㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。
ご注意ください。
こんなに手をつないだのは初めてだ・・・。
と、いつもユニをガードしていた親父コンビに聞かせれば何を寝言を、と言われそうな感想をヨンハは一人胸のうちで噛み締めていた。
ホテルを出るときに、ぎゅ、とヨンハの手を握ったのはユニの方から。きらきらと瞳を輝かせて、お天気だわ!と嬉しそうに囁いた。ターミナル駅ほど近くのホテルだったので、駅への短い道のりをしっかり手を繋いで楽しんだヨンハだったが、そこから手が離れたのは自動改札機を通る時だけ。そして手を求めてくるのはユニの方から。
ターミナル駅であり、そこを中心にして環状になっている駅はどこも人の乗り降りが多い大阪の中心地だ。当然駅にも車内にも大勢の人が乗っている。うんうん、迷子になっちゃだめだしね、とヨンハはにこにことした顔がもう戻らないぐらいにご機嫌だった。
テーマパークの最寄り駅に着き、駅からすでに雰囲気が盛り上がっている入場ゲートまでの通りも手を繋いで寄り添って。トックが購入済みだった入場券をもらい、開場を待つ他の客たちと共に待つ間も手を握り合ったまま。そして二人でゲートを通り抜け、振り向いてトックとばあやに手を振ったときも片手はしっかりと繋がれていた。
とにかくユニの一番の目的のアトラクションへ、と園内のマップを見ながら急ぐと、いかにも中世ヨーロッパの雰囲気を醸した街並みとその一番奥には黒々とそびえる城。ユニが、映画とおんなじ!と声を上げたのが可愛くて、ヨンハも一緒になってちょっと飛び跳ねてみたり。
「へえ、グッズを売ってるショップがあるねえ・・・マント着てコスプレしてる人も案外・・・うわ、杖持ってる!あれも売ってるんだ。」
「あそこはなんで並んでるの?何があるの・・・あ~バタービールの売り場なんだわ!後で、あとで飲んでみましょ!」
とりあえず売店は素通りして、それでもちょっとばかり観察しながらも、人が続々と流れていく城の入口へとまっすぐ向かったのだが。
「朝一だよねえ・・・すでに一時間待ち?人気あるんだなあ。」
「ホント。ごめんね、ヨンハさん。並ばなきゃ乗れないんでしょ?」
ヨンハを気遣ったユニ。
確かにヨンハは待たされることはほぼない。人を待たすことはあるが。行列に並ぶようなところにもいかないし、行列のできる人気店などは、予約を入れて待たなくて済むようにしてきた。というか周りがそうしてきたのだ。ユニとはそういう場面に一緒にいたことはないが、察してはいるようだ。
けれど、ちっともつまらないと感じていない。
「並ぶのも一つの楽しみさ。ほら、並んでいる間に・・・。」
ヨンハはマップを広げ、ついでに小さな冊子もボディバッグから出した。いわゆる攻略本と言われる種のものだが、それを広げで二人でこの後の行動を相談する時間にすればいいのだ。何しろ昨夜は疲れ果てて、『初夜』に熟睡した新婚カップルなのだから。
へえ、杖も誰が持っていたものか、って種類が色々あるんだね、マントも寮によって違うんだ。ユニは何が欲しいの?マントはね、なんだか着ている人がいっぱいいたからなんだか見て満足しちゃった、でも杖はちょっとほしいような、持ってたら恥ずかしいような・・・。気に入ったら買ったらいいじゃん、面白いよ、部屋の壁に飾ったら思い出の品になるし。うん、見ていい?勿論!それとね、へえバタービール結構多そう・・・半分こしない?わ、百味ビーンズも売ってるんだ・・・何それ?変な味が沢山あるの、えっとほら。どれどれ?なにこれ鼻くそ味って?!ね、おいしくなさそうでしょ?でも売ってるんだよね?!
ヨンハはこのアトラクションの映画はうっすらとしか知らない。だが、ちょっとばかり面白くなってきて、どんどん進む列が城の中に入り、あちこちで登場人物の語りに気分が盛り上がり、乗り物に意気揚々と乗った後。
手を引いて歩いているのはユニの方。ヨンハはまだひえひえと言っていた。
最初はよかった、箒に乗って何かスポーツしているのも目の前に何か飛んできたけど迫力があってよかった。だけど、あのへんなモンスター何?怖かった。ディメンターって?吸魂鬼?あれすごく怖かったんだけど!乗り物ひっくり返るかと思ったんだけど!
「ヨンハさん、お化け屋敷って苦手そうね?!」
うん。手、握ってて、ユニ。