江戸川乱歩の作品の中では、かなりの良作だと思います。

人形を自由自在に操る老人が現れました。
ある日の夕方、宮本ミドリちゃんと甲野ルミちゃんは不思議な老人に会いました。
この老人は腹話術を使って、人形を喋らせることができるのです。
『わしの家には様々な人形があるんだよ』と老人は言いました。
ルミちゃんは人形が好きなので、老人の家に行ってみたいと思いました。
もう日が沈む時間ですので、ミドリちゃんはルミちゃんを止めました。
しかし、ルミちゃんはミドリちゃんの制止を振り切って老人の家に行ってしまいます。
それほど人形が大好きなのです。
家に着くと、老人は人形を操って歩かせました。それにしても、何だか不気味な所です。
ルミちゃんは怖くなってきました。『来るんじゃなかった』と後悔するのでした。
老人の家の中には紅子さんという、美しい女の人がいました。
ところが、紅子さんは『もうすぐ自分は人形になってしまうのよ』と言います。
いつまでも美しいままでいたいので、人形になる薬を老人に打ってもらったのです。
そうすれば、決して老いることはないからです。
ルミちゃんも女の子なので、紅子さんの気持ちがわからないこともありません。
ルミちゃんが振り向くと、あの老人が立っていました。
老人はルミちゃんを抱き上げると、どこかへ連れて行ってしまいます。
どうやらルミちゃんにも人形になる薬を打つつもりらしいです。
ルミちゃんが行方不明になってから数日後、甲野さんの家に箱が送られてきました。
開けてみると、中にはルミちゃんが入っていたのです。
ルミちゃんは目を開けたままで、全く動きません。
それを見たおかあさんは泣き出してしまいます。おや? 何か変です。
ルミちゃんの体に傷は一つもありません。そっと触ってみると、異様な固さです。
ああ、わかりました。これは本物のルミちゃんではなく、人形だったのです。
では、ルミちゃんはどうなったのでしょう。この人形はルミちゃんの服を着ています。
もしかしたら、ルミちゃんは裸にされて、どこかへ閉じ込められているのかもしれません。
そのとき、電話が掛かってきました。あの怪しい老人からです。
『甲野光雄さん、ルミちゃんは預かっている。返してほしければ、一千万円を払ってもらおう。
もし断ったり、警察を呼んだりすれば、ルミを本当の人形にしてしまうぞ』
ああ、困ったことになりました。警察に届け出たら、ルミちゃんの身が危険です。
考えた挙げ句、甲野さんは明智探偵事務所に電話を掛けました。
明智探偵は不在でしたので、代わりに助手の小林君が来てくれました。
小林君は人形を作る老人の家を突き止めました。老人の名前は赤堀鉄州というらしいです。
玄関に鍵は掛かっていなかったので、小林君は簡単に赤堀の家に忍び込むことができました。
部屋の中に隠れて辛抱しながら待っていると、赤堀老人が帰ってきました。
老人はウイスキーを飲むと、風呂にも入らず、居眠りを始めます。
それから数分後、恐ろしいことが起こりました。
突然、赤堀老人の家が炎に包まれたのです。きっと放火魔の仕業です。
ああっ、いつの間にか赤堀老人は縄で縛られています。
いくら悪人でも、死なせるわけにはいきません。
小林君は赤堀老人を引っ張って、急いで脱出するのでした。
翌日、赤堀老人は取り調べを受けました。
その結果、ルミちゃんを誘拐したのは彼ではないことがわかったのです。
赤堀さんは犯人の身代わりとして、殺されそうになったのです。
そうすれば、犯人は自殺したことになり、永久に捕まらなくなりますからね、
結局、甲野さんは犯人に一千万円を支払ったので、ルミちゃんは無事に戻ってきました。
もちろん、これで事件が解決したわけではないのです。
少年探偵団の団員である神山進一君の家で不気味なことが起こりました。
進一君の妹のサナエちゃんが買ってもらった人形が歩き回っているのです!
それは本物の人形ではなく、少女が化けていたのでした。
いったい何が目的だったのでしょう。ああ、わかりました。
この少女は神山さんが大事にしている〈炎の宝冠〉という宝物を狙っていたのです。
彼女も甲野ルミちゃんを誘拐した老人の仲間に違いありません。
〈魔人ゴング〉の事件で初登場したマユミさんは犯人の隠れ家を突き止めます。
そこには何体もの鉄のロボットが…
マユミさんは捕まり、地下室へ落とされてしまいます。
地下室は広大なジャングルになっていました。おばけの木がマユミさんを襲います!
人形が動く… 人が人形にされる… 何とも怖い話です。
小学生の女の子なら、ルミちゃんたちに感情移入できるのではないでしょうか。
今の少年や少女に読んでほしい傑作です。












