㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。
ご注意ください。
その晩、ふかふかの豪華な布団は一流れしか使われなかった。勿論、露天風呂から上がった後、ヨンハがユニを引きずり込んだから、同じ布団に。
何の効用があるのかは知らないが、ふろに入った後、ヨンハもだが、ユニの肌はいつまでもいつまでも温かなままだった。少しぬめりを感じる湯の質だったせいか、タオルで拭っても肌がしっとりと水分を保っているのが実感できる。
つまり、要約すると、ユニはとても、それはそれはとても、抱き心地が良かったのだ。
夢中で、しかしその晩はヨンハはしつこくは抱かなかった。これから毎晩一緒なのだ。欲張らなくてもいい。ただ、湯のせいか、酒のせいか、ユニはやわらかく、まるで骨がないかのような柔軟さでヨンハを受け入れたものだから、しつこくないとは言っても、ユニの全身に触れ、唇を這わせ、髪を指に絡めて体を離すことをしなかった。
おかげでユニが目覚めたとき、ユニはヨンハと手も足も絡め合うようにして眠っていた自分を見つけて赤面した。
そっと腕から抜け出し、布団の周りにある浴衣を拾い上げ、それよりもさらに布団から離れたところに落ちているショーツを慌てて取ってそっと履き、それでも眠り続けているヨンハを起こさないように、食事などをとる掘りごたつがある居間の方に忍び足で移動した。そこには浴衣の上に羽織る羽織が置いたままになっていて、それにも袖を通すと、帯の結び目と胸元の緩みを今一度直して、余分に用意されているタオル類を持つと部屋の外に忍び出た。
日本の旅館には大浴場というものが大抵あるそうで、高級旅館であるこの宿にもあるのだ。昨夜は夕食前に少し急ぎで、そして夕食後は少し酔っていたのと、露天風呂に入りたかったのもあり、そこへは行かなかった。ただ、仲居から、早朝5時からは入れるのだと聞いていて、ばあやが行きたそうなことを言っていたので、ユニも入ってみたくなったのだ。
「んっと、三階よね。」
ユニたちは一階の奥まった部屋に泊まっている。渡り廊下を通っているから、離れのような構造なのだろう。その渡り廊下から本館に入ったところにあるエレベーターのところに大浴場の案内があったので、ユニはほっとしてそれに乗った。
暖簾をくぐり、すでに数足あるスリッパを入れる棚に自分が脱いだものを並べ、引き戸を開けて脱衣場に入る。見回すと空の籠に着てきたものや持ってきたものを入れておいてはいるのだとわかり、ユニはまねをして準備をすると浴場に入っていった。
とりあえず、とシャワーの前に座る。ヨンハに抱かれた後、そのまま寝てしまっていた。ヨンハの香りは好きだが、やっぱり体にはっきり感触が残っているのが誰かに見つかりはしないかと恥ずかしい。それに。
こっそりとシャワーの水流を強くして体の前面にわざとかけ続けた。ショーツを汚さないように気を付けて歩いてきたが、自分でもわかるヨンハがユニの体に残したものが、あふれ出してきそうな気がして、できるだけ流しておきたかった。
正式に夫婦なのだと、一昨日の晩、ユニはやっと実感できた。ヨンハが、あの余裕のある男が、あんなに情熱的にユニの中で何度も果てた。まるで初めての体験かのように。何に遠慮がいるのか、というかのように。自分の中に確かに彼の精が入り込み、ようやく二人が本当の夫婦としてつながった、それはユニもヨンハと同じぐらい夢中でそれを受け続けたから、気持ちも繋がっていたに違いない。
それでも、ちょっと困ることもあるし、粗相をしたら恥ずかしい。人に知られることは必要ないことだ。十分に流し、とりあえず浸かろうと、ユニは湯船に向かった。
「おはようございます、奥様。」
湯気の向こうに浮かぶ顔から声が掛かり、ユニが凝視すると、そこにはばあやがいた。ユニだって5時半ごろ部屋を出たというのに、ホカホカと湯だった顔をしているばあやはなんと早くにきたのだろう、とユニは浸かって隣に行くと聞いてみた。
「年寄りですからね、毎朝4時ごろに起きてますから、もう習慣になってしまって、目が覚めるんですよ。」
それでも重厚なやわらかい布団に一時間近くうとうとと寝転がっていたんだとばあやは笑った。
「気持ちよろしいですねえ。昨夜からこのお湯のおかげか皺が伸びた気がしますんですよ・・・。奥様は・・・もうこれ以上若返らないぐらいおきれいな肌になられましたねえ。」
それに、とばあやはにこにことユニの手の甲をさすった。