㊟成均館スキャンダルの登場人物によるパラレル。
ご注意ください。
我ながら気持ち悪いとは思っているソンジュン。
キム・ユニという名であろう少女を初めて見かけた日から、ソンジュンは中央図書館に通い始めた。
もともと通う頻度は高い利用者だったろう。高校でクラブ活動をしているわけでもないソンジュン。スポーツで有名になろうとしている
同級生などは、高校生活最後の大会でいい成績を残そうと遅くまで練習しているようだが、ソンジュンは定時で下校する。
調べたい、探したい本があれば来ていたし、来たらついでに勉強もした。
週に二日は必ず立ち寄っている計算になるのだが、その日からソンジュンは毎日顔を出した。
この様な施設を利用するものには割合共通の癖がある。
好みの席があるのだ。
ソンジュンが個別スペースのある一定の場所をいつも狙うように。
だから、ソンジュンは図書館に着くと、彼女に初めて会った階の閲覧スペースのテーブル席に陣取り、受験勉強をした。
何もしないでウロウロするとただの不審者だし、勉強は必要な事だったから、何の違和感もないただの受験生だと思われるはずだ。
そうやってさりげなくその場にいて、彼女が来るのを待ったのだ。
次の日は来なかった。又その次の日も。
けれど、三日目には彼女はソンジュンよりも先にその席にいた。
前回と同じようにノートと参考書を広げ、勉強をしていた。
その日は以前よりも時間を気にしているようで、6時になるとさっさと席を立ってかえってしまった。
その日から彼女は連続して図書館にやってきた。
土曜日も、日曜日も。
つまり、彼女は火曜日と水曜日以外は図書館に来て勉強しているのだ。
そして、ソンジュンの予想したとおり、彼女は必ず同じ席に座った。
窓際のテーブル席の一画。
この階は、歴史書などが閲覧できる階で、比較的人が少ないため、閲覧席はがらがらだ。
だから、彼女も同じ席をキープすることができるのだろう。
勉強するために来ているから、そこそこ長時間居座るし、書架に用がないから、書架に近くなくていい。
出入り口に近ければ、人の出入りに気が散ることもある。
だから、この階の奥の窓際の席が彼女の指定席になっているのだろうとソンジュンは分析した。
だが、一週間では、このルーティンが本物かどうかは確定ではない。
そう考えたソンジュンは、更に一週間を観察に費やした。
我ながら気持ち悪いと、再び思ってはいる。
何に執着して彼女を観察してるのか、その理由にソンジュンは思い至っていなかった。
ただ、彼女がそこにいることを常に確かめていたいとは思っていた。
あの日、ソンジュンの視界にピッタリとはまった彼女。
その光景が頭から離れない。
まるで、その日、ソンジュンのために用意された絵画のように思えるほど、彼女の横顔から目が離せなかった。
そして彼女は、毎回ちゃんと同じ席に座り、毎回お下げ髪を垂らして、至極真面目に勉強をする。
同じ光景をみて、安心して落ち着くのに、胸の鼓動は早くなり、少し身体は熱を帯びる。
ソンジュンも勉強をしているので、その症状が出ると、シャープペンシルを握りしめている自分を発見して、驚く日もあった。
そして、彼女のルーティンが確実になったと分ったその日、
ソンジュンは自分が恋に落ちてるのだと、ようやく自覚をした。