クロッカス症候群[冒頭から読む]
窓辺にアルストロメリア
午前中、看板の取りつけ。初めて訪れる現場だった。それなのに以前にも来た記憶がある。
郊外の崖の下、それも一戸建ての医院だ。その屋根の上に、遠くからでも目立つように大型のトタン看板を四枚。コマダは体調をくずしてお休みなので、サカシタと二人きりの作業だった。すでに鉄骨は組まれていて、そこへ嵌め込むだけだった。
「なんの病院?」と、おれは尋ねた。
「脳神経科の病院らしいね」と、サカシタ。「ぼくも一度、診てもらおうかな。最近、おかしな夢ばかりみる」
コーヒーの店でもやれそうな瀟洒な外観で、新しく建てたばかりのようだ。
「まだやってないんだろ?」
「もちろんだよ。内装だって、これからだもの。うちの社長の話では、院長先生ってのが、やり手の名医で、世界に数えるほどしかない最新鋭のCTスキャンを導入するらしい」
看板の取りつけを終えてから、おれは、道具箱と脚立をトラックへ運ぶのをサカシタにまかせ、ひとりで玄関から建物の中へはいって行った。
一階。たしかに、なにもない。がらんとしている。受付のカウンターらしきものはあった。ただそれだけで、いたずらに壁が白く、しーんとして、内装工事をする人もいなかった。
それから階段をのぼって、二階へ。そして、その廊下の外れの右手のドアをあけてみた。すっと開いた。
その部屋も、やはり、がらんとしていた。診察用の机も椅子もない。しかし、窓辺に鉢植えがひとつ、その花は、あのアルストロメリアだった。
郊外の崖の下、それも一戸建ての医院だ。その屋根の上に、遠くからでも目立つように大型のトタン看板を四枚。コマダは体調をくずしてお休みなので、サカシタと二人きりの作業だった。すでに鉄骨は組まれていて、そこへ嵌め込むだけだった。
「なんの病院?」と、おれは尋ねた。
「脳神経科の病院らしいね」と、サカシタ。「ぼくも一度、診てもらおうかな。最近、おかしな夢ばかりみる」
コーヒーの店でもやれそうな瀟洒な外観で、新しく建てたばかりのようだ。
「まだやってないんだろ?」
「もちろんだよ。内装だって、これからだもの。うちの社長の話では、院長先生ってのが、やり手の名医で、世界に数えるほどしかない最新鋭のCTスキャンを導入するらしい」
看板の取りつけを終えてから、おれは、道具箱と脚立をトラックへ運ぶのをサカシタにまかせ、ひとりで玄関から建物の中へはいって行った。
一階。たしかに、なにもない。がらんとしている。受付のカウンターらしきものはあった。ただそれだけで、いたずらに壁が白く、しーんとして、内装工事をする人もいなかった。
それから階段をのぼって、二階へ。そして、その廊下の外れの右手のドアをあけてみた。すっと開いた。
その部屋も、やはり、がらんとしていた。診察用の机も椅子もない。しかし、窓辺に鉢植えがひとつ、その花は、あのアルストロメリアだった。
