Love Again その12 ~ソンジュン編~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 まさか父上は・・・ユニ殿に尼になれと・・・?!

 

 そう思ったことが表情に出ていたのだろう。ユニはゆるく首を振った。

 

 

 ユニがキム家から独立して離れることは、さすがにチェ・ジェゴンから王様に報告がいったとユニは聞いていた。その時、残る唯一のユニの正体を知る人物・・・内官や尚宮と武官、処刑された兵曹判書と地方へ行った子息の西掌議は別だが・・・、ソンジュンの父にも話は通した。子息のただの友人の姉の消息、ということにはなるが、子息であるソンジュンと本来は友人本人であったユニの親しい関係は父であるジョンムもよく知るところだったから。そのことを漏らしたのはすべてチェ・ジェゴンの独断ではあった。

 

 ソンジュンたちが清に旅立った後、静かにその後の身の処し方を考え準備していたユニに、イ・ジョンムは会いに来たという。わざわざ夜に、二刻をかけて籠に乗ってきた。前日にご丁寧にも通りすがりのような体で下人に声をかけさせ、来ることを伝えさせてまで。そして家を抜け出し集落の入り口で待っていたユニと、対面した。

 

 『キム家を離れる意向と聞いた。』

 

 『はい。そうすることが良いかと思うのです。』

 

 『・・・弟はそなたが必要だとは思わないのか?』

 

 『体はすでに回復しておりますし、身の回りのことは母がおります。そのうち妻も娶るでしょう。それに・・・私がいつまでも口を出すようなら、そんな頼りにならぬ者を王様にお仕えさせることなど申し訳ないことでございます。』

 

 『無理に姿を消さずとも、そなたの意に適う嫁ぎ先を儂は見つけることができるだろう・・・過去のことはチェ・ジェゴン殿からお聞きしている。そなたの気に染まぬ相手をあてがおうとはせぬぞ。』

 

 『大監様・・・ありがたいお言葉でございます。けれど私はご存じの通り娘としては薹が立っております。世間に染まりすぎた行き遅れでございます。それに、世間には公言できぬ罪を背負っております・・・。晴れ晴れと嫁ぐ、など私自身が無理なのでございます。わがままをお許しください。』

 

 『そんなそなたが良いという若者も必ずいると儂は思うが。』

 

 『そのような奇特な方がいらっしゃったとしても、お家がお許しになりますまい。出仕したとはいえ・・・。』

 

 振り返った貧しい村。その中に、豪壮な屋敷などないとわかる。勿論、キム家が貧しいことなどソンジュンの父は百も承知だ。

 

 『・・・私も、キム家も。縁を持って得であることなどない小さな存在でございますから。』

 

 言葉を失ったソンジュンの父は、しばらくしてから気を取り直すと、ユニに今後どうしたいのかを聞いてくれた。本当はひそかに出家するつもりだったとユニが言えば、せっかく籍を独立させるのだから町家で暮らせばよいのでは、働き口は世話するとまで言ってくれたが、人目に立つところは避けたいのだと希望を述べると、時間を少し呉れと言ってその日は終わった。

 

 そして仲立ちしてくれたのが、今の寺だったのだ。

 

 女人ゆえ尼寺が良いだろう。ただ大きいところは肩身が狭いかもしれない。まだ尼になってそれほど経っていない、未亡人になって尼を志した方の庵で、その方のお世話をしながらこれからをゆっくりと考えればよいのではないか、との申し出に、ユニは飛びついた。

 

 騙されているとは思わなかった。それほど訪ねてきてくれたソンジュンの父は真面目に話をしてくれ、ユニの話も馬鹿にせずに聞いてくれた。それに、やはりソンジュンの、ユニの大切な親友の、生きてきた中で最も信用した人の親なのだ。信じることの方に心の針は振れていた。

 

 

 

 「・・・あなたのお父上様のおかげで、私はこちらにお世話になることになり、よき仏門の師に出会いました。あなたのお父上様と庵主様、お二人が、尼になることは大変な覚悟の上での決断であり、私は若すぎて早すぎるのではないか、御仏と向き合うことで自分のことをもっと知るべきであるとおっしゃいました。ですので、有髪の弟子ということで、今に至るのです。」

 

 まだ修行が足りぬようです、とユニは自分の結い上げた小ぶりの丸髷をそっと撫でた。

 

 

 

 

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