㊟フォロワー様500名記念リクエスト。
成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。
ご注意ください。
「・・・で、お前はそれに安易に頷いた、と。」
はい、と姿勢よく座る長年の付き合いとなった後輩を、ジェシンはすがめた目でにらんだ。
「少々語弊があります、コロ先輩。安易ではないですよ、勢いはまあ・・・少しあったかもしれませんが、俺は自分がしたくないことに頷くようないい加減なことはしません。」
「余計質が悪いんだよ、そんな奴だって知ってるからよ・・・。」
ミニョンとの約束から約二月後、ソンジュンはミニョンの父、ジェシンに会っていた。そして二か月間のミニョンとの攻防を話したのだ。正直、一方的にソンジュンが攻められただけだが。
「正直言いますと、ミニョンちゃんの『ずっと』の真意はどれぐらいのものか、ということが重要なポイントでして。青少年の感情の高ぶりに任せたものならば、スマートにやり過ごすべきだろうと思いましたし、逆に・・・確固として動かない気持ちならば、こちらも真剣に受けて立つべきだと判断したんです。」
「・・・分析すんな。」
「いや・・・分析でもしていないと、もう、罪悪感で俺は引きこもりになるところでしたから・・・。」
「まさかてめえ・・・手、出したのかよ?!」
「手を出してたら、ムン家の前で土下座してますし、多分開き直って引きこもることもないです。」
今まで見ておられることしか二人の間にはありません、とソンジュンは言い切ったので、ジェシンは肩の力を抜いた。ソンジュンはうそをつかない。隠し事は大小あるだろうが、口に出すことに偽りを載せるのが嫌いなたちだと昔から知っている。
『安易に』頷いたその日の後も、今まで通りミニョンはソンジュンに勉強を教わりに来た。ソンジュンも今まで通りムン家にミニョンを迎えに行き、帰りは送っていくこともあればジェシンが仕事帰りに迎えに来ることもあった。周囲には全く変わらない関係に見えていたはずだし、実際変わってはいない。約束ができただけだ。
そしてその約束を実行する期限を二人で決めただけだ。
いつも通りテキストとノートを広げ、いつも通り勉強を教え教えられ、お茶に呼ぶのを待ち構えているイ家のリビングに向かう前。その短い時間に、話をすることが増えただけだ。内容が、これからの二人のことに変わっただけ。
ソンジュンは慎重な男だが、わからないから聞くしかなかったのだ。ずっと一緒にいるとはどういうことだ、と。ソンジュンはミニョンの傍にいられる自分の賞味期限というものを知っている。大人になって、新しいい人間関係ができたミニョンには、ただのアジョシとなるだろうという覚悟はあったのだ。それを取り払っていいのか。とり払うということはどういうことか。それこそ少女の感情の高ぶりのせいでミニョンが大げさな物言いになっていたのだとしたら、なんてことないんだよ、という振りをしてやらなければならないと思っていた。恥ずかしがらないように。今までと同じようにソンジュンと向き合っていられるように。それは大人として寛容にふるまうべきだと、『安易に』頷いてから考えて、次の勉強の日に聞いたのだ。いつまで一緒に居られるのかな、ミニョンちゃんは大人になっていくのに、と。
「大人になったら結婚できるものね!」
無邪気に言い放ったミニョンに、ソンジュンは固まった。確かに、ソンジュンは今すぐにでも結婚などできるが、ミニョンはまだもう少し年齢を重ねなければならない。だが、少々ソンジュンの予想からは飛躍しすぎていた。ソンジュンとすれば、どちらかと言えばミニョンの少女的な感傷が言わせたのだと思う方に比重がかかっていたのだ。だから、仲良しの二人、からいきなり結婚というワードが出てくるとは思っていなかった。せいぜい、ボーイフレンドの真似事だろうと。練習台になればいい、とすら思っていたのだから。
なのでソンジュンは、ずるいけれども。ああだから大人ってずるいと若者は言うのかもしれないけれど。
とにかくミニョンの将来設計を聞き出したのだ。