「空ヲ刻ム者」そらをきざむもの
と読むそうですが内容的には「くうを・・・」と読んだ方がしっくりします


まずは口上、猿之助さんから始まり澤瀉屋の皆さん、そして歌舞伎ではない俳優さんも「奉りまする~」と(^^;
最後は猿之助さんが締めくくります

一幕「御心の真意」
舞台装置は特にスーパー歌舞伎らしさは目立ちません
台詞は歌舞伎らしい発声ではなく、現代劇のような感じです
役者さん(歌舞伎)俳優さんの違和感もなくお互い溶け込んでいました
それでも光や音楽はヤマトタケルを伝承しています


舞台はいにしえの日本
山間の奥泉郷、若き仏師十和は具合の悪い母を思い鳴子に相談をする
父玄和はひたすら仏像を彫り続ける
一方籐泉寺で領主の息子一馬は都の役人らに年貢の引き下げを訴える
そこに玄和は十和と現れ、考えの相違から十和は住職にあずけられる
一馬は十和に「民のため都で政をする」と明かす
数日後、十和の母はあの世に旅立つ
籐泉寺の前に玄和作の仏像が運ばれるが、十和は仏教は命は救えないと言い仏像を足蹴にする
役人は十和を取り押さえると、仏師見習いの息吹が身代わりを申し出、腕を斬られる
激怒した十和は役人を殺めてしまい、仏師を捨て逃亡します

二幕「二つの道」


長邦の館では宴の最中
一馬は都で役人となるものの無冠のままである
しかし、長邦は一馬の志に共に戦うと約束する
所変わり外れの牢獄、そこには捕らえられたら十和の姿
十和は因人の農民喜市、盗賊団の女の頭双葉と脱獄を図った
手引きしたのは双葉の手下たち
彼らは貴族から盗みを働き、民に配る言わば義賊、十和は仲間入りをした
一方、一馬は長邦に焼き払うように命じられた
悩む一馬だが、犠牲は伴うと判断し兵を率いれ出発する
その頃、十和は仏師の工房に忍び込み主、九龍に心奪われ再び仏師となる
そして一馬はついに双葉を捕らえると村に火を放つのであった
全体的に大道具はあっさりとしたものが多いですね
両面使用など工夫はされていました
その分、光、音響、演出効果を多用しビジュアル的に高度となっています

三幕「人の似姿」
光、音響、演出全てにおいてスーパー歌舞伎的要素が押し出されたステージです
九龍の弟子入りした十和
苦しむ農民に仏像を寄贈、喜ばれていた
村に火を放ち悩む一馬、しかし双葉は殺せずにいる
一馬は十和の居場所を尋ねると仏師に戻ったことを伝えた
さて、九龍は十和の技量に感心するが更なる願いに霊木を無心で彫るよう伝える
一方、一馬は百姓らに反乱させようと企む
長邦は一馬に百姓に慕われる仏師の捜索を命じた
九龍の工房に一馬が訪れ、政を変えられる仏像を依頼する
十和は断ると一馬は双葉を人質に脅す
九龍は一馬の偽善を一喝、稀久は九龍を斬りつけると、一馬らは去って行く
九龍は十和に不動明王を仕上げるよう言い残し息絶える
その頃、村では農民が反乱のため集結していた
再び九龍の工房、一馬らが仏像を引き取りに来た
十和は一馬に自分の志を取り戻せと、仏像の入った厨子の縄を切る
中からは全て彫り尽くした木屑が舞う中、十和は「仏は鏡、拝むものの姿を写す鏡だ」と一馬に説く
一馬は己の愚かさに目を覚ますが、兵に囲まれ工房は火が放たれた
炎の中から九龍の魂が宿った不動明王が現れる
不動明王は兵を打ち負かすと、集結した農民の元へ霊験で十和と一馬を向かわせるのであった




ストーリーも全体的な構成も分かりやすく、内容も濃いものでした
身分の決して高くない者らが政を変えて行こうとするため、それぞれの道を歩む、完成度の高いエンターテイメントに仕上がっています
歌舞伎役者と俳優との融合も違和感なく、一体となって真剣に取り組んでいる姿が素晴らしい
猿之助、蔵之助の息の合ったコンビ、また道化役のオババ(浅野和之)はよいアクセントであり清涼剤のような存在である
スーパー歌舞伎セカンドと名を売った作品で一番気がかりだったのは市川右近の存在でした
彼は三代目が倒れてから澤瀉屋を支えてきた最大の功労者
この作品の発表から右近の役柄が気になっていました
十和(猿之助)の師であり、殺されるも不動明王として甦り霊験を持って十和と一馬を飛び立たせる
正直、涙が溢れた
猿之助は右近に敬意を表しているのを感じとりました
儂ゃ文句なしの一押しといったところです(^^)v


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