Crazy for you 険しくも明るい道 ~カラユニパラレル~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。

  ご注意ください。

 

 

 ソンジュンにとって、将来への第一関門ともいえる季節に入った。

 

 博士論文の仕上げの時期、そして同じぐらいに締め切りのある一つの学会に応募する論文。それが重なっていた。勿論予定としては頭に入っていたし、準備もきちんと計画を立てて進めてきていたが、予定通りにいかないのもどこかでわかっていた。そしてその通りに、今、なっている。

 

 考察すべきテーマがあり、それに関する検証があり、そして答え、または可能性を導き出す、その過程において、もともと自分が求めていて予測している通りになるとは限らない。そうなると他の文献や資料を調べ直さなくてはならなくなる。ソンジュンは政治学の中でも『歴史』をつけるジャンルなので、テーマは莫大にあるが、一つ一つの範囲は狭い。けれど奥深いので探れば探るほど枝葉は広がるのが人文系の研究の面白く厄介なところだ。そこに引っかかってしまえば袋小路に入り込んでしまうと常々チョン教授に注意されていたものの、見事にはまってしまった。

 

 はまったのは学会の方に応募する論文の方だった。博士課程の卒業用の研究論文は早いうちにテーマを決めていたため少しずつ進め、もう見直しまで済んでしまって提出開始日を待つばかりだった。それがまだ救いか。同期の院生たちはまだ格闘中の者ばかりだからだ。

 

 学会の方は、それこそ次の機会にすればいい、という人だっている。ソンジュンはまだ学者でも何でもない。若いし、急ぐことはあるまい、もっと思考を深めてからでも、といわれるだろう。だがソンジュンは自分の人生の計画を立ててしまっている。ちょっとばかり人より早く専門分野の学者として一人前になりたい。

 

 そんなに有名になりたいのか、肩書が欲しいのか、という人もいた。事実、学者というものは肩書も名声もいらないことはない。なければ、例えば本を執筆しても出版してもらえないし、世の中のことに物申す意見を持っていても発表する場をもらえない。学者として生計が立てられないのだ。

 

 ソンジュンは学者として生計を立てたい。それが目的。そうでなければ、ソンジュンの大切な恋人をいつまでたっても待たせてしまう。それは困るのだ、ソンジュンが。

 

 肩書、で言えば、最も世に認めてもらえるのは『大学教授』というものだろう。勿論、若く、専門的にも未熟なソンジュンがすぐになれるものだとは思ってはいない。けれどできるだけ早くそこにたどり着きたい。ただ、その前に、例えば新進気鋭の若手研究者、だと認められるためには、まず自分の研究が表に出て評価され、それによって大学に教える立場として認められて働く場と研究する場をもらわなくてはならない。本来は博士課程の後、修士課程も修了するべきだし、もちろんソンジュンもこのまま修士課程に進む予定だが、その二年ほどがやはり惜しいのだ。

 

 ありがたいことに、ソンジュンの優秀さと将来への想いを知った担当教授チョン教授の指導の下、博士課程の一年目の終わりごろからソンジュンは積極的に学会に応募し、取り上げられてきた。勿論共同執筆者としてチョン教授の名は載っているのが、メイン研究者はソンジュンだ。学会での発表で、他の研究者たちから容赦ない質問も必死にかいくぐり、その淡々とした表情から『成均館の鉄面皮』とあだ名されたぐらいだが。胸のうちはもう爆発しそうなぐらいの緊張と興奮でいっぱいだったのに、と不満はあるが、そのおかげで妙な貫禄を認めてもらったのが年齢の若さを多少カバーしているところもあるとは納得もしている。

 

 その成果のおかげで、修士課程に入った年から、大学の初年生の講義を講師として持たせてもらうことになった。大学からの提案だった。ただし、博士論文の高い評価と、もう一度の学会での論文発表が暗黙の条件だ。成均館はレベルの高い大学だ。教えるもののレベルが低いわけにはいかない、というわけだ。

 

 おかげで今、ソンジュンは二週間ほど研究室に缶詰めという生活に陥っているわけだが。

 

 

 

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