空よりも海よりも その14 ~コロユニパラレル’パラレル’~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟フォロワー様500名記念リクエスト。

  成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。

  ご注意ください。

 

 

 脈はあっても温度差はかなりあるなあ、というのが傍観者であり両方の相談役のユンシクの見解だった。ちなみにどちらにもユンシクがかかわっていることは知らせていない。

 

 好意の度合いを測るなんて、無理も野暮もできないが、年齢的にソンジュンよりのユンシクには、ソンジュンの気持ちが割とわかる。

 

 ミニョンと初めて会った時、そう、生まれたてのミニョンを抱かせてもらった時、胸に沸き上がったあの感情。小さな、けれど温かく生命の輝きを体いっぱいに持ったミニョンを守らなければ、と誓ったのは、たまたま兵役前だったからという状況はあった。国を守る、といううたい文句は、高揚はするけれども現実味はなく、その時ユンシクは恋人はいたけれど家族ではなかったし、ソンジュンも独り身だったので、お互いに必死に守らなければならない存在はいなかった。皆大人でしっかりしている人ばかりだったから。だが、手の中に納まる小さな命を見たとき、沸きあがったあの想い。この子を守らなければ。それが二年の兵役の励みになったのだ。ミニョンはユンシクにとって特別な心の支えだった。それはソンジュンも同じだったのだとユンシクは知っていた。

 

 守りたい、それは相手を下に見ているわけではない。けれど無垢で無力な幼い子を包み込んで守ることは大人の勤めだと、ミニョンがその存在でユンシクとソンジュンに教えてくれたのだ。その楔は抜けないし抜くつもりもない。愛情、庇護欲、そんな言葉でもおさまらないあの時の感動と感激は、そう。

 

 広さも深さも、重さだって何にも例えられないのだ。

 空よりもまだ高く、海よりもまだ深く。

 果てしのないいとおしさがあるのだと教えてくれたミニョン。

 

 ソンジュンの胸にあるその果てしのないミニョンへの思いが、ミニョンの願いと通じ合えるのか、それがユンシクには予想できない。

 

 でも現実にミニョンはソンジュンのことが大好きで、それこそ自分のものだと思っていて、実際には難しいことだと知っている賢い子だから、その小さな胸の重荷をユンシクは少しばかり軽くしてやるぐらいしかできることはない。何しろ相談役、聞き役しかできないのだ、恋の相談相手なんて。

 

 最後は自分の意志と行動、相手がどう思ってくれるか、だから。

 

 

 『ジュンアジョシがね、今度ご実家においてある、安東のハラボジのご本の整理をするんだって!ミニョンも見たかったらおいで、って!』

 

 「懐かしいなあ。たくさんの歴史書をハラボジは集めてたからね。捨てることもできないから困ってたら、ソンジュンがお仕事に使いたいってもらってくれたんだよ。大切にしてくれていてうれしいんだよ、僕も、ミニョンのママも。」

 

 『じゃあ、ミニョンがシクアジョシとママの替わりに、手伝ってくる!』

 

 「頼むね。僕仕事が上手く休めるかわからないし、ママはおうちのことで忙しいだろうしね。」

 

 『ジュンアジョシのおうちだから、ジュンアジョシのパパとママにあえるのよね!どんな人かなあ。』

 

 「どんな人かは僕も知らないけど、ミニョンのハラボジハルモ二たちと同じぐらいのお年の方たちだよ。お行儀よくするんだよ。」

 

 『分かってる!ママがお土産用意してくれるって!』

 

 「まあお行儀は心配していないけどね。ミニョンは大丈夫だよ。いつも通りにしていても。でもご本はソンジュンが大事にしているだろうから、言う通りに扱うんだよ。」

 

 『分かった!ありがとうシクアジョシ!』

 

 ぽん、ぽん、と可愛いスタンプが続けざまに届いて終わったやり取り。その画面を眺めて、ソンジュンも悪いよね、とユンシクはため息を一つついた。

 

 ミニョンの好意が分かり始めていて、それでも今までと同じようにあの子をかわいがるから。あの子はますます君がいい男だって知ってしまうんだ。自分で蒔いた種はどうにかしなよ。

 

 けれどソンジュンは分かっているのだろうか、とも思う。ソンジュンが自分の書庫の整理に誘う、そんな相手は今までいなかったはずだ。彼の、一番大切なテリトリーにミニョンを入れるのだ。

 

 案外、どころか。脈あり、どころか。

 

 ユンシクはちょっとだけ怖くなって、ソンジュン、ミニョンからの報告を待つことにした。

 

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