㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。
ご注意ください。
どんなランジェリーを購入したのか、ユニは絶対に見せてくれなかった。旅行用の大型のキャリーケースはすでにマンションのウオークインクローゼットに二つ鎮座しているのに。中身もすでに詰まっていると分かっているのに。ちょいと覗けば分かるのに、とはヨンハの胸の悪魔が囁くのだけれど、ちゃんとロックされていて開けられない。自分のケースもロックされてるってどういうことだと思うけれど。
「暗号キーは、当日に教えるようにばあやさんに言われたの。」
その上、鍵はユニが当日持っていく手荷物用のバッグに忘れないように入れているらしい。場所を変えちゃダメ、と真剣に言われて、ヨンハが反論などできるわけもない。そしてそのバッグは、女性が当日必要な細々としたものを出し入れするために、ユニのマンションに持って帰ったのだ。ヨンハはキャリーケースを眺めるしかない。ヨンハのはメタリックシルバー、ユニのはゴールドピンク。自分が選んでおきながらだが、牢屋の格子に見えてきたヨンハ。鉄壁の防御だ、と恨めしげに睨むしかなかった。
けれどユニはヨンハの機嫌をすぐに直せる。
「あと一週間すれば、このキャリーケースを持って飛行機に乗ってるのね?」
ドキドキしている、とでも言うように胸を押さえるユニは可愛いから許す。
「でね、ばあやさんに言ってくださったのね?」
うん。ユニのお願いはきかなきゃいけないって天のどこからか声がするからね。俺はトックに言っただけだけどね。
「ばあやさんには半分お仕事みたいになるかも知れなくてごめんなさいって言ったら、海外旅行は初めてですから嬉しいって言って貰えたのよ?」
うんうん。ユニの考える事に間違いなんてないからね。ばあやはそりゃ喜ぶさ。
「本当は、お義父様もご一緒だと家族旅行みたいで楽しかったんでしょうけど・・・。」
うんうんう・・・。う?
「お忙しいんでしょうね。でも声ぐらいかけた方が良かったんじゃないかしら?今からお誘いしたら、気だけ遣わせちゃってご迷惑よね・・・。」
へ?へ?へ?
「家族旅行なんてあまりしなかったんでしょう?お忙しかったから。トックさんとばあやさんもそうなのよね?じゃ、じいやさんもお誘いしたらよかったのかしら?もう、私ったら今頃思いつくなんて・・・。」
じ・い・や・ま・で?!
えへん、おほん、俺のかわいい奥さん。ここで思い出しましょう。新婚旅行にトックが行く事にあんなに驚いた君がですね、ここで動向人数を増やしてくるとは思いませんでしたよ、ええ、ク・ヨンハはおどろきました。
「・・・あら?そうだったわ?」
そうだったわじゃないよ、ユニ~!トックはもはや空気だし、ばあやは、まあ、俺もいいかなって思うけどさあ、じいやや親父に至っては、俺に見張が沢山着くようなもんじゃないかっ!新婚旅行だ新婚旅行!親父は要りませんっ!それにさ。
「親父を連れて家族旅行ならさ、ユニのお母さんやテムルも連れて行ってあげないと。ユニたちだってお父さんがお亡くなりになってから、どこかに旅行なんてなかったろ?」
元々、新婚旅行にお付きで着いてくるトックが気の毒だとユニが言い出したことから始まったのだ。10日に及ぶ旅行中、手続きや様々な世話で、トックにやすむ時などないだろうし、まさに新婚ほやほやの夫婦に付き従うことほど気詰まりなことはないだろうと普通は思う。だから、良い機会だからトックの母親であるばあやを連れて行って、途中親子で観光でもしてもらって息抜きができれば、というユニの提案に、トックはともかくもばあやには世話になっている意識のあるヨンハが賛成したのだ。遠慮するトックを説き伏せて、ばあやの同行は決まっている。キャリーケースなども、外商での買い物の時に一緒に選んでやった。だ、けれども。
「新婚旅行だし・・・これ以上人数増やすと、トックの心労が溜まると思う・・・。」
親父は連れて行きたくないっ!と叫びたかったが、そんな冷たいこと言うなんて、とユニに思われるのが厭だったヨンハは踏みとどまった。そして、トックの心労を盾に、断固としてこれ以上の増員は。
「そうね。ホントね。私が最初に言ったのにね。ごめんなさいヨンハさん。」
残り一週間。新婚旅行の定員は、四人で締め切られた。