じーやのブログ

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「ヲガワササノ」と「小川笹乃」のことをつらつらと

このブログでは、主に、ヲガワササノさん(ササノん)の過去のイベントやラジオ、ファッションショーなどのレポートを書いていきます。

※"主に"なので、違う人のイベントレポートや撮影会で撮った写真なども公開します。

ヲガワササノのファンサイトだギョ~
http://i-cannot-live-wizx-gyoza.amebaownd.com/
最新情報はこちらに書いていきます。
併せて見ていただけると幸いです。
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2018年1月31日、小川さんが芸能界引退を発表しました。



2014年の夏、ミスiD2015のセミファイナリストとしてFRIDAY誌面で発表され、TIFの舞台でお披露目という鮮烈なデビューをして以降、今はなきプロジェクト・アマテラスの掲示板やTwitterで着実にファンを増やし、見事、「アマテラス特別賞」を受賞しました。

レギュラーにまで登り詰めた加藤一華さんのラジオでは先輩に対しても臆せずトークを展開させたり、以前から知り合いだったハヤカワ五味さんのブランドのモデルとしてファッションショーに参加したり、ミスiDの各種イベントで笑顔を振りまいていたりしました。


2015年には、小川さん自身初舞台となる『君が決めてよ明日のことは』に出演し、丸々1ヶ月間、全力で駆け抜けました。

また自身の趣味を活かしてネット番組に出演したり、お店とコラボした単独イベントや生誕祭を開催したりと、精力的に活動してきました。


しかし、今までの活動の中で、どこか引っ掛かるところがあったようです。無理をしていたところがあったようです。

8月末に突然の『脱・アイドル宣言』をして以降、ファンと直接交流する場は減っていきました。


あまりに突然のことで離れていく人もいたことでしょう。


しかし、小川さんが、自分自身で決めた道。今まで培ったものの多くを置いてきても尚やりたいことがあったからこその決意だったと思います。


2015年の8月以降は、多くの映像作品に出演し、企業のWebCM、アーティストのMV、超有名アイドルグループのメンバーの個人PV、そして自身が制作に参加した楽曲のMVなど、様々な姿を画面越しに観ることができました。


2016年は事務所に所属し、表記を本名である漢字の「小川笹乃」に変えたことが大きかったです。

このことで、今までの「ヲガワササノ」との決別がより色濃くなったように感じました。


2017年は、舞台イヤーと言わんばかりに、3本の舞台に出演しました。

怒りと切なさの演技が際立っていた『聖女』、恐怖の表現に磨きがかかった『冥府の箱』、そして2年前に初舞台を踏んだ作品のリバイバル公演にゲストとして参加した『君が決めてよ明日のことは』。

舞台上では完全に役になりきりつつ、舞台を降りると瞬時に本来の小川さんに戻るところは、これぞまさに女優と言わしめるようでした。


そして、2018年。小川さんの大学卒業を機に、芸能界を引退することが発表されました。

事前のツイートを見て、ちょっとだけ覚悟をしていたこともあり、ブログを見てすぐにはそこまでショックを受けませんでした。何より、そのブログで、引退を決心するまでの経緯やこれからの夢が丁寧に書かれていたため、心の底から納得し、これからの未来を陰ながら応援しようと思いました。


アイドル:ヲガワササノも、女優:小川笹乃も、小川さん自身の人生にとって少なからず良い影響を与えているようなので、そのどこかに自分の応援があったら良いなぁなんて、ちょっぴり思っています。

3月で引退となりますが、まだ公開されていない作品があるとのことなので、それが公開された時には、影響は微々たるものではあると思いますが、またこれまでのように宣伝していこうと思います。
そして、3月21日のイベントでは、このブログよりも馬鹿みたいに愛に満ちた長くて濃いお手紙を渡したいと思います。

あーぁ、今まで51通のお手紙を渡してきたけど、次に渡すお手紙が最後だとおもうと寂しいな。



涙で画面が良く見えないから誤字があるかもー



じーや

'17.01.20(Fri)~22(Sun)
少女都市旗揚げ公演『聖女』東京公演


の続きです。


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(※以下、上演台本に従って表記しています)

第三幕


9 池袋・8月
随分長いこと営業していない様子のクラブ・マリアのホールでは、「祝・新聖女10万部」と書かれた襷を掛けた着物姿の「みちよ」と、メガネにスーツ姿の「なのか」、そして部屋着姿の「ユリ」がいました。「芥川賞間違いなし」と興奮する「みちよ」、「フィクションとノンフィクションの境を超えた、新文学!」とジェスチャーをつけてハイテンションの「なのか」の二人を見る「ユリ」の反応はとても薄いものでした。店を開けないままの状態を心配する「ユリ」ですが、「みちよ」は「「ユリ」ちゃんのマネージメントで忙しいから、営業なんてとてもとても」と答えます。「「ユリ」ちゃんが反対した「ミレイ」こと「未央子」も「リヒト」も、ろくでもない」と「みちよ」が言っているところに、「なのか」から雑誌の打ち合わせ依頼が舞い込んだとの報せが入ります。
→「未央子」著の『聖女』出版から1ヶ月で世に出た『新・聖女』ですが、実際の被害者の1人が執筆したことが影響してか売れに売れているようです。「みちよ」と「なのか」は、クラブ・マリアを閉めたままにし「ユリ」のマネジメントに専念しており、世渡り上手とはこういうことなのかと思いました。クラブ・マリアのこと、「みちよ」に借りていた部屋のことを心配する「ユリ」と、とにかく本の売れ行きと営業のことで頭がいっぱいの「みちよ」、「なのか」の対比が、セリフだけではなく動きにも表れていて、とても面白かったです。

「…ということでね、第二弾!」と言う「みちよ」に、「ユリ」は目を丸くします。「その後どのように育ったかを、みんな待ってるの」と続ける「みちよ」を見て、呆然とする「ユリ」ですが、「そういう契約結んじゃった〜イエイ」と「みちよ」と「なのか」はハイタッチします。それを聞いて落胆する「ユリ」に、畳み掛けるように「三省堂で本をぐちゃぐちゃにして、あやうく前科一犯になるところを助けてあげたのよ」と言われ、「ユリ」には返す言葉がありませんでした。
→感情の二極化がうまく表されていました。「ユリ」を利用してひと儲けしようとする「みちよ」と「なのか」、逃げ道を塞がれて立ち尽くすしかない「ユリ」。しかし、「他人の人生だから」と楽観的な態度を示す「みちよ」も、「ユリ」の不幸な人生そのものとそれを文字に起こす才能を認めているからこそ出てくる言葉なのかと思うと、完全に悪者には見えないという、複雑な構造になっていると感じました。

