二番目の男 その127 ~ジェシン編~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

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  成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
  ご注意ください。
 
 
 当然、王様はユニが女人だと知っているから、
 この噂がまるっきりの作り話だと分っている。
 けれど、根本の『女』ということを言えはしないのだから
 結局ユニが自分自身で潔白を証明するしかない。
 助けてサヨン。
 そう思っても見たが、これは自分で乗り切らなければ、と
 ユニは覚悟を決めるしかなかった。
 
 アメンオサは、親族すら行き先を知らされない隠密の任務。
 危険も伴う。
 心配もかけたくない。
 無事にお帰りになって欲しい。
 私は潔白なのだから、とユニは腹をくくった。
 
 問題は、相手が女官だということだ。
 王宮には入り、王を含め王族に仕えることは
 王の持ち物だ。もちろん色恋沙汰は御法度。
 その女官が、キム・ユンシクに書庫で襲われた、と
 事細かに話すものだから、どうしようもない。
 さらに、その日は確かにユニは書庫に出向いていて、
 というより仕事で書庫には毎日のようにいっているし、
 当然一人で行動する。
 讒言した二人は、書庫から出てきたユニが
 下履きをあげながら出てきたやら、
 衣服が乱れていたやらと言い立てるし、
 女官は衣服を脱いで迫られたと泣くし、
 証人のいないユニとしては
 何もしていないことを主張するしかなかったのだが。
 
 助け船は意外なところから現れた。
 王宮付きの玉壇妓生になっていた名妓チョソン。
 成均館儒生のユンシクに惚れ、
 身請けを願うも断られ、
 傷心のうちに、誘われるまま王宮付きになった美しい娘。
 優しく、自分を正当に評価してくれていたユンシクを、
 女として見ては貰えない悔しさはあったが、
 今でも好意が残っているからこそ、
 彼女は呆れたように現れた。
 
 『あなた方は本当に男?
  そんな余裕のない逢瀬に、服なぞ脱ぐものですか。
  布団も何もない埃だらけの床ですわよ?
  さて、あなた方なら、どうされます?』
 
 ユニが、さも脱いだ服を着ながら出てきたように
 証言した官吏は焦った。
 彼らは本を抱えてヨタヨタ歩くユニを見ただけなのだ。
 そして、そのユニをじっと見つめている女官を
 見つけただけなのだ。
 老論に属する二人の官吏は、
 取り入りたい大科壮元のソンジュンと
 仲の良いキム・ユンシクに腹を立てていたし、
 老論の出世頭を友人に持つくせに
 小論の出世頭であるムン家に姉が嫁に行くという話を聞いて
 二重に嫉妬したのだ。
 小派閥の貧乏両班の小せがれの出世譚を
 どうしても邪魔したかった。
 
 『下世話な話、殿方の一物など、
  着物の裾からいくらでも出し入れできますわよね?
  それに襲われたのなら、その女官様は
  埃だらけに、髪も乱れていたんじゃないですかしら?
  胸元を押さえるなんて、私だって今でもできますわよ。』
 
 ユニは突如現れたチョソンの口調に驚いた。
 ユニの前では、チョソンはいつも美しい言葉で話をしていたから。
 娘らしく、可愛らしく。
 今のチョソンは、男女の厭らしさを知り尽くす
 そんな世界で生きてきた姿をさらけ出していた。
 
 けれど、醜いとは思わなかった。
 チョソンはそうやって使い分けながら
 生き残ってきたのだ。
 それに、チョソンの芸は本物だ。
 彼女の武器は芸であって、男あしらいではない。
 けれど、そんな経験もあって、
 チョソンの芸には歓びや哀しみが表現されるのだ。
 何も無駄にしないで生きてきた女人だ。
 
 『相変わらず、綺麗な瞳をお持ちだわ・・・テムル様。
  このキム・ユンシク様は、私の色仕掛けにもなびかなかった
  強者でいらっしゃるのよ。
  私が胸元を緩めても、裾を上げても、
  しらん振りできるお方ですのよ。
  絹の布団にも誘惑されて頂けなかったわ。
  ましてや・・・。』
 
 女とはこわい、とその場にいた男達は思った。
 ただでも美しさと妖艶さを売りにしているチョソンが
 地味な女官服で居心地悪く立つ女官の前で
 艶然と微笑むのだ。
 あんたが私に敵うのか、と。
 私を振った彼が、あんたを選ぶわけがない、と。
 
 
 サヨン、どうしましょう。
 何とかなったんだけど、
 チョソンになびかない堅物男だと、
 また変な噂が流れるかも。
 
 暗かったからそう見えたんです。
 もしかしたら、キム・ユンシクではなかったかも。
 と言い訳を始めた官吏二人を余所に、
 ユニは呆然とチョソンを眺めるしかなかった。
 

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