昨日作品を観てから、いまだに興奮している。



正直、目や耳に入ってくる情報からして、さほど食指を動かされない作品だった。



このブログを読んでくださっている皆様の中にも、そんな方が多いかもしれない。




いや、作品そのものをご存じない方が最も多いに違いない。





つい先日、砂田麻美監督の「エンディングノート」を絶賛したばかりで、また珠玉の作品に出会えた。



こんな時、とても幸せを感じる。




物語は、妻と死別した木材伐採業に従事する役所広司さんと、自分に自信がないまま、ただ流されながらゾンビ映画の撮影をする若手監督、小栗旬さんのやりとりが軸になっている。



役所さん演じる主人公には、小栗さん演じる若手監督と同じ名の息子がひとりいる。



仕事を辞め、日々だらだらと家で過ごしている。



自らの弁当と、息子のための昼食を毎日作っている父。



息子は今日も起きてこない。雨が降っても洗濯物も取り込まない。



映画では、小栗さんと役所さんの絡みが中心だが、実はそのやりとりを通じて、役所さんは自らを変化させ、やがて息子との関係も新たな一歩を踏み出すことになる。



小栗さんもまた、役所さんとの出会いにより、内なる変化を遂げる。




それが大きなコンセプトではあるが、全く説教臭くなく、とてもいい「間」で、柔らかく描かれている。




監督である沖田修一さんの手腕であろう。




役者陣も主演のふたりはもちろん、脇を固める人々がみな一人残らず素晴らしい。



作品の中に出てくる「ゾンビ映画」の撮影現場がとてもいい。



妙にリアルである。



20代半ば、出来の悪かった自身のアシスタントディレクター時代をつい思い出してしまった。




山崎努さん。オイシイ、またまた美味しすぎる出演であった。




この作品を今年一番の邦画として、強く推挙したい。




ライバルとなるのは、西川美和監督(「ゆれる」、「ディアドクター」)の新作「夢売るふたり」だろうか。(主演・阿部サダヲ、松たか子~自分たちの店を火事で失ったことをきっかけに、結婚詐欺に手を染めてしまう夫婦の物語)秋の公開が待ち遠しい。