第51話「バーミリオンの死闘(前篇)」
(あらすじ)
ラインハルトとヤン、両者の衝突が確実となった。決戦を前にヤンはフレデリカに求婚する。11年前エル・ファシルで出会って以来彼を想い続けていたフレデリカは即座に承知する。フレデリカに憧れていたユリアンは、苦い酒を飲みつつ祝福するのだった。そして、遂にバーミリオン星域において両雄の決戦が開始された。後の歴史家から「死闘」と称されるこの激戦は、双方による艦砲射撃の応酬という極めて平凡な形で始まったのであった。
(かんそう)
ヤンの思惑どおりにラインハルトは艦隊同士の決戦を臨んできましたが、間違えれば分散した帝国軍が引き返してきて、大包囲網に捉えられる危険性が大いにあります。ユリアンが罠であるとの指摘も承知の上で、これが最善の策であるとヤンは話します。
決戦を前に両軍は兵士に休息をとらせますが、その限られた時間を使い、ヤンはしどろもどろにプロポーズします。フレデリカさん、よかったね! で、やけ酒のユリアン・・・って、未成年じゃなかったっけ、成人したんだっけ、あそうか、べつに同盟は20歳というわけじゃないもんな・・・。こういうときのキャゼルヌ先輩って、いいですね。
第52話「バーミリオンの死闘(後編)」
(あらすじ)
決戦に際してラインハルトの採った作戦は、幾層にも艦隊を並べて間断ない攻撃を加えながら同盟軍に消耗戦を強いるというものであった。それを看破したユリアンの意見に耳を傾けたヤンは、囮部隊を使って中央突破を図り、自ら率いる主力軍でラインハルトの本営に肉薄する。援軍として現れたミュラー艦隊の奮戦も虚しく、ヤンはラインハルトの旗艦ブリュンヒルトを射程に捉える。人類史上最高の英雄の生涯が、閉じようとしていた……。
(かんそう)
いつもは、攻めるラインハルトに、受けるヤンという構図なのですが、今回は逆。何しろ時間稼ぎをすれば味方が駆けつけてくるのですから。いきおい消耗戦となります。この戦いの中で、ポプランの親友のイワン・コーネフが戦死します。コーネフが巡航艦の艦砲射撃で命を落としたと聞いて、ポプランは俺だったら戦艦だと言います。事態の打開を図るべく行われたミラクル・ヤンの作戦により、ラインハルト艦隊は完全包囲され、せん滅の危機を迎えます。
同盟軍の補給基地の司令官の人道的行為がラインハルトを助けることになるとは、作者の皮肉のスパイスが一杯かかっています。おかげで、予定より早く駆け付けたミュラー艦隊は、それでもヤンの手玉に取られ、旗艦を何隻も変える始末。この活躍で「鉄壁ミュラー」のあだ名が付きます。
第53話「急転」
(あらすじ)
ブリュンヒルトを射程に捉えた正にその時、「無条件停戦命令」がハイネセンからヤンに伝えられた。勝利を目前にしてヤンは攻撃を中止する。この裏にはヒルダの活躍があった。彼女は独断でミッターマイヤーとロイエンタールをハイネセンに向かわせて降伏を要求したのである。ヤンはメルカッツに少数の兵を率いて一旦姿を隠して貰うことにする。ポプランやリンツらも彼に付き従うことを宣言した。来るべきヤン艦隊の復活を信じて……。
(かんそう)
歴史に「ればたら」はない、と何度も言っているのに、取りざたされるのがここ。
同盟政府からの停戦命令に対して、シェーンコップは、攻撃すべきだと執拗に主張します。「悪魔のささやき」どころか、恫喝です。それもいちいち理にかなっている。でも、ヤンは「自分の体に合わない」と言って、停戦命令を出します。酒を飲んでふてくされているシェーンコップに、ユリアンが熱弁を振います。
メルカッツ提督の引き渡しを求められるのでは、の危惧に対し、ヤンはメルカッツに「動く森」になってもらうように要請します。かくしてメルカッツは戦死扱いに。次々にヤン元帥への忠誠を宣言するメンバーに対し、「軍閥化だな」とのたまうキャゼルヌ先輩。
起死回生の大博打を打ったのは、ヒルダ。話を聞いたミッターマイヤーはヒルダを支持し、そのためにもロイエンタールと共同行動をとろうとします。ロイエンタールに危惧を持つヒルダ、バイエルライン、だって、危ないんだものロイエンタール。
自由惑星同盟では、ぬけぬけと現れたトリューニヒトが元首の権限を履行して、降伏するといい、挙句の果ては地球教徒の武力で、閣僚を拘禁します。ああ、腹が立つ。
自らの力でなく、恵んでもらって宇宙を手に入れたとの複雑な思いのラインハルト、達成感がありません。
第54話「皇帝ばんざい(ジーク・カイザー)!」
(あらすじ)
ラインハルトに望まれてヤンはブリュンヒルトに赴き、両雄の対面が実現する。ラインハルトはヤンを麾下に招きたいと申し出るが、ヤンはあっさりとそれを断った。彼は、やがて専制君主となるラインハルトに、敢えて民主共和制の意義を語るのだった。その後、「バーラトの和約」を締結したラインハルトは、ほぼ全宇宙を統治下に置き、正式に銀河帝国皇帝に即位する。しかし、彼が誰よりも祝福して欲しかった2人の姿は、そこにはなかった。
(かんそう)
ラインハルトとヤンの対面は短時間ではありましたが、意義深いものだったのでは。
晴れて、軍を退役することができたヤンとフレデリカは、新居探し。幼馴染のボリフ・コーネフに、ユリアンの地球行きをお願いします。
自由惑星同盟の帝国併呑は時期早尚との意見を取り入れ、厳しい制限下に存続が認められた同盟、レベロとレンネンカンプのコンビが破滅への道を進んでいくことになります。オーベルシュタインがロイエンタールの起用に反対したのは、「野獣は野に放たずに、鎖につないでおくのがいい」だって、ひどい言いぐさ。
皇帝の座を禅譲されたラインハルト、ローエングラム王朝の始まりですが、ラインハルトの表情はさえません。
何事も、めでたしめでたしとならずに(ヤンとフレデリカはめでたしめでたし)、もやもやとしたものを引きずりながら、第2部の幕が下りました。