㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。
ご注意ください。
やりたいことが沢山あると日は早く過ぎる気がする。ユニも、幼稚園での仕事をきちんと後悔せずに終われるように、残すべき資料を整理したりして忙しかった。まだ、固定の担任を持っていなかったからましであるのだろうが、英語を担当した全クラスの子供達一人一人に、この一年の頑張りを褒めるカードを作ったりしているから家でも忙しい。その上、新居となるヨンハの屋敷へ持ち込む衣服の整理や、新婚旅行の準備もある。とは思ったものの。
「・・・三月下旬から四月にかけての日本って・・・どんな服装がいいのかしら・・・。」
韓国よりは温かなイメージがある。何しろ温暖な気候でリゾート地となっている済州島に近いんだから、と考えたものの、メインの行き先である東京や立ち寄り先である京都はもっと東に上る。スプリングコートでは寒いかしら、でも二枚も三枚も上着を持っていくのは荷物だわ、ヨンハさんてばトランク引っ張れるかしら、新婚旅行だから二人で行くのよね・・・ね?
ユンシクにPCで日本の気候やトラベルニュースみたいなのを検索して貰おうとリビングに戻ると、風呂から上がったユンシクがぼうっとテレビを見ていた。その日は、一つ大きな仕事にめどがついたと、同僚と飲んで帰ってきていたのだ。疲れたのかしら、と思いながらもユニが用事を言うと、快く部屋からノートPCを持ちだしてきてサクサクとキーワードを入れていく。難しい季節だよね、暖かい日と寒い日が交互に繰り返されるみたいだよ、気温はこっちより少し高そうだけど、などと言いながら顔を寄せ合って見ている内に、ユニはさっき浮かんだ疑問をふと口に出していた。
「う~~ん・・・どうだろ?確かに新婚旅行だしねえ・・・でも・・・。」
ユンシクは頬杖をつきながら天井を眺めた。
「トックさんが一緒にいない先輩がどうも浮かばないよね・・・。学生時代は学内にはトックさんはさすがに入ってこなかったけど、ちょっと外で飲む、なんてなったら、大概トックさんが登場したしねえ・・・。」
嫌なの?と聞くユンシクに、ユニは黙って首を振った。
「嫌なんじゃなくて申し訳ないの。トックさんがいたら・・・絶対トックさんに甘えてなんでもして貰っちゃうでしょう?それに新婚旅行に着いてくるなんて、トックさんの方が嫌なんじゃない?」
「ん~~。多分姉さんが困るんじゃないか、って思う方がトックさんはしんどいと思うけどね。それなら着いていった方が気が楽だって思うんじゃないかなあ?」
「ヨンハさんだって、トックさんがいなかったらちゃんとなんでもできるでしょ?」
「わかんないよ?トックさんがいるから、いいや、って思ってる人だし。」
まあ聞いてご覧よ、とユンシクは大あくびをした。酒が入っているから眠気が来ているらしい。
「そうそう。今日一緒に飲んだガンちゃんにドレス姿とって貰うんだって?大役だって張りきってたよ。」
「ガンちゃん?」
「そう。カメラマンのガンちゃん。スチールも動画も撮る人で、センス良いから編集まで全部一人でやっちゃう人。今日のCMの出来も良くって、スポンサーから一発OKでさ。それで飲んでたんだけど、先輩にねじ込まれて式の前に姉さんのドレス姿を前撮りするって言うんだもん、僕びっくりした。」
「まあよろしくご挨拶しておいてね。もちろん当日は私もご挨拶するけど・・・。」
「今週末なんでしょ?早く寝て体調整えときなよ。それに、旅行の件は、トックさんか先輩に聞いてみたら?着いてくることになってて、姉さんがどうしても気が咎めるなら、トックさんも誰かと一緒に来るようにすれば?観光する自由時間も上げてさ。なんとかなるって。先輩、姉さんのお願いなら聞いてくれるよ・・・。」
ごめん、僕眠い、PC勝手に見てて良いよ・・・。そう言ってユンシクは立ち上がると、よろよろと部屋へ戻っていった。ユニは、トックの件もガンちゃんの本名も何も解決しないまま、しばらく日本の桜の名所をネットサーフィンした後、寝た方が良い案が浮かぶかも、と自分も部屋へ戻って寝てしまった。