世の理…梶井基次郎櫻の樹の下には屍体が埋まってゐる。これは信じていいことなんだよ。梶井基次郎『桜の樹の下には』冒頭より中学生の時、この小説と出会ったのだが、後にも先にもこれほど強烈なインパクトを与えられた、桜を扱った小説はない。初めは、何とおどろおどろしい小説なのか!という印象ばかりが残っていた。しかし、己が歳を重ねる程に、梶井基次郎は美醜、生死に世の理を見ていた事、それを強く思うようになる。作用・反作用、陰と陽といった、物事には相反するものが必ず存在し、それをもって均衡を保っている…墓守りの桜を見る度に、この小説が頭の中を過る。