4つの物語を収めた短篇集。
殺人出産
トリプル
清潔な結婚
余命
うへえ
こりゃなかなかにぶっとんだ発想だなあ。
2014年発表なので
2018年に発表した
地球星人
よりは4年前の作品なんだけど
殺人出産
の方がより過激。
10人産んだら1人殺せるって
どんなルールだ。
が
信じられない
などと言ってはいけない。
ぼくたち人間は容易にそれまでの常識を覆すことができる。
抵抗するのもわずかの期間だけ。
慣れてしまえば
まるでずっと昔からそのようにしていたように
思いこむことだってできる。
トリプル
だって最初からそういう交際や性交があたりまえだと思っていたら
それ以外の交際や性交をおかしいと思うだろう。
清潔な結婚
に至ってはもうすでにこれに近いカップルは多数存在するのではないかな。
ほんとうにいまの常識なんてあやふやな土台のうえにのっかっているだけ。
全然確固たるものなんかじゃない。
「突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよ。より合理的になっただけです。世界はいつも残酷です。残酷さの形が変わったというだけです。私にとっては優しい世界になった。誰かにとっては残酷な世界になった。それだけです」
ほんとにそう。
社会で成功するかどうかは
きっとそのときのルールにたまたま合っているかどうかだけの問題で
能力とか努力の有無の問題じゃない部分も大きい
っていうのは
わりに恵まれたポジションにいるぼくもいつも思っている。
だから
自分の成功は自分の能力と努力の成果だ
自分はそれに見合った報酬や権力を得る資格がある
って考えているタイプには
勘違いするなよ
って言いたくなる。
とはいえ
この本は誰でも読めるわけじゃなくて
嫌悪感しか催さないひとがきっといるだろうから
読者を選ぶ作品ではある。
--殺人出産--
村田沙耶香