「色々あったから、うまく書けるか」と渋る「ユリ」に、「みちよ」は風俗店の名刺を見せつけ、「今さら「なにが」書けないの?」と、とどめの一撃を喰らわせます。そのやりとりを「なのか」は真顔で見守ります。「…書けます」と思ってもいないことを言ってしまった「ユリ」を見て、「みちよ」と「なのか」は顔を見合わせた後に笑みを浮かべました。そんな折、「なのか」の持つスマホに電話が掛かってきます。「イングリッシュ?オーケー。ア〜ハ?ア〜ハ?オ〜!リアリ〜!ファンタスティ〜ック!デハ、ノチホド〜」と通じているのか分からない電話を切ると、興奮しながら『新・聖女』のハリウッドでの映画化決定と伝えます。「30分後にハネ〜ダ(羽田)で打ち合わせ」と「みちよ」に伝えると、二人は「ユリ」を置いて、タクシーに乗って出掛けました。
→「ユリ」は完全に逃げ道を失いました。もう続編を書くしかない、つまりそれは、自分の過去を晒すことに他ならないのです。「みちよ」に弱みを握られ、また、借りを作ってしまったことで、このような状況になってしまったことを強く後悔しているように思いました。
ここでの「なのか」を毎回面白おかしく観ていました。風俗嬢の過去を持つ「ユリ」を軽蔑する目、「でしょうね」と心の声が丸聞こえの笑み、もはや日本語と思うようなカタコトの英会話、裾に捌けながらの底抜けに明るい「ヘイ、タクシーーーーー!!!!!」。色んな意味で「ユリ」を置いてきぼりにさせていました。「みちよ」が「ユリ」に風俗店の名刺を見せる場面では、回によっては「なのか」は笑いを堪えながら見ていて、そうすると観客に伝わってくる「なのか」の心情も違って見えました。

二人が去った後、何とかペンを持ち原稿用紙に向かうも、全く筆が進まない「ユリ」。すると、突然、「夏美」が笑いと共に姿を現します。「書けへんよね、だって嘘ばっかりやもん!」という「夏美」の言葉に動けない「ユリ」に対し、続けて「死ぬ間際にあんな哲学的な長い文章話せないもんね!」と言い放ちます。「ユリ」は必死に「夏美」を消そうとするが一向に消えません。「全部全部嘘やもんね。「瑛子」はもっとあっさりあんたの首を絞めたし、頭の中はあの拓也のことでいっぱい」「あんたはただ「瑛子」に執着してた。いつまでもひとりぼっちで、そばにいてほしかったんや」と続けて言う「夏美」に、初めは強く拒絶していた「ユリ」の反応も段々と弱まっていきました。
→突然の「夏美」の登場に驚きましたが、これは霊というよりは幻想だと思う方が自然だと思いました。「ユリ」がずっと抱いてきた過去の出来事に対する後悔や恐怖と、ついさっき植え付けられた現在の自分に対する焦りと怒りが相まって「ユリ」の目に映ったのではないかと考えました。それにしても「夏美」の笑い声は末恐ろしく、毎回鳥肌が立ちました。

「どうしてこうなっちゃったんだろう」と「瑛子」が言っていたことを「夏美」が言うと、「ユリ」は話し始めました。自分の想いが恋に似た感情だということ、そして何でも聞いてあげてもっと笑った顔を見たかったのだということを。すると「夏美」は、そんな想いから出た行動が「瑛子」を壊した、そして結局「ユリ」は自分のことしか考えてないのだと言います。「夏美」はその後も「ユリ」に対して過去の出来事や行動を質問します。「ユリ」は反論するも、結局は自分のためなんでしょ?と一蹴されてしまいます。
→好きな人を考え、自己犠牲も厭わないという真っ直ぐな感情と思っていたものが、「夏美」によって実は自己満足だったのではないかと疑問に思い始めたこのパート。一方の好きが暴走して相手に迷惑をかけて、それがお互いにとって最悪の結果になってしまい、離れ離れになってしまった事が判明しました。先述の通り、「夏美」は「ユリ」の心の中でずっと眠っていた「ユリ」の後悔や恐怖が表現されたものであり、「夏美」の言うことは全て、「ユリ」自身が知っている/思っていることです。つまり、「夏美」の言うことを否定することは、過去を否定すること、即ち「ユリ」と「瑛子」の思い出を否定することになるのではないかと考えました。

「夏美」と話す間に「瑛子」への思いが強くなり、「会いたい!好き、好き、大好き!」と叫ぶ「ユリ」。そんな「ユリ」に「夏美」は「書きなよ、書かなきゃ会えないよ…!」と言い残し、去っていきました。その言葉に感化された「ユリ」は、テーブルに戻り、ペンを取り書き始めます。そこへ「みちよ」がケータイを取りに戻って来ました。着物の帯に挟んであったことに気づくと同時に、「ユリ」がテーブルに向かい新作を書いていることにも気づきます。そんな姿を見ていると、「ユリ」が「「瑛子」ちゃん、もし書けたら、「瑛子」ちゃんに会わせてくれますか?」と虚ろな目で訴えます。
→新作を書くという一大決心をした「ユリ」ですが、もはやそれは「瑛子」に会うための手段であり、本の内容や評価に関してはどうでも良くなっているのではないかと思いました。一方で過去に囚われていた「ユリ」が「瑛子」に会いたいという一心で未来に向かって行動し始めたという意味では、感情の針がプラスに傾いたパートとも感じることができました。


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台本p.64〜72まで書いてみました。
「未央子」によって自分たちの思い出が嘘ばかりの形となって世に出された『聖女』を目にし、真実を伝えようとして執筆した『新・聖女』。しかし、それも自分本位で自己満足で書き上げたものだと、「夏美」の幻というもう一人の自分によって見透かされ、更には新作まで書くことを命じられ、どうにもこうにも動けずにいる「ユリ」の唯一の救いは「瑛子」に会うことなんだと改めて思わされました。ただ、「夏美」の最後の台詞は、「書きなよ、書かなきゃ会えないよ…!」と「…」で含みを持たせています。「ユリ」を完全に突き放すわけではなく、少しの希望はあること、そして今後の「ユリ」への期待を匂わせるような表現になっているように感じました。


