Twitterからの再録、リライトで失礼します。

きょうは国立劇場小劇場の「元禄忠臣蔵」と「積恋雪関扉(関の扉)」を見てきました。結論からいうと、国立劇場の充実ぶりを示す、画期的な公演となりました!

 

 

 

傑作誕生!国立劇場小劇場の「積恋雪関扉~関の扉」。菊之助の関兵衛、梅枝の小町、墨染が傑出した出来映えである。ことに、菊之助はまさに蠱惑的かつ悪魔的な魅力を発揮、新境地を開拓した。

 

梅枝は独自の小町と墨染像を現出。21世紀の新しくも古典味溢れた、清新な女形の魅力を発散させて、観客を魅了した。梅枝の女形としての可能性は、正に無限大であるといえよう。

 

ことに梅枝は、江戸歌舞伎の香り豊かな、それでいて現代性溢れた魅力溢れる婉然とした女形像を、この小町と墨染で描き尽くし、画期的な「関の扉」となった。

 

萬太郎の少将宗貞も端正かつ、力強さを感じさせる力演。菊之助、梅枝と並んでの、「関の扉」成功の立役者として、大いに舞台成果に貢献した。

 

常磐津連中の好演も見逃せない。兼太夫、文字兵衛のコンビは鉄壁であり、艶やかな男女のいとなみを、ひめやかに描き尽くす。菊之助や梅枝とのコンビネーションも絶品で、舞踊劇の傑作としての「関の扉」の魅力を演じきったのはお手柄。

 

ともすれば、仲蔵以来の、古怪な魅力ばかり強調されてきた「関の扉」であるが、菊之助、梅枝、萬太郎による、古今東西の洋を超えた、男女の官能的な交情と、太古日本の原始的なシャーマニズムと激しいパッションを、爆発させつつ融合させた傑作として、この国立劇場小劇場の「関の扉」は、長く語り伝えられるであろう。

 

特筆すべきは、菊之助の関兵衛の関兵衛の徹底した役作りである。その造形は父・菊五郎の不遜さ、岳父・吉右衛門の威風堂々たる偉丈夫ぶりの再現にとどまらない、さらに二代目松緑の線の太さ、伝説的ともいうべき、ますらおぶりを、鮮やかに再現して見せたのである。

 

菊五郎劇団の伝統に留まらない、菊之助の斬新なチャレンジ精神を応援したい。国立劇場の実験精神は、ますますもって盛んであり、大いに今後も注目したい。(了)