合宿を終えて痛む体も一晩過ぎれば治っている。体育会系なら流石にこうはいかないだろう。今日は先輩と僕の最後の日……かもしれなかった。
「卒業したら君には会わない」と彼女は言った。あんまり重く考えないようにしていた。2時半にカラオケルームで待ち合わせていたけれど、電車が到着したのがまず2時40分で、僕が着いたカラオケ屋は別の店だった。
直線距離を走った。たるんでいる。
他の人との用事をしている最中に抜け出してきたという先輩。それはいいのか。
言葉を交わすのはもう最後かも知れなかった。僕は本音を言えば、あの人に世話になったぶん、あの人の最後の学生生活に花を添えたいと思っていた。文字通り。
以前、普通なら読むのも躊躇われる2万字くらいの文字が送られてきた時、「タンポポ」を誰かから貰いたいという文章を見つけた。
タンポポが卒業式の日辺りに咲いているかは、何だか微妙であるが。僕は出来るならそれを彼女にあげたいと思った。すぐに枯れるだろうが、たぶん滅びの美学とかを持ってそうだから大丈夫だろう。
造花のタンポポはどこかにないだろうか?
僕はもう一度、あの人に会えるのだろうか?