《余談》
メガネでスーツを着た「なのか」が抜群にキレイで、どストライクでした。
'17.01.20(Fri)~22(Sun)
少女都市旗揚げ公演『聖女』東京公演


の続きです。


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(※以下、上演台本に従って表記しています)

第二幕


8 『新聖女』 (松島・2005)
「瑛子」と「夏美」が教室で談笑していました。その手には、「ユリ」を売って手に入れた20枚の1万円札が入った封筒があります。万引きした後にプラプラしていた「ユリ」は警察に補導され、それが引き金となって転校することになったようです。そんな話をしている時、呼び出しを受けていた「ユリ」が戻ってきます。「ユリ」は明るい顔で、「今日が来るのが最後で…」と「瑛子」に話したのを遮るように、「夏美」が「へぇ〜!」と言います。その声で思い出したように、「瑛子」は「お別れ会をかねて」とマックのハンバーガーを「夏美」には手渡し、「ユリ」には足元に向けて投げ渡しました。「瑛子」と「夏美」は自分たちのそれには目もくれず、もちろん食べることもなく、「ユリ」がハンバーガーを食べる様子を見つめていました。「あ、気づいた?うめぇべ?セミ入りハンバーガー」と「瑛子」は笑いを堪えながら言います。しかし、この言葉を受け驚きの表情を浮かべた「ユリ」を見ると、「夏美」と一緒になって大笑いしました。「ユリ」はその間、必死になってセミ入りハンバーガーを飲み込み、「うめなぁ、瑛子ちゃん」と微笑みます。
→「瑛子」と「夏美」は二人で「ユリ」を売って金を手に入れ、自分たちはその事について咎められることはない、という悪行をやってのけています。しかし、呼び出しから「ユリ」が戻ってきた際、「瑛子」が少しバツが悪そうに封筒をスカートのポケットにしまった様子を見て、多少の罪悪感を抱えているように感じました。一方で「夏美」はそうではなく、まっすぐな気持ちで「ユリ」を虐め、奴隷のようにこき使っています。台本の文字だけ見ると二人ともが同じ気持ちで「ユリ」に接しているように思えますが、実際に舞台上で演じられる「瑛子」と「夏美」を見ると、心の奥底では気持ちに差異があるのではないかと感じられました。

「夏美」は「ユリ」の真新しい靴に気づきます。「ええやない、ちょうだい」と言う「夏美」に、「ユリ」は反論するものの、続けて「瑛子」が「欲しいって言ってんだから早く脱ぎんさい!」と言うと、渋々脱ぎます。その直後、「夏美」の命令通りにトイレにスリッパを借りに教室を出ます。「ユリ」が去った後、「夏美」は「うちこうなってから何回もあの子(=「ユリ」)に同情しようと思うんやけど、結局できへんねん。そうなって当たり前っていうか。」とこぼします。すると「瑛子」は「そもそも人としての尊厳ば無いんだべ」とバッサリ言います。
→「夏美」は「ユリ」を虐めるにあたって、何度も考えていたものの、結局は虐めるに値する人という判断を下した理由をここで話します。しかし、この時の「瑛子」はやっぱり曇った表情に見えました。

「瑛子」は「夏美」に「あれは?」と教室から見える建物や風景の名前当てクイズを出します。関西から引っ越してきたとはいえ、あまりに簡単な問題に「夏美」はバカにしないでというような表情で答えます。突然、「瑛子」は「なんにもない。なんにもない町だっちゃなあ」と呟きます。それを聞き、「夏美」は目を丸くします。「瑛子」は「東京さ行ったら、もうここになんか住まないですむ。二度と帰らねぇ」と続けます。その後、お互いの家族の話をしているところに、「ユリ」が戻ってきます。
→「瑛子」が何故長年住んだ地を「何もない町」と称したのか、ずっと考えていました。おそらく、今まで良い思い出がなく、そしてこれからも良い思い出ができないと感じているから出た言葉なのではないかと思いました。「楽しい」「嬉しい」と思っても、どこか引っかかることがあって、心の底からそうは思えなかったのかも知れません。その原因として、弟である「リヒト」と幼なじみで虐めの対象の「ユリ」が考えられます。可愛がっていた弟と離ればなれになり、心にぽっかり穴が空いたこと。虐めることでしか退屈な日々を埋めることができないこと。埋まらない穴を別のことで埋めようとしても結局は無駄だと悟ってしまったのかも知れません。

トイレのサンダルを履いて戻って来た「ユリ」に、スカートを捲り上げるよう「瑛子」は命令し、その姿を「夏美」がチェキで撮影します。「ユリ」を売らせたことを名残惜しそうに話す「瑛子」ですが、「ユリ」は俯いたままでした。「もっと笑いなよ。これがこれからのうちらの生活の糧さなるんだから」という言葉を受けても、まだその表情は変わりません。「本当に(東京に)行ぐの?」という「ユリ」の問いかけに、「瑛子」が「うん」と答えると、やっと「ユリ」の顔に笑みが浮かび、明るい声で「気をつけてね」と言います。その言葉と表情に激怒した「瑛子」でしたが、「夏美」の一言で我に戻り、食べかけのハンバーガーを床に投げ「ほれ、やっがら」と食べるよう言います。「ユリ」は床に散らばったハンバーガーを四つん這いになり貪ります。「どんな気持ち?」と「瑛子」が尋ねると、「ユリ」は昔、「瑛子」と二人で座って一緒にご飯を食べた思い出を語り始めます。この状況でまだそんなことを言う「ユリ」に腸煮えくり返った「瑛子」は、「ユリ」を蹴飛ばします。
→「ユリ」がどこまで「瑛子」のことを思っているのかが分かります。自分が補導されたことで、「瑛子」の東京行きが頓挫していないか不安だった「ユリ」でしたが、その計画が決行されると知り、喜んでいます。決してバカにしたり、恩を着せたりしたいからではなく、単純に「瑛子」の幸せを思っての言動だったのだと思います。その気持ちを幾許か理解した分を差し引いても、やはり怒りの方が勝ったからこその蹴りだったのだと思います。

