第三十回映画と音楽のレビュー〜バクマン。〜 | novel2017のブログ

漫画は読まない。アニメも見ない。全くではないが。ドラゴンボールは全部見た。今放送されている物以外はすべて見た。デスノートも20世紀少年も見た。寄生獣も見た。進撃の巨人は5巻まで見た。ハンターハンターもちょっとも見た。見た、というか読んだか。

 

バクマン。は漫画、いやジャンプをこよなく愛した映画だ。

 

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たとえ私がジャンプに詳しくなくてもそれはひしひしと伝わる。漫画って素晴らしい。汗と涙と血の結晶でできた漫画。日本人が誇るべきコンテンツ。そこには手塚治虫から鳥山明まで、先代の想いが脈々と受け継がれている。それを確認させてくれる映画。

 

 

 

本当に漫画のことはよく知らないので、たまに読んだら、「どうやってあんなに大量のコマを緻密に書いてるんだ」といつも不思議に思う。今時だったらパソコンで画像処理したりしてるんかな、とか考えたり。でもバクマンの二人は違った。いや、彼らに限らず世間の漫画家は今なお一コマ一コマ細かく書き上げているのだろう。頭の下がる思いだ。どうやって数百円で買えてるのか、システムが分からない。

ジャンプにテーマを絞った映画なのでとにかくシンプルなストーリー。努力と友情がふんだんに盛り込まれ、劇中でもそれを皮肉ったセリフが何度も登場する。わかりやすいキャラ、んなわけねえだろの展開、うまくいきすぎ、など、普通の作品としてみるならばそうした指摘はいくつも見つけることができる。しかし、原作者、ひいては大根監督はあえてそれを曝け出した。ジャンプ漫画を描くかれらがジャンプそのものなんだ。現実は小説より奇なりとはよく言われるが、きっと漫画の世界はそうに違いない。たくさんの非情と少しの感動でできている世界なんだ。表現者は常にその狭間で生きねばならない。

 

 

編集者が優しいところがよかった。あれで現実さながらのえげつない人たちだったらちょっとジャンプっぽくないから非現実と現実がごっちゃになって複雑な気分になる。あと、小松奈菜はせこい。もう彼女を応援し始めてかなり経つが、年々ヤな女になってきた。なんて男をたぶらかすのがうまいんだ。あれは映画の中のキャラなんだろうけど、実際にあんなキャラを現実世界でも特定の男性にやってそうでこわい。だって彼女は男をきゅんとさせるノウハウがあるから。そりゃ学園物の恋愛映画に引っ張りだこなわけだわ。彼女を嫌いな男性はいない。断言できる。あいつは魔性だ。まさか劇中の演技ですら演技じゃないかと錯覚するくらい。それは演技力の高い低いの話ではなく、男を転がす魔性の目つきの問題だ。彼女のラストシーンでの去り際は、絶対普段からやってる。あれはやってる。

 


この映画は海外の人に見てもらいたい映画だ。特に日本のアニメ好きな人に。海外のアニメ作家を主人公とした映画を作ってもこうにはならないだろう。この表現方法は日本独特だ。きっとハリウッドなら例えば執筆シーンを部屋で撮るとき、本棚から本が飛び出したり天井や壁がゆがんだり、ふんだんにCGを盛り込んだに違いない。でもバクマンはそうはしない。あくまで漫画だけにフューチャーする。部屋中に漫画をトーレスし、駆け巡らせる。おかげで彼らの没頭ぶりが一目でわかる。日本人ならではの表現方法で、漫画への愛とこだわりが垣間見られる。

 

 

 

最後に、この映画の音楽を担当したのはサカナクション。みごとアカデミー賞で音楽賞を受賞してたね。それも納得の音楽。ペンの音や神の擦れる音も計算に入れての見事なコラボ。妙なシリアスな映画じゃないことがかえってよさを際立たせていたとも思う。エンディングの新宝島もまた映画を見た後で聴くとすこし違った印象を抱く。彼らのことは常々べた褒めしていて(なんて上から目線)、やはりオタクなんだけどすごく世間に敏感なグループだと思う。マニアックになり過ぎずでもこだわり抜いた一音。刻まれる細かいビートは次の展開を盛り上げる。ときにはアンビエントのような耽美な音楽も奏でられ、君の名は。とはまた違った音楽のアプローチの仕方だなと感じた。まあ監督が大根さんということもあったので、かなり理解のある人だったんじゃないかと勝手に思っている。