同室生の姉上 ソンジュン編 その131 ~成均館異聞~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「余が寛大な王だと知らぬのか?!」

 

 はっはっはっと大笑いする王様を、四人はぼうっと眺めるしかなかった。ソンジュンは必死だったし、ジェシンはおびえるユンシクに困っていたし、ユンシクは文字通り震えていたし、ヨンハだけは楽しそうに事の推移を見守ってはいたが、大笑いする要素などどこにもなかった今までの中二坊の雰囲気は何だったのだろう、と思うほどの呵呵大笑だ。

 

 「若い者たちの艶めいた話に文句を言うほど余は野暮ではない。大いに気張ってその娘の首を縦に振らせるのだな!」

 

 震えていたにも関わらず、今度は口をあんぐりと空けて笑う王様を見ているユンシクがさらにおかしい。そんな呆けた顔もかわいらしいのに、この顔をもっとたおやかに、もっと透き通らせれば女人に変わるのか、と想像したら、驚くほどの美しい顔が脳裏に浮かんできた王様。

 

 これはこれは。余の予想が違わねば、かなり見目もよい娘なのであろう・・・イ・ソンジュンも男であったな。

 

 小科を受けるまでの、書痴ともいえるほどの暮らしぶり。成均館に入ってからも、学問三昧だと聞き、実際にその成果を見せられている王様は、ソンジュンにあまり男の匂いを感じたことがなかった。子供っぽいユンシクは今でもそうだが。どこか世俗の垢にまみれていない、澄んだ水のような印象を勝手に持っていた。もちろん、娘一人に惚れたからと言ってソンジュンが世俗まみれに返信するわけではないが、人としての感情があったのだと証明されたような気がして、少しばかり安心した面もあったのだ。

 

 一人一人の顔を見る。ク・ヨンハは事情をよく知っているようだ。何しろこの話題を出した張本人なのだから。王様の予想が正しければ、キム・ユンシクは姉と親友の恋を見守っているはず。ムン・ジェシンは知らないようだが、ユンシクの可愛がりようを見ていると、彼らが悲しむような結果に走る男ではない。何かあれば彼らの味方をしてくれるだろうと思えるぐらいの関係に見える。

 

 そう、何かあれば、つらい恋路でも、イ・ソンジュンには頼ることのできる友人がいるではないか。

 

 「よし。引き受けた。そなたが娘を口説き落としたならば、その時には余が喜んでそなたの恋の成就を祝おうではないか。」

 

 そう朗らかに胸をたたいた後、王様は真顔に戻った。

 

 「だから、わかっておるな?」

 

 ソンジュンは、大科で結果を出すことが父を説得する一番の武器になるといった。その通りだと王様も思う。長く人生経験を積み、それこそ世間の、両班として生きる厳しさを知っている、権力を持つ父親に対して、ソンジュンがその力を誇示できるのは大科でしかないのだ。そして、その大科に関しては。

 

 ソンジュンが王様に対して自らの力を示し、王様に己の願いを聞き入れてもらえる基準にもなる。だからこそ、ソンジュンは通らなければならない。大科に。誰からも文句を付けられることのない、この国が誇る秀才であるという成績を残して通らなければならないのだ。

 

 「よく・・・よくわかっております。」

 

 「それならばよい。」

 

 励むがよい、と王様は立ち上がった。

 

 大科への取り組みはすでに始まっている。毎日の講義の予習復習、その上に大科のための勉強は続いている。はっきり言って王様はそれを邪魔しているのだ。わかっていてやってはいるが。だから長居は不要、と立ち上がった。そして、ふと振り返ってにやりと笑った。

 

 一人事情がよくわかっていないジェシン。ヨンハをにらみつけていた。この後ヨンハはジェシンに締め上げられるだろう。身内であるユンシク、何かかかわっているヨンハ、なんとなく皆が協力している中、実はこの後、最大の協力を差し出すことのできる男がムン・ジェシンだ。そう示唆したくなった王様は最後に言い捨てた。

 

 「最近、赤壁書が出没しないが・・・あの賊が提言することは非常に余にとっても耳の痛い政策の穴が多い・・・その解決策を、これからの官吏には求めることになろうよの。」」

 

 事実上の大科に対する取り組みへの最大の助言だった。

 

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