三人は補導された時の状況、転校が決まった時のことを話します。すると突然「ユリ」が「あたし嘘ば言ってねーよ。「瑛子」ちゃんに嘘ば言ったらだめって言われてたもんね」と言います。堪忍袋の緒が切れた「瑛子」は、「どうせ今日が最後だし、はっきり言って」と、今までの虐めのことを「ユリ」がどう思っていたのか聞き出そうと問いただします。しかし、「ユリ」から返ってきたのは、「あたし「瑛子」ちゃんが好き」という拍子抜けする答えでした。「この…嘘つき!」、そう言って「瑛子」は「ユリ」に馬乗りになります。「夏美」の静止を「黙っといて、うちら二人の問題だから」と振り払います。「うちら二人」という言葉が癪に障った「夏美」はヘッドホンをつけ、教室の隅に移動し、大音量で聞きながら大声で歌い始めました。
→「ユリ」の発言を受け、「ユリ」が「瑛子」のことしか見ていなかったことは理解していたものの、その場にいた自分のことを「ユリ」だけではなく「瑛子」までも疎外したことに腹を立て、「夏美」は不貞腐れます。「虐め」という決して褒められたことではないですが、共同作業で行ってきた友情の証を蔑ろにされた「夏美」の心はズタボロだったと思います。それでも尚、自分の存在感を出すために、隅に行く際には大きな足音を立て、歌は大声で歌ったのだと思うと、とても悲しい場面に感じられました。

馬乗りにされた状態で「ユリ」は「「瑛子」ちゃんの言うことば正しいと思う、んだがらそれに従っただけ」と言ってのけます。数々の虐めを「喜んでやったこと」と言う「ユリ」に「瑛子」は「き〇がい!」と叫びます。「ユリ」に「あたしの神様」と言われた「瑛子」は、「うちの冗談を冗談じゃなくすて、何もかもうちのせいにして、うちの大切なにかば奪っていく!」と言い終わると、「ユリ」の首に手をかけます。すると、「ユリ」の顔がスッと変わり、「あたしば殺すの?」と「瑛子」に問いかけます。「自分が生きていたら「瑛子」はひどいことをする。そういう関係になってしまった。それに苦しんでいる「瑛子」はかわいそう。自分が生きているあいだ、「瑛子」は幸せになれない」、そう言う「ユリ」に対し、「瑛子」は一度は同意の表情をするが、すぐに「ちがう、ちがうよ」と否定します。
→「ユリ」は盲目的に「瑛子」に心酔するのではなく、全てを理解した上で敢えて虐められ続けていたと告白するシーンにドキッとしました。「ユリ」と「瑛子」は共依存関係だったのだと思います。以前から「ユリ」は気づいていたものの、「瑛子」はこの時初めて知ったのではないでしょうか。お互いになくてはならない存在、例えそれが傍から見たら虐めだとしても、生きている意味を与える大切な存在であると知ってしまった。それを知ってしまったことで、「瑛子」は自分の人生が「ユリ」に支配されていると思ってしまったのかも知れません。「ユリ」が中心にいる人生を認めたくなかったのかも知れません。だからこそ、一度は同意したものの、すぐさま撤回したのだと思いました。

「瑛子」は首にかけていた手を離しますが、「ユリ」がその腕を掴み、再び自分の喉元に持っていきます。「瑛子」は抵抗しますが、「ユリ」の力は強く、どんどんと「ユリ」の首を絞めていきます。「あたしを殺さないと幸せになれない」と言う「ユリ」に、「瑛子」は「ちがう…!」と反論します。続けて「ユリ」は「人間にはひとりひとり役割があり、その通りに生きようとしてる。みんな「良い人」。あたしも」と力を込めて言います。それを聞いて「瑛子」は「それを初めて言った…!あんたの本音を聞きたかった」と言います。そう言う「瑛子」に対し、「ユリ」は「自分の「した」こと以外に本音はない。どんなに無意味に見えても。どんなに阿呆に見えても。」と言います。「瑛子」は「あたしはその阿呆さから逃げたかった…」と言い
崩れます。その体を「ユリ」は受け止め、強く抱きしめます。
→「ユリ」の本音と「瑛子」の本音が入り混じった場面でした。暴力的でもあるものの、そこにはある種の愛が存在していて、人は完全には一人にはなれない、誰かがいるから自分は自分として存在できるということのメッセージ性が強く感じられました。だからこそ、「瑛子」は「ユリ」へと崩れ、「ユリ」は「瑛子」を強く抱きしめたのだと思います。「ユリ」の本音を聞くことで、「瑛子」自身も本音を言い、改めて自分が「ユリ」に依存していたことに気付かされたのだと思います。

「瑛子」を強く抱きしめながら、「ユリ」は「「瑛子」ちゃんのためにできるかぎりのことをした。でもそれは間違ってたのかもしれない。自分が男だったら、抱きしめるだけで解決してたと思う。」と言います。それを聞いた「瑛子」は「何なの?あんたは一体何なの?」と言いながら再び「ユリ」の喉に手をかけると、強く首を絞めました。
→美しくも悲しい愛の最後だと感じました。薄情だと思いながらも、「ユリ」の言うように、もし「ユリ」が男だったとしても、きっとこの二人は良い関係にはならなかったのだと思います。「ユリ」が女だったからこそ虐めの対象となり、依存の対象となったのだと思います。「ユリ」の、全身に力が入り、顔を真っ赤にして、はたりと事切れる演技は心を掴まれました。

教室の片隅で歌を聴いていた「夏美」が振り返ると、「ユリ」がぐったりと倒れ、動かなくなっていました。「夏美」は「瑛子」の元に駆け寄り、突き飛ばします。「瑛子」は上の空で「もう出かけなきゃ」と言いますが、「夏美」は「あんたは出かける気なんてない」と突っぱねます。「夏美」は「瑛子」が「ユリ」を虐めていた理由を「別の友達ができるのが嫌だった。いつまでもひとりぼっちで、じぶんのそばにいてほしかったから」と言います。「ちがう!」と反論する「瑛子」でしたが、「夏美」は頑なに認めませんでした。口論の末、二人はもみくちゃになります。「瑛子」が力を込めて「夏美」を突き飛ばしました。その先にあったイスに頭を打って、不幸にも「夏美」は動かなくなりました。名前を呼んでも反応のない「夏美」を前に、「瑛子」はただ泣き続けるしかありませんでした。
→「夏美」の聴いていた『青春アミーゴ』の歌詞がここで活きてきました。「俺達はいつでも 2人で1つだった」、つまり「瑛子」と「ユリ」は共依存関係で、そこに自分の入る余地はない、そのことを「夏美」は理解してしまったのです。普段から聴いていたこの歌詞の「2人」が「瑛子」と「夏美」ではないと分かってしまった。それをどうしても納得出来なかった「夏美」は、「ユリ」への嫉妬と恨みを「瑛子」に向けてしまったのだと思いました。かけがえのない友達だと思っていた「瑛子」が、自分のことを見ていなかった、ただ利用していただけだと思ってしまったからこその「夏美」の行動だったと思うと、とても悲しくなりました。

