同室生の姉上 ソンジュン編 その130 ~成均館異聞~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「・・・派閥が異なる娘とな・・・。」

 

 そう王様はつぶやいた。この国で、特に両班としての歴史が長い家になるほど派閥の関係に縛られる。それほど縁戚関係の糸が絡まり、複雑になっているのだ。王が知る中で、正妻を派閥違いの家から娶る家はなかった。側室にあたる花妻までは知らないが。だからソンジュンが言う難しさはよくわかる。自らの正妻である王妃、側室にあたる嬪すらほぼ老論だ。なぜなら、母后が老論であるからだ。王になるものの母方の実家が権勢をふるうことはこの国ではよくあることで、やはり南人の派閥の出である妃が生んだ者が王になったときは南人が隆盛を極めたこともある。妻の実家は、娶る側にとっても重要だ。

 

 けれど、それが続くのを阻止したい、それが王の究極の目標だ。先王英祖が提唱した蕩平(タンピョン)とは、派閥の垣根をなくしていくための方策ではなかったか。それを継続して掲げているにも関わらず、朝廷では派閥争いが相変わらず起こり、お互いの足を引っ張り合う日々が続いている。

 

 王様が成均館の『花の四人衆』を気に入っているわけもそこにある。もともと、学問好きのために学問を熱心にする成均館の儒生に期待することも多い。そのうえ、すぐにでも使えそうな高官の子息であるイ家とムン家のソンジュン、ジェシンが優秀な儒生として同年代で一緒に学んでいるうえに、経済の要である御用商人の子息ヨンハが加わり、自らの力でのし上がってきた新たな才能であるユンシクが、仲良く暮らしているのだ。蕩平そのものの姿だ。

 

 王様にとって、彼ら四名は、蕩平の広告塔でもある。

 

 王様は鋭くヨンハを見た。知らん顔をして、というより、にやにやとソンジュンを見続けているヨンハに、そこまでの思慮はあるのか、との疑念も湧くが、正直この男の笑顔のない顔も思い浮かばない。儒生としての成績は、上位ではあるが飛びぬけている印象はない。けれど、違う鋭さ、賢さ、そして判断力は四人の中で一番だろうとにらんでいる。その男が、目的もなしにこのような事態を引き起こすものだろうか。わからない。わからないが、王様は気づかされたのだ実際。彼ら四名は王様の施政の広告塔になりうるし、その上最も注目されるであろうイ家の子息の婚儀すら派閥を超えるのであれば、どうなる?

 

 おい、何怯えてる?

 

 不思議そうな小声が聞こえた。ジェシンが、背後でジェシンの服にしがみついているユンシクにかがみこんで聞いているのだ。可愛がっている割には、暴れ馬という別名そのものの乱雑な手つきでこの後輩を小突いているところもよく見る。ヨンハに至ってはけられ殴られているが。普段ならしがみつくユンシクの頭をグラグラとゆするぐらいの扱いはするだろうに、それもできないほど彼はジェシンの背中に引っ付いてうつむいているのだ。

 

 ほう。

 

 王様は気づいた。派閥違い。家の勢いの違い。堅物のイ・ソンジュンが会う可能性のある人間関係。彼の人への興味のあり方。そして。

 

 なるほど。弟より美しいということか。

 

 キム・ユンシクの姉の話は王様の耳にも入っている。小科に、すい星のように現れて、二位という成績をかっさらったユンシク。病弱で学堂にも通えない青年がどのように学んできたのか、成均館の博士から聞いた噂は興味深かった。彼を養い、看病し、そして学ばせた、女人にしておくには惜しいと思うほどの姉がいるのだと。一人の優秀な人材を世に出してくれたことに、王様は単純に感謝をしていたのだが。

 

 この堅物まで虜にするほどか。

 

 美しさだけではないだろう。イ・ソンジュンがほれ込む女人だ。基準は明快。おそらく、いや、キム・ユンシクの噂通りであるならば。

 

 聡明さが、惚れた理由か。

 

 愉快になってきた王様は、ぱん、と膝を叩いた。驚いた四名が王様の方を見ると、王様は大きく口を開けて笑っていた。

 

 

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