ある日の成均館~再びの王様~ | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

 
 寒さが足元から這い上がるようになってきた夜。
 
 王様がお忍びで夜歩きのついでに成均館に立ち寄った。
 いつも通りチョン博士の薬房に居座り、
 成均館の様子を聞いた後、
 キム・ユンシクを呼び出すように命じた。
 
 しばらくして、キム・ユンシクことユニは、
 王様に挨拶を挙げていた。もちろん緊張して。
 以前呼び出されてから二度目であるが、
 いつも自分だけが呼ばれることが怖くて身がすくむ。
 
 王様は、そんなユニの気持ちなど考えてもいないらしく、
 「おお、やはりいつ見ても美しい顔だ!」
 と、ユニを前にして大喜びしている。
 王様の正面に座ることを命じられて、いろいろと
 聞かれるのも前と同じだ。
 勉強の進み具合、弟ユンシクの学問の進み具合、
 体の調子、成均館での生活のこと、友人関係など、
 何を言っても王様は喜んで聞いてくれる。
 
 そう言えば、王様ってドヒャン兄上よりお若いんだ・・・
 
 そう思うと少し気が楽になったが、
 やはり緊張の取れないままに時間は過ぎた。
 
 「ところで、そなたに今度、頼みたいことが
  あるのだが。」
 
 と突然王様が言い出したので、ユニは王様の顔を見た。
 
 「そなたの筆跡は非常に美しい。
  次は上質の紙を持参するゆえ、余の詩文を
  そなたの手跡で仕上げてもらいたいのだ。」
 
 ユニは、どう返事してよいのかわからず、口を
 パクパクとさせておろおろしている。
 その様子を、楽しそうに見ていた王様は、
 ユニの返事を待たずに
 
 「では、頼んだぞ!」
 
 と話を決めてしまった。
 
 ユニが御前を下がって行ってから、王様は
 楽しそうにつぶやいた。
 
 「さて、三度目の呼び出しには、
  あ奴らも何ぞ勘付くに違いない。」
 
 そしてチョン博士の顔をニヤッと笑いながら見て、
 立ち上がった。
 
 「チョン・ヤギョン。あの娘は賢いのう。
  余も、後宮へ通うのなら、余の好きな学問の相手が
  できる女人の方が張り合いもあるというものだ。
  あの娘は、なかなか・・・」
 
 チョン博士は、顔色を変えている。
 王様は、含み笑いをしながら、
 早うせんと冗談ではなくなるぞよ、
 と言いながら、薬房を去って行った。
 
 ああ、困った。
 本気なのか、冗談なのかわからん。
 しかし、あの三人に伝えるわけにもいかんし、
 ましてやキム・ユニには間違っても・・・。
 
 頭を抱える博士のことなどつゆ知らず、
 ユニは仲間の待つ中二房へ急いで帰って行く。
 
 あの部屋にいれば安心。
 皆がいてくれる。
 今日の王様のお話も聞いてもらおう。
 
 扉を開ければ、ソンジュンが微笑み、ジェシンが
 寝転がりながら出迎えてくれる。なぜかヨンハも
 にこにこと座っている。
 
 あのね!と言いながら彼らの真ん中に座るとき、
 ユニの心には、安心と幸せが広がる。
 
 
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