「ユリ」が立ち上がり、客席に向かって、「「瑛子」はどこか遠いところに連れて行かれた。今でも「瑛子」に会えない。」と語りだします。続けて、泣き続ける「瑛子」に向かって、「泣かなくていいんだよ…この世の辛いこと全部、あたしが背負ってあげるから…泣かないで…」と言います。再び「ユリ」は客席を向き、「静か…本当に静か…この静けさがいつまでも続くなら、ここを出て行く必要はないんだけど…」と言います。
→劇はまだ続きますが、あっけない終わりでした。最後の最後になって、「ユリ」の気持ちが「瑛子」に届かないというすれ違いを生むシーンで、良い意味で多くを語らないことの良さ、ハッピーエンドにしないことの面白さを感じました。



(第二幕・完)
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台本p.49〜64(第二幕の終わり)まで、書いてみました。
最後の「ユリ」の独白の場面で、「見物だったでしょ?もうなにも起こりません。この世の中でなにがつらいって、「見る」こと以上につらいことはないと思います」と言います。このセリフがどうも分かりませんでした。劇自体はまだ続くのに何故このようなことを言ったのか。モヤモヤしながら、感想を書くために台本を読み進めるうちに、その理由だと思う箇所を見つけました。それはこの第二幕のタイトル『新聖女』です。第三幕で改めて出てくるのですが、この『新聖女』は「ユリ」が書いた本のタイトルです。つまり、この第二幕は全て、「ユリ」の書いた本の内容なのではないか。舞台は2005年の松島、登場人物は「ユリ」「瑛子」「夏美」の3人のみ。本はここで終わった、だからこそ、「もうなにも起こりません」ということを言ったのではないかと思いました。「「見る」こと以上につらいことはないと思います」というのも、「ユリ」自身が感じたことを「見た=読んだ」読者に訴えるかたちで書いた、「あとがき」のようなものではないかと思いました。そう考えると、この一連のセリフがすっと頭に入ってきました。


《余談》
ここにきて、改めて上演台本を購入して良かったと思いました。台本を読むからこそ得られた情報があり、舞台に対してより深く考えることが出来たと思います。実際に舞台を観なければ分からないこと・感じられないことがあるように、活字でなければ分からないこと・感じられないこともあると痛感しました。
'17.01.20(Fri)~22(Sun)
少女都市旗揚げ公演『聖女』東京公演


の続きです。


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(※以下、上演台本に従って表記しています)

第一幕


5 松島・2005
「瑛子」は「夏美」と今夜のことについて話します。「ユリ」から巻き上げた金で、夜行バスで東京に行くつもりなのです。「なんで夜行バスなん?」と「夏美」が問いかけると、「瑛子」は「時間がかかればかかるほど、大切に思えんだよ。しあわせってこういう慣れねーことすっから手に入るんだべな」と答えます。続けて、「夏美」が「慣れないことをするのがしあわせなん?」と訊くと、「違う。慣れねーことに慣れていくことが幸せなのっしゃ」と「瑛子」は言います。
→なるほどなぁと思いつつも、人生経験があまりない年頃だとそう思うのか、と感じました。身近にある「幸せ」には気づかずに日常を過ごし、自分の「幸せ」は心理的にも物理的にも遠くに存在すると信じてしまう。おそらく、この二人も東京に出たら出たで、この地:松島を恋しくなるのではないかと思いました。しかし、この時の二人は松島を離れ、東京に向かうことで、明るい未来、「幸せ」が待っていると信じてやまないように思えました。


6 池袋・7月
閉店後のクラブマリアでは、「ユリ」が「なのか」に給料を渡し、少し離れたところでは「みちよ」が電話をかけていました。電話の相手は「ミレイ」、と言っても、留守電でした。「ミレイ」は1週間連続でドタキャンしていました。「辞めたんじゃないですか?」と言う「なのか」は、続けて「「じゅんな」さんが辞めた時だって結構急だったじゃないですか」と言います。「みちよ」は「キャバにでも行ったのよ。客だけ盗っていって」と苛立ちを露わにします。給料を受け取り、言いたいことを言った「なのか」は一人帰っていきます。それに続いて「みちよ」も「ユリ」に「戸締まりとあの子(「リヒト」)、よろしくね」と言い残し、アフターに行ってしまいました。
→時の流れというのは残酷で、またこういう世界の日常というのも残酷なのだと思いました。「ミレイ」が店を辞めるというのは何となく予想はついていましたが、まさか「じゅんな」までいつの間にか辞めていたのは思いませんでした。人物紹介によれば、「じゅんな」はピンのお笑い芸人をやっているとのことでしたが、劇中ではそのようなセリフも仕草も一切なく、また、仲の良かった「なのか」も「じゅんな」のクラブマリア以外での顔を知ることは出来なかったので、どのようなことがきっかけで辞めたのか、分からなかったと思います。そのことが原因でか、「なのか」はクラブマリアの面々とは更にドライな関係を築いているように思えてなりませんでした。

「ユリ」は酔い潰れている「リヒト」の元に駆け寄ります。心配する「ユリ」を他所に、「リヒト」は「「ミレイ」ちゃん、来た?」「LINE、ブロックされちゃって」と、「ミレイ」のことばかり話します。更に「余計なこと言ったんだろ」「妬いてたじゃん」と「ユリ」に追い打ちをかけます。それを受け、「ユリ」は「妬いてはいたけど…あたし、信じてるもん」と言います。「リヒト」が「何を…?」と尋ねると、「ユリ」は「「リヒト」と、「リヒト」の物語を描きたいって気持ち。あたしは「リヒト」のすべてを信じてるの」と語気を強めて言います。その言葉を聞き、「リヒト」は表情を変え、「お前のために描いてるわけじゃない」と言い、通用口から出ていきました。
→またもや「ユリ」は地雷を踏んでしまいました。「リヒト」が何故「ミレイ」を求めていたのか、それは「ミレイ」が一人の人間として「リヒト」を見て、認めてくれていたからです。他人には言いにくい背景を持ちつつ、生きていかなければならないという辛い人生を共に歩んでいるからこそ、互いに分かり合えた「リヒト」と「ミレイ」。その二人以上の関係に、(この時の)「ユリ」と「リヒト」はなり得ないと思わせるシーンでした。

