私は、12年前にOperation smileという組織の海外ボランティアに初めて参加しました。Operation Smileは口唇口蓋裂のボランティア手術を主に行うアメリカの団体です。私も、海外での手術活動というものに憧れていたので、当時の医局の教授に声を掛けられるがままに、当時は平和だったミャンマーや、ウズベキスタンの活動に参加しました。そのウズベキスタンの活動の時に知り合ったのが、フィリピンのミンダナオ島のジョジョ先生でした。
ミンダナオ島はフィリピンの第2の大きさの島で、日本の北海道と四国を合わせたくらいの大きさがあります。Wikipediaによると、人口は2000万人くらいと言われています。ミンダナオ島は、最大の都市ダバオ周辺は、治安も比較的安全で発展していますが、イスラム過激派組織の影響で、島の半分以上は日本の外務省の定める立入禁止区域になっているくらいです。このため、ダバオ周辺以外の地域の発展は遅れ、医療の遅れが深刻です。
もちろん医療の遅れには様々な側面があるとは思いますが、こと私の専門である形成外科領域に限りますと、口唇口蓋裂の治療が大きく不足しています。口唇口蓋裂は人種によりますが、500から1500人の赤ちゃんが産まれるたびに1人は発生する病気で、命に関わるわけではありませんが、治療を全く受けないと、見た目の上でまた言語コミュニケーションの上で、大きな障害を負って生きていくことになります。仮に2000万人の人口がいるとして、フィリピンの平均寿命70で割ると1年あたりミンダナオ島だけでも30万人の出生があります。日本とは人口ピラミッド構成が異なるでしょうから、実際ははるかに多いと思います。フィリピンでは人種的に500人に1人の口唇口蓋裂が発生すると言われていますので、1年間に600人以上の口唇口蓋裂の赤ちゃんが産まれることになります。この赤ちゃんたちが、ある一定レベルの治療を受けられることは、地域の発展には不可欠なことです。
ただ、ミンダナオ島にはジョジョ先生も含めて、形成外科専門医と呼べる医師は2015年当時は4人しかいませんでした。年間600人以上生まれ、しかもそれ以前に生まれた未治療の口唇口蓋裂の患者さんを、他の治療も行いながら治療していくことは不可能です。そんな事情もありジョジョ先生は、当時から積極的にフィリピンで活動を行っていた、アメリカのボランティア組織であるoperation smileと提携し、ミンダナオ島に口唇口蓋裂センターを立ち上げました。それ以来、定期的な口唇口蓋裂治療を行いつつ、国際チームからなる大規模な治療ミッションを定期的に行うようになりました。
私は、2015年頃に、ジョジョ先生に声を掛けられ、時々ミンダナオ島の手術ミッションに呼んでいただくようになりました。と同時に、私の方では、現地の若い形成外科の先生たちに来日していただき、マイクロサージャリーの実習をしていただくようになりました。コロナ期間や私自身の異動などもあり、数年ほどこの活動は休止していましたが、今まで3人の形成外科の先生をこちらでも受けいれました。そんなこんなでちょっとした出会いから、私にとってとても大きな存在になったジョジョ先生先生でしたが、2019年ごろに脳梗塞を発症され、治療の第1線からは退いてしまいました。でも、今ミンダナオ島で活躍している形成外科の先生たちは、みなさんジョジョ先生の弟子にあたる先生たちになります。日本に来てくれた先生たちも含めて、若い形成外科の先生たちも増えてきているのを感じます。
さて、今回わたし自身は8年ぶりに声がかかり、ミンダナオ島のボランティアミッションに参加することになりました。8月13日から20日まで、ミンダナオ島に行くこととなりました。この記事も今ダバオで書いています。私の後輩の先生も一緒です。こちらでは口唇口蓋裂の手術をたくさん行ってくる予定ですので、またボランティアの様子、手術の様子などを記事にしていきます。