ROSE 旅 その12 ~ヨリユニパラレル~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。

  ご注意ください。

 

 

 夕食前に部屋の風呂に入ったヨンハ達。ヒノキ造りで、常時湯が供給されるようになっているらしく、湯船にはなみなみと湯が張ってあった。露天風呂は後にして、用意されてあった浴衣を、着付けの仕方を書いてある紙を見ながら着た。打ち合わせなどはチョゴリと変わらないし、帯の位置も女性の方は胸下付近なのも同じ。男性の帯が腰骨当たりなのが少し落ち着かない位置ではあったが。

 

 ユニは案外その辺は気さくで、夕食を準備する知らせにきた仲居に着付けがあっているかどうかをこだわりなく聞いていた。にこにこと合っていることを教えてくれたその仲居は、緩みやすい胸元をきつめに締め直してくれ、ついでにヨンハの腰帯の結び目の位置も直してくれた。お似合いですよ、と笑っててきぱきと掘りごたつの上を片付け、ただいまお持ちします、と一旦下がっていった。

 

 夕食は四人で食べることにしていた。電話で呼ぶと、こちらも風呂に入ったのだろう、浴衣姿でつやつやと肌をほてらせたトックとばあやがやってきた。そして次々に食卓に皿や小鉢、小さなカンテキなどが並べられる。

 

 乾杯!

 

 と飲むのはビール。韓国でも日本のビールは人気だ。今夜は何も気にせずトックも飲めるな、とヨンハはどんどん注いでやる。ユニはトックが飲酒するのを初めて見た、と楽しそうだ。

 

 「きれいですねえ・・・。」

 

 とばあやが料理を拝んでから箸をとったのにも笑った。もったいないですよ、と言いながらもきれいな色合いに盛り付けられた刺身に手を付ける。ユニも前菜らしい美しく照りの乗った野菜の煮つけの小鉢に箸を伸ばした。献立の紙が用意されており、そこには日本語の下にハングルが書かれてあった。宿泊客に外国人観光客が多いので、英語、中国語、韓国語は常備してあるのだそうだ。

 

 「きょうやさい・・・京都で特産の野菜で作るおかず、ですって!」

 

 ユニは料理の名前にも興味があるらしく、献立を傍においてチェックしている。これもきょうやさいを使ってるんですって、といんげんのてんぷらを黄緑色の塩を付けておいしそうに頬張った。

 

 サシミ、テンプラ、スキヤキ、シャブシャブ、ラーメンなど、人気の日本料理の名や見た目はさすがにわかる。けれど本当にそれは一部で、例えばユニが驚いたのは、野菜の素材の色そのままにしか見えなかった京野菜の含め煮の中の一つ、カブを口に含んだ時、ものすごくしっかりとした味付けがあったことだ。見た目では、さすがに照りの具合や切り方、盛り付けからして料理されたものだとは分かるが、あまりにも色合いが自然すぎて、味の想像がつかなかったのだ。いや、味がなさそうに見えた。だが、口元に近づけると、出汁のいい香りが、カブの上に小さく添えられたゆずの香りと混ざって漂い、その香りそのままの出汁の風味が、微妙な塩加減の味付けと共にしっかり染み込んでいた。おいしい、と素直に感じた。

 

 「このお塩はお茶味なんですねえ。」

 

 とばあやも抹茶塩を天ぷらにつけて感心して食べている。そのうちに、頼んでいた冷酒の小瓶を持ってきてくれた仲居が、カンテキに火をつけ、小鍋の中に入っているこぶ出汁が湧いたら、野菜を入れ、肉は色が変わるぐらいに泳がせたらすぐにお召し上がりになってくださいね、と言い残していった。京都牛のシャブシャブなのだそうだ。

 

 一番手前にいたトックのものを、いれる順番、つけるたれ、薬味と親切に並べてくれたので、ばあやがユニのを、ユニがヨンハのをまねして準備してやった。ヨンハはそれだけで、酒で赤く染まった頬をさらに赤くしてうれしがった。

 

 「ユニ!ほら!ユニも飲んで!」

 

 小さなグラスに冷酒をついで、乾杯をねだる。ちん、と小さな音を立てたグラスの中身を口に含めば、さわやかな香りが広がり、料理の味をすっきりと流してくれた。

 

 「ヨンハさん、とてもおいしいのね、お酒って。」

 

 ユニも少し酔ったのかもしれない。掘りごたつの中の足をちょいとヨンハの甲に乗せてさすると、機嫌のいいユニの夫は、さらに顔を赤くして喜んだ。

 

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