「ユリ」が振り向くと、そこには「ミレイ」が立っていました。色々立て込んで、連絡もできずに欠勤してしまったことを詫びつつも、「この店辞めようと思って」と言い捨てます。「おかげさまで、すっごく面白い物語が書けそうで」と言う「ミレイ」に、全く聞く耳を持たず、荷物を今日中に持って帰るよう、ママには自分から伝えておくと片付けをしながら「ユリ」は言います。そんなことなどお構いなしの「ミレイ」は、「ユリ」と「リヒト」のことを突っ込みます。この状況でそんな話題を持ち出す「ミレイ」に腹を立てる「ユリ」ですが、「あたし、あたし、あんたが…」と感情を押し殺してしまいます。すると「ミレイ」は、「「ユリ」さんって、いっつも我慢してますよね。可哀想」とにっこり笑います。
→女の静かで激しいバトルがありました。見ての通り、完全にワンサイドゲームですが。ここで場面が切り替わるのですが、おそらく「ユリ」は「ミレイ」に何も出来ず、荷物を持って店を出ていく「ミレイ」を見つめるしか出来なかったと思います。「もうこの女には勝てない」「何もかも見透かされてる」、そう悟ったのだと思います。


7 池袋 三省堂
記者会見を受ける「ミレイ」こと「未央子」、その手には『聖女』と書かれた一冊の本がありました。その発売記念イベントの司会にはバブリー芸人として成功した「じゅんな」が抜擢されていました。古くも新しい「じゅんな」の特徴的なリアクションはあるものの、そつなく記者会見は進んでいきます。「今回の作品についてお父様の岡田裕太郎さんはなんと?」という「じゅんな」の質問に、その模様を、開店前のクラブマリアで観ていた「みちよ」と「なのか」は顔を見合わせて驚きました。
→正直、「ミレイ」が本当に『聖女』を書き上げるとは思っていませんでした。「作家志望」というのはただのはったりで、「リヒト」との関係が拗れた結果、店を辞めたのだと思っていたので、とても驚きました。そして、思わぬ形で再登場した「じゅんな」にも驚きました。平野〇ラばりのバブリーな雰囲気で会場を沸かせていました。上演回数を重ねる毎にそのキレは良くなり、ADの持つ「笑って」のカンペも要らないくらいに、客席に笑いが起きていました。

7-2 クラブ・マリア
『聖女』発売記念イベントの模様をテレビで観ていた「みちよ」と「なのか」は、「ミレイ」の正体が岡田裕太郎の娘だということに驚きを隠せません。しかし、「なのか」の表情はどこかパッとしません。興奮して話を続ける「みちよ」に対して、「たしかにちょっと違う雰囲気ありましたもんね」と素っ気なく返します。「なのか」は何も言わずに店を辞め、ピン芸人として成功し、司会をしていた「じゅんな」のことが気になって仕方がなかったのです。
→「なのか」の気持ちを考えると、悲しさ以外の何ものでもありません。「なぜ何も言わずに店を辞めたのか」「なぜ昼の仕事をひた隠しにしていたのか」「なぜ芸人として成功したことを教えてくれなかったのか」。「なぜ」が積もり積もった感情が、芝居でも表されており、記者会見を観て次第に興奮する「みちよ」とは逆に、段々と物悲しい表情を浮かべていました。しかし、そこには怒りはなく、ただ真実を知りたい、会って話がしたいという「なのか」の気持ちが見て取れました。

そこへ、『聖女』を持った「ユリ」と「リヒト」が口論しながら入ってきます。問い詰める「ユリ」を冷たくあしらう「リヒト」、それを「痴話喧嘩」と称し追い出す「みちよ」。「恥ずかしくないのかな」と「なのか」が言うと、「みちよ」は「バカなんじゃない?」と言います。
→クラブマリアでの「ユリ」の立場が以前にもまして弱くなっていることが伺い知れるシーンでした。「みちよ」と「なのか」が「ユリ」に聞こえるように悪口を言ってしまうくらい、この店で「ユリ」はそういう存在になってしまったようです。また、「痴話喧嘩」と言っていることから、「みちよ」も二人の関係に気づいていることが分かります。二人が付き合って、同棲していることを黙認はしているものの、良くは思っていないようです。


7-3 キッチン
「未央子」が書いた『聖女』の内容をめぐり、「ユリ」と「リヒト」は言い合いをしています。「ユリ」は「「未央子」の書いた『聖女』は「リヒト」の『聖女』のパクリ」「家族のことを勝手に書かれていいの?しかも嘘ばっかり」「一番許せないのは「リヒト」のお姉さんと愛し合ってたのか土井夏美になってること!」と、「リヒト」に詰め寄ります。そんな「ユリ」に対し、「リヒト」は「いいかげんにしろ!」と声を荒らげます。「姉さんは人を殺した。それは事実。あの漫画は俺がそう思いたかったという俺の妄想」と言う「リヒト」は続けて「ユリ」に、「お前に何が分かるんだよ!あれは俺と姉さんの話だ。お前には関係ない。黙ってろ!」と言います。「ユリ」の「黙れないよ。だって、あたしの物語だから」という発言を受けて、「リヒト」は「お前のじゃねぇし!」と返しますが、「ユリ」は怯まず食い気味に言葉を続けます。それは自分が「リヒト」の姉「瑛子」の幼なじみだということ、「瑛子」と愛し合っていたのは自分だということ、"あの日" 殺されたのは自分だということ。バカにし拒絶しようとする「リヒト」に対し、ラブホテルで撮った目隠しピースチェキの存在について語ります。
→テンポよく会話が進み、なおかつ、物語の根幹に関わる重要なシーンなので、一度観ただけでは流してしまいそうですが、「ユリ」の表情がコロコロ変わっていく様が圧巻でした。「瑛子」との関係を打ち明けていくにつれ、その目が正気を失い、表情が強ばり、目の前にいる「リヒト」の背後に「瑛子」の姿を創り上げながら話しているようでした。『聖女』を書いた「未央子」のことなどとうに頭にはなく、正面に立つ「リヒト」をも消し去り、「瑛子」との記憶を思い返しているようでした。

