Sigur Rósライブレポ(8/3@Zepp なんば) | novel2017のブログ

 

アイスランドの至宝、Sigur Rós。彼らの音楽とはまさに芸術そのもの、自然に溶け込むような雄大さと冷たい夜の都市空間のような厳しさを持ち合わせたポストロックバンドだ。

ロックバンドと言ってもみんなが思いつくようなロックバンドではない。編成は3ピースで、ドラムギターベースと特に変わったところはない。しかしボーカルのヨンシーはギターを弦で弾く。馬頭琴以来の衝撃だ。

まず一度音源を聴いていただこう。

 

 

 

 

どうだ、このつかみどころのない音楽は。そして何言ってるかわからん。アイスランド語と自作の言語を駆使している。意味不明だ。バカなのか。

そもそもアイスランドってへんな国だ。先日フジロックでもパフォーマンスしていたビョーク、最近動向を聞かないがムーム。メロディックになったけどやっぱり静かで冷たい印象のAsgeirなど、やたら難解だったり静かだったりとニッチな音楽ばっかりやりやがる。寒すぎて頭おかしなったんか。

たまにポップミュージックをやる人たちが現れたと思ったらやっぱり新海に潜るように静的さを増すアイスランド人。Of Monsters and Men とか。

 






 

さて、ライブレポとは言ったものの、どう書けばいいのかわからない。だって難しいんだもん

全曲知ってるわけでもないので、知らない曲が始まると、それが原曲通りなのかアレンジなのかが区別つかない。どこから始まっているのかもわからない。サビが分からない。終着点もわからない。なにより言葉にしづらすぎる。

だけれどそうも言ってられない。なんとか言葉にせねば。できる限りで。やってみよう。

 

シガーロスとの出会いはそう古くない。大学生の頃だったか、知人に教えてもらって聴き始めた。まだああいう音楽への耐性ができてなかったので初めは面食らったが、彼らのおかげで今では好んで界隈も聞いている。

何度か来日公演のチャンスを逃しているので今回こそはと満を持して。

 

まずはとりあえずTシャツ購入

 

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けっこう品薄なものもあり、人気だねえと。4000円でした。ちょっとお高い。

席は2階指定席。12000円。たっけえなあと思っていたけど、終わってみれば妥当過ぎた。

 

 

始まりから幻想的な空間にドラムの単調なリズムが続いている。そこにメンバーが登場。静かに歌い始める。ファルセットがウリの彼らだが、CD音源かと問いたくなるくらいの再現度に度肝を抜かれた。なんだこの存在感は。客席からステージに向かって無数の電飾が施され、その線を伝って光がステージに集まっていく演出は今まで見たことがなく感動的だった。バックに流れる映像も、故郷アイスランドなのだろうか、海に浮かぶ島々が映し出されている。時に光線となり、またある時はやさしい色となって会場を包み込む。シガーロスだけじゃない、その周りの演出も含めて素晴らしいライブだったと言える。

また彼らのマルチプレイヤーぶりにも目を奪われた。ドラムはピアノを、ベースはグロッケンかなにか?を演奏。度々変わる楽器に、本当に3人でやっているのかと疑わしくなってしまう。随所で流れるささやかなノイズ音もこの空間に貢献している。切って貼ったような複数の声。ひんやりと冷たさはあるのになぜか熱を帯びていく。一曲ずつ拍手が響き渡る。一切しゃべることもなく、かれらの世界は一度も寸断されることなく、我々にも途中下車を許さない。そういったライブを圧巻と言うが、まさにそれ。陳腐な表現に歯がゆい思いしかないが、圧巻だった。ただ、この時の私の間違いは、まだ圧巻という言葉を思いつくのが早すぎたことだろう。

実はこのライブ、2部構成になっていて、途中20分の休憩を挟んだ。前半は静かでピアノが綺麗な曲を集めていたが、後半はうってかわってバンドサウンド。轟音のシガーロスが顔を出す。

 

有名な曲をガンガンやるシガーロス。勢いはどんどん増していく。天井から宇宙船の底のようなライトがまばゆく回転する。すると今度は地面から光が天へと昇っていく。ステージ上に施された多数の光のポールはあまりに幻想的で見とれてしまった。どんどんギターもドラムも加速していく。爆音でながれる音もなぜか心地が良い。それはただの轟音バンドではなく、弦で弾くからこその音の丸みなどもあり、音楽性は一辺倒ではない。決して叫ぶことはないのだが確実にボルテージが上がっていく。勢いは一曲終わるたびに衰えることもなくそのまま次に持ち越されていく。



彼らの音楽を理解したり評価したり噛み砕いたりはできない。とにかく受け入れるままに大口を開け待っているだけだ。そこにとりあえず膨大な情報を詰め込まれただできることはそれを飲み込むことくらい。圧倒されるとはまさにこのことで、一度も席を立っていないのにめまいがした。思わず後ずさりしてしまいそうになる。爆音と宇宙へと放り込まれたような錯覚にさせる演出。あの2時間はここが難波のど真ん中であることを完全に忘れていた。





ライブ後、これを日本はいつか超えなければならないのだと思うとゾッとした。ゾッとしたのは不可能だからではないが、限りなく絶望的に高い壁だからだ。この音楽と演出をこなすカリスマとセンス。この音楽がビジネスとして成立する土壌。ビョークやシガーロスが桁違いなのは彼らだけの話ではない。それを受け入れる人がいること。今回のライブは当日券もあった。zeppなんばすらソールドアウトしなかった。もちろんシガーロスがマイナーだと言いたいわけではない。マイナーだが、洋楽が少しでも好きで、特にロック以外の音楽に手を出したことがある人なら好みに関わらず名前は知っているはずだ。それくらいの世界的なバンドであるのに、埋まらない。

別に日本人がダメだというわけでもない。ただ、いずれこの音楽がわかりやすい立場にいかない限り海外に追いつく事は到底ありえないと思う(追いつく事が必要かどうかはおいといて)。こういうバンドがいずれ現れても結局海外の方で先に話題になって逆輸入されてては意味がない。Qrionなんかがいい例だろう。ロッキンジャパンフェスにそういうバンドがでて、きちんと客が呼べて、何より「どこがロックやねん、ロック以外呼ぶなよ」なんていう了見の狭い二十世紀の価値観が跋扈する日本の音楽シーンに風穴を開けないと、いつまでたってもギターロックバンドばかりが大きな顔をすることになる(すでにそうなっている)。




なんかシーン批判みたいになっちゃった。日本好きだよ。JPOP大好き。Jロックも好き。でもシガーロスみて、そんなことも思ったってこと。


とにかく凄かった。総合的なライブとしては人生至上の完成度だった。一生の宝になった。

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