきた日、ユニとユンシクはちょっと怖がった。幼い時に予防接種はいくつか受けているので、その記憶があまりいいものではないのだ。小さいからひょいと捕まえられて、口を開けないように握られて、首に腕が回り前足を握られて動けなくされ、ちくりとやられるのだ。ユンシクはその日半日くんくんと鳴いていたぐらいだ。痛かったし怖かった。その人と同じような格好をした大きな人間の男が目の前にいるのだから怖くて仕方がない。

 

 ≪大丈夫だよ、ほら≫

 

 ソンジュン号が見本を見せるようにおとなしく伏せ、それでもアン医師のアシスタントにしっかりと上半身を押さえられながら注射を受けた。狂犬病の注射は毎年必ず受けなければならない。怖がっていてもやってくる行事なのだ。

 

 ヨンハ、ジェシンと次々に受け、次にユニとなったとき、抵抗はしなくても、ユニは足が震えて動けなかった。怖いの、怖いの、というように。するとそっとジェシンがユニの首筋に鼻先を近づけて何度か舐めてやった。ソンジュンも近づいて反対側を舐めてやっている。

 

 「おや、仲がいいねえ!大丈夫だよ・・・えっとこの子はユニちゃんだねえ、女の子!ははは!ここの坊ちゃんたちは女の子に優しいねえ!」

 

 ユニは二頭の鼻先に優しく促されてようやく前に進み、涙目ながらも注射を受けることができた。

 

 

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