「ユリ」の衝撃の告白を受け、「リヒト」は身動き一つ出来ずにいました。そんな「リヒト」に、「ユリ」は「今までありがとう。あたしのことを初めて見つけてくれたのが、「リヒト」だった」と、感謝の気持ちを述べます。ふと我に返り、「リヒト」は「ユリ」の手を掴もうとしますが、するりと抜けます。そして、「リヒト」に「「リヒト」はあたしの光だったよ」と言い残し、消えていきました。
→表面的に見たら以下の通りですが、大好きな彼女に振られると、こういう感じなんだろうなぁと思いながら観ていました。男は結局、何も言えずに、去りゆく彼女の後ろ姿を目で追うしか出来ないものなのです。しかし、決定的に違うのは、この時「リヒト」は初めて「ユリ」が自分の漫画の一ファンではなく、自分自身を見ていてくれた大切な人、自分の求めていた存在なのだと気づいたという点です。完全に「時すでに遅し」です。


7-4 三省堂
「ユリ」は「未央子」が執筆した『聖女』を手に持ち、「こんなうそばっかりの物語、死ね!」と言いながら、ページを破り、床に叩きつけます。そして、遠くを見つめ、「あたし、「瑛子」ちゃんに会いたい!」と叫びます。
→「ユリ」のこの本に対する怒り(「リヒト」の漫画の内容を盗んだこと、嘘ばかりの内容だということ、「未央子」が自分のプロモーションのために使ったこと)と、「瑛子」に会いたいという気持ちがストレートに表されていました。この時の「ユリ」の鬼気迫る表情を、数十センチの距離で観ましたが、背もたれが無かったら吹っ飛ばされるほどのものでした。



(第一幕・完)
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台本p.39〜49(第一幕の終わり)まで、書いてみました。
人間関係がガラリと変わることが多かったのですが、説明しすぎて間延びすることなく、かつ観客を置いてきぼりにしない程度にセリフで補完していて、すっと入ってきました。



《余談》
「ユリ」が衝撃的な告白の後に、「リヒト」に感謝の言葉を伝えます。
その中で「みつけてくれた」「「リヒト」はあたしの光だった」というフレーズがありますが、この二つは第三幕でも重要な役割を持ちます。
一度観ただけではもしかしたら流してしまう、二度三度観ることでハッと気づく、こういった工夫に深く感心しました。
'17.01.20(Fri)~22(Sun)
少女都市旗揚げ公演『聖女』東京公演


の続きです。


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(※以下、上演台本に従って表記しています)

第一幕


4 池袋・2015年・5月(続き)
「なのか」に罵声を浴びせられる「リヒト」を心配する「ユリ」は、帰宅後に何が食べたいかを訊きます。その問いかけに「リヒト」は冷たく当たります。「リヒト」はタバコを咥え、「ユリ」に火を要求しました。「あのブス。…吐きそう」と漏らす「リヒト」に、「ユリ」は「大丈夫?日本酒飲みすぎたの?」と心配します。
→台本だけ見ると微笑ましいシーンだが、実際はそんなことなく、「リヒト」は「ユリ」を激しく拒絶します。「ユリ」の献身的な思いどこへやら、「リヒト」の頭の中は「なのか」への怒りでいっぱいになっており、それをタバコで忘れようとしているように見えました。この時の「ユリ」は「リヒト」の中ではただの火付け係の女であり、そこに愛情はひとつも感じられませんでした。
(おい、「リヒト」よ。「なのか」は断じてブスではないぞ。)

そんな扱いを受けた後でも「ユリ」は「リヒト」から離れようとしません。「働かせすぎ」「こんな仕事する人じゃない。「ユリ」の「リヒト」は物語を書くために生まれてきたんだから」という言葉を受けて、「リヒト」の表情が少し明るくなりました。自分のことを本気で心配してくれる「ユリ」に対し、 「リヒト」は弱音を吐きます。しかし、「ユリ」からの「『聖女』描けてる?」という質問に、「リヒト」は真顔になります。「リヒト」は自分の描く『聖女』を「ユリ」が好きなことは把握しているものの、それを良くは思っていないようです。「俺のことを好きなら、もっと稼いでくれなきゃ困る」と言い、突き放します。
→「ユリ」と「リヒト」の間に、心のすれ違いが見えました。「リヒト」は時には冷たく当たるも、「ユリ」個人を必要としていると思います。一方、「ユリ」は「リヒト」個人としてよりは『聖女』の作者として、もっと言えば加害者家族としての「リヒト」を好きなように思えました。そのことを普段から感じている「リヒト」は、ここで声を荒らげます。仕方がありませんね、人間同士の関係かと思いきや、相手は自分の裏にチラつく漫画・事件・家族(姉)のことを見ているのですから。「きちんと自分個人のことを見てほしい」という気持ちから「もっと稼いでくれなきゃ困る」という発言に繋がったのだと思いました。

ホールから呼ばれた「ユリ」が退室した後、「ミレイ」が現れます。「あたしも好きだな、「リヒト」くんの漫画」という「ミレイ」の発言に驚く「リヒト」ですが、直後に自分でpixivのアカウントを教えたことを思い出させられます。しかし、「ミレイ」は「リヒト」の一般アカウントだけではなく、『聖女』をアップしたR18裏アカも知っていたのでした。「ユリ」が話を振った時よりも楽しそうに「リヒト」は『聖女』のことを話します。「ミレイ」が作家志望ということの他に、会話の中で家族が有名だと自分まで影響を受けることを体験していると知った「リヒト」は、「ユリ」よりも深く『聖女』について語り出す。
→「ミレイ」が「リヒト」に対してただただ興味があるのではなく、その根底に家族の問題が関係していることを知り、「リヒト」は少し心を許します。それ以前にも、ベロベロに酔っ払って裏アカを教えている時点で、すでにそれなりに仲良くはなっているようですが。「全部がわかる、なんてそんなこと思わないけど、気持ち、わかる気がするな」なんてまっすぐな目で言われたら、男は心奪われてしまうなぁと思いながら観てました。

