国会でのやり取りを聴き直した。
菅首相の辻褄が合わない、整合性のない答弁にも呆れたが、川内議員の質疑を活かしきれない野党にも苛立ちを覚えた。
川内博史議員が冒頭で「私も叩き上げですから...」みたいな話でスタートした質疑時間。
これが実はこの後の展開にとって、重要な枕詞だった。
学術会議の任命に関して、川内議員の質問が続くうちに、菅首相より
『6人を任命しなかった事に、本当にそれで良かったのか悩んだ』
『加藤先生以外は存じ上げておりませんでした』
との答弁を引き出した。
つまり、違法性があるのではないか?と一旦は躊躇したという事。任命拒否の選定は間違いなく菅首相本人以外であるという事。
つまり、官邸が任命拒否する為の調査・選定の作業は時間を要するであろう事、時系列の観点から、安倍前首相の案件である事の補強答弁へと暗になっている。
そこへ川内議員は「梶田学術会議会長が6人を任命するよう、要は再推薦したのだから任命したらどうですか?」と、まるで助け舟のように任命を勧めた。
前任者とのしがらみを解いたらどうですか?叩き上げで大変だったでしょうけど、という川内議員の意図が伺える。
これで6人を任命する事となり、学術会議の在り方は別に議論しましょう!となり、コロナウィルスに関する医療体制や経済施策を詰める時間が大きくなれば、本当に良い流れで有った。
ところが、あとに続く議員の質問で、菅首相にとっても野党にとっても解決の糸口を手放すような事となってしまった。
単に“菅首相を責めるんだ!”という、終わりが見えない袋小路へ、後からの質問者は自ら迷いこんでしまった。
与党から政権を奪取するには、徹底的に嫌がる事をやるのは常道である。
(東日本大震災時に野党であった自民党がそうであったように)
しかしながら、今回は大変大きな失策であったとしか言いようがない。
この流れは桜を観る会の同じ流れであり、再び同じようなグダグダを見せられれば、“またかよっ!”と野党の支持率が下がり、菅首相も野党に何だかんだと言われ続ける姿を晒し、辞任・解散も見えてくる。
(因みに、桜を観る会が質疑に占めた時間は全体の7%程度だが、メディアは判り易い所、象徴的な所を何度もニュースにするので、余計に野党はそればっかりという印象が強くなる)
こうなると、一番喜ぶのは誰あろう、3度目の登板を狙い、何やら蠢きだしたとの噂も漏れ聞こえる安倍前首相であり、再任待望論を口にしだした前首相を支えてきた面子と支持団体である。
保守のふりした、築き上げてきた議会制民主主義・立憲主義を破壊してきた人間が、虎視眈々と機を伺っているようである。
「追記」
立憲民主党は川内博史議員や吉川さおり議員とか、質問の詰め方が上手い議員が居るのに、どこか活かしきれていないのが非常に残念である。これだけは言っておきたい。