㊟成均館スキャンダルのパラレルです。
本筋とは全く関係ありません。
しばらく黙ったソンジュンは、
それは勧誘かな、と聞き返した。
ヨンハはクグループという財閥の御曹司だ。
就職先と言っても、自分の父親が会長である
グループ会社の一つに入ったということ。
二年の兵役を終えて、まさに働きはじめたばかり。
広告会社にいる、とソンジュンは聞いている。
「僕もね、兵役から戻ったばかりで、
別に人事部でもない先輩が、
どうして新入社員を勧誘しに来るのか
一応聞いてみたんだよ。」
ヨンハがユンシクに説明したこと。
もともと、ヨンハの所属する広告会社は、
毎年の募集人数は少なく、数人しか入社しない。
だから、一般に大々的に募集はほとんど行わず、
大学などにこっそりと募集要項を送るだけ。
そして、もう一つの方法が、
直接ヘッドハンティングする、と言うのだ。
ヘッドハンティングって言ったって、と
ユンシクが困った顔をすると、
言葉のあやだよ、とヨンハは笑ったらしい。
広告会社の肝は、
企画力と映像などの技術、そして営業力だと
ヨンハは説明した。
『例えば、デザインなんかはやはり専門の人間でないと
できない。独創性や発想力は、俺が見たって
分かりやしないよ。だからそっちの方の人間は、
自分の出た専門学校や大学の芸術学部の後輩を
探してくるんだ。』
ふうん、と聞いているユンシクに、
ヨンハは微笑んだ。
『そして営業職の方だが。
これも、案外才能がいる。
俺は・・・得意だからわかるんだが、
テムル、お前もいけると思うんだよ。』
僕がですか?とぱちくりと目を瞬いたユンシクを見て、
ヨンハはますます微笑んだ。
『間違いないね。
それにさあ、テムル。
俺はお前みたいな人間が、グループ内で
働いていてほしいんだよ・・・。
いずれ、俺は・・・。』
と言葉を切ったヨンハは、
初任給や仕事の内容、待遇などを
説明したうえで、
入社試験日と面接日をユンシクに告げた。
『少しでも興味があったら
応募してほしい。
っていうかもちろん応募するよな?!
履歴書は持ってるか、今?
就職活動中だから予備は持ってるだろう?
出せ。俺が預かって提出しておく。
ほら!早く出せ!
・・・よし。
日にちと時間をメモしとけ!
スマホにスケジュールがあるだろ?
よしよし・・・それでいい。』
試験と面接の予定日は2週間後だった。
そうして強引に約束させられたユンシクは、
さっそうと帰って行くヨンハを見送って、
図書館に来たのだと言った。
「それで、ユンシクはどう思ってるんだ?」
と聞くソンジュンに、ユンシクは
考えながら答えた。
「ヨリム先輩が僕を入れたいと言ってくれるのは
純粋にうれしいんだよ。
それに、銀行でも証券会社だったとしても
仕事自体は営業なんだしね。
だけどね・・・。」
ソンジュンはユンシクの話の続きを
静かに待った。
ユンシクはじっと彫像のように静まったまま
しばらく考えにふけり、
そして口を開いた。
「ヨリム先輩が僕のどこを評価してくれて
会社を受けるように勧めてくれたのか
分からないけれど、
僕が先輩の期待以下だったら?
推薦してくれた先輩に恥をかかせるでしょ・・・。」
ユンシクの心配も分かるよ、と
ソンジュンは答えた。
そしてその上で言った。
「でも、ユンシクはどんなことでも
手を抜かずに一所懸命やるだろ?
その自信は・・・あるだろ?」
そうだね、とユンシクはソンジュンを見た。
少し落としていた肩が、元の位置に戻る。
ソンジュンはユンシクを励ますことが出来たのだ。
「受けるかどうかはとりあえず一晩考えるよ。
もし、受かったとしたら、
ヨリム先輩の顔を潰しちゃいけないから
必ず入社しないといけないだろうし。
どこで仕事するにしても・・・頑張るしかないよね!」
そうだよ、とソンジュンは微笑んだ。
明るいユンシクが戻る、それがとても安心する。
あのね~、初任給も結構いいんだよ!
福利厚生もちゃんとしてるしね。
ヨリム先輩は、そういう大事なことは
抜かりなく準備してるんだよ、さすがだよね!
ユンシクの明るい声を、
ソンジュンは微笑んで
相槌を打ちながら聞き続けていた。
https://novel.blogmura.com/novel_koreandramasecondary/ranking.html ←にほんブログ村 韓ドラ二次小説