「リヒト」は「ミレイ」に対し、さらに深く『聖女』のこと、姉のことを話します。幼少期から別々に暮らしていたこと、姉だけは自分のことを対等に扱ってくれたこと、絵を褒めてくれた唯一の人だったこと、松島女子殺害事件の加害者だということ、物心ついた時から自分が「加害者の弟」だったこと、事件のことがサイトにまとめられていること。そんな話を「ミレイ」はひたすら聞き続けます。
→「ミレイ」の性格上、過度に聞き出すような言葉は掛けず、適度な相打ちで相手から吐かせるように立ち振る舞っているようにも思われそうですが、このシーンではそんなことありませんでした。先述の「全部がわかる、なんてそんなことは思わないけど、気持ち、わかる気がするな」という発言から、「ミレイ」は良い意味で「リヒト」を完全には理解しようするつもりがないように思えました。「ミレイ」自身もそうであったように、誰にでも秘密にしたいこと、思い出したくもないことがあるように、「リヒト」も姉のこと、松島女児殺害事件のことは、全てを他人に明かそうとは思っていないと勘づいたのかも知れません。「リヒト」の話を聞く際、その表情がやや曇っていたのは、「無理してそこまで話さなくていいよ」という気持ちが表わされていたのかと感じました。

二人が更衣室で話す間、「なのか」はホールで客の男を接客しています。途中、追加の酒を持ってきた「ユリ」ですが、キッチンに戻ろうとした「ユリ」の服を「なのか」が引っ張り、イジり始めます。家庭的で茶碗蒸しを作ること、いつもキッチン担当で滅多にホールに出ないこと。先ほどの「リヒト」とのことで腹の虫が治まっていない「なのか」は、「ユリ」に八つ当たりします。客の男は一緒になって笑っています。しばらく話したあと、「なのか」と男は、「ユリ」にロック2杯を一気に飲ませます。それの影響か、男に酒を注ぐ途中で「ユリ」は手元が狂い、グラスを倒してしまいます。そして再び「なのか」にイジられてしまいます。
→つくづくタイミングの悪い「ユリ」でした。こんな時に「なのか」の元へ行くということは、イジられに行くこと以外の何ものでもありません。何も知らない客の男は表面上で繰り広げられる話を文字通り受け取りただ笑うだけです。彼に悪意はありません。ただ、この時の「ユリ」にとっては完全なる悪者だったに違いありません。

更衣室では、「リヒト」がまだ「ミレイ」に対して『聖女』の話をしています。「誰にも言っていないんだけど」と頭につけ、事件のことを「ミレイ」に打ち明け、ある画像を見せます。それに対し、「ミレイ」は「リヒト」の予想外のリアクションをとります。「この女の子って、被害者の女の子とは別だよね」。ここで、「リヒト」は「ミレイ」がどれだけ『聖女』に興味をもっているのかを理解します。続けて「リヒト」は「『聖女』を書いたのは、漫画を見てこの女の子が連絡をくれたら」と言います。結果としてその子から連絡はなかったものの、漫画を描くことに面白さを感じるようになった「リヒト」は、別のアカウントを作り、四コマやバトルものを描くようになったと話します。描いていくうちに、キャラクターを見てもらったり、漫画を読んでもらった後に、「お気に入り」とか「いいね」をしてもらうことに、自分が自分として認識されたと感じるようになりました。
→「リヒト」は物は違えど同じ作り手である「ミレイ」を受け入れ、「この人なら自分の気持ちを分かってもらえる」と思うようになったのだと感じました。物事を深く知ること、それを表現すること、そしてその結晶である『作品』を認めてもらうことの意味を理解していること、その全てにおいて「自分と同じ」と思い、ここまで話してしまったのだと思いました。「リヒト」がその嬉しさを抑えきれずに、どんどん声のボリュームが大きくなり、テンポが速くなり、「ミレイ」との物理的距離が近くなったことから、そんなふうに感じました。

ここで、「ミレイ」は「「ユリ」さんとはいつ出会ったの?」と「ユリ」の名前を出しました。すると、「リヒト」の顔が若干曇ります。しかし、ここまでの話で心を許した「リヒト」は、「ミレイ」を拒絶することなく、会話を続けます。「リヒト」は「「ミレイ」ちゃんは不思議。いろんなことを考えてて、分かってる。すごい気が合うなって。」と言い、その場にいない「ユリ」は「わかんないんだよ、ものをつくるひとじゃないから」とバッサリ切り捨てます。最初のうちはどんな作品でも褒めてくれたけど、『聖女』を読むなり態度が変わったと言います。結局、「「ユリ」も他の人と同じで、「姉」に興味があるだけ」、そう思ってしまったため、「リヒト」は「ユリ」が『聖女』の話題を出すと態度が急変するのでした。しかし、「ミレイ」は違って、「リヒト」個人を理解してくれる。そのことが嬉しく思い、今度は「リヒト」が「ミレイ」のことを理解したいと、つい心の声を漏らしてしまいます。「ごめん」という「リヒト」に対して、「ミレイ」は「あたしももっと知りたい!「リヒト」くんのこと!」と言い、顔を接近させます。「これからも、たくさん教えてね」、そう言い残し、「ミレイ」はホールへと向かいます。その様子を偶然見てしまった「ユリ」を一瞥してから。更衣室に戻った「ユリ」が「リヒト」に何か言いかけると同時に、「リヒト」は「帰る。漫画、描けそうだから」と言い、通用口から出ていきます。「ユリ」は追いかけることも、声をかけることも出来ず、ただ立ち尽くすしかありませんでした。
→この時、「ユリ」は初めて「リヒト」と「ミレイ」の深い関係に気づいてしまいます。ただ、ここではもしかしたら「ユリ」は、「リヒト」と「ミレイ」の関係を「男女の関係」だと思っていたかも知れませんが、個人的には「ユリ」にとって、もっと残酷な関係だったように思えました。「男と女」というよりは、「人間と人間」の関係。より深く相手のことを知りたい、自分のことを知ってほしいとお互いに思い合う関係です。「リヒト」と「ユリ」は、言ってしまえば、漫画作家とその熱烈な愛読者、もしくは加害者家族とそのことを知りたい記者まがいの女という、相関図で表すと矢印の大きさに顕著な差がある関係だと思いました。そこから脱却する術は「ユリ」にあるのか?また、受け入れる覚悟が「リヒト」にあるのか?と考えさせられるシーンでした。


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台本p.28〜38まで書いてみました。
ほぼ更衣室でのシーンで、見かけ上の動き自体はあまりなかったのですが、その分、登場人物の心の動きや関係性がより明瞭になったように感じられました。


《余談》
「お気に入り」や「いいね!」をしてもらえると、自分が自分として認識されたって感じます。