星に仄めかされて 多和田葉子 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

地球にちりばめられて

の続きになります。

 

今作の主な舞台はデンマークのコペンハーゲン。

 

地球にちりばめられて

の登場人物たちがコペンハーゲンを目指し

そこで不思議なやりとりが交わされる。

 

まずムンンが語る。

 

ぼくはこのムンンがとても気に入った。

 

思考やことばがとても詩的。

 

やさしさ。

 

同僚のヴィタとのやりとりも愛らしくておもしろい。

 

やることが多くて忙しいと思いこんで生活していると

ついついテンプレートみたいな型にはめ込まれてしまうけど

ほんとうはこんなふうにゆっくりとコミュニケーションを楽しみたいのかも

って思えるくらいこのムンンが語っている章は好きだった。

 

SUSANOOはなぜかムンンにツクヨミって呼びかけるけど

ムンンっていうのはムーンに近い発音なのかな。

 

医師のベルマーはいけ好かないことばかり言って苦手なタイプだけど

こういうひとっている。

 

そんなベルマーが語っているから

もしかしたらいけ好かないこんなタイプのひとも

こんなことを考えているのかもな

って思うと憎めない。

 

ナヌークはいつも何かから逃げている。

 

ヒッチハイクの旅行って怖そうだな。

 

ここでナヌークが運ばされるあるものがあんなことになるとは。

 

ノラはなんだかまじめすぎて可哀想だと思えてしまうけど

アカッシュとの関係がなんとなくいい方向に導いてくれるようで良かった。

 

オートバイに乗る前と乗った後のノラの変化ぶりといったら。

 

アカッシュはニュートラルに思えるけど

そこはやっぱりアカッシュなりにいろいろと思うところがある。

 

クヌートへの思いとノラへの思いやり。

 

インガって新しい登場人物だと思いながら読んでいたけど

やっぱり彼女にも苦悩があった。

 

簡単にはいかないね。

 

終盤の

クヌート

Hiruko

Susanoo

ムンン

が語るところは

そこに至るまでも含めて

ていねいに個人の視点をリレーして積み重ねていった末に

三段飛ばしで階段を駆け上がっていくような異次元の展開で

この部分の好みはわかれるかもしれないけどぼくは好き。

 

そしてこのことばをめぐる旅はあらたな舞台へ。

 

技巧を凝らした構成と描写に

これはすごいと唸らせられ

しかもわくわくしながら夢中で読めた。

 

多和田葉子さんの書く文章と描く世界に魅了されている。

 

 

 

 

--星に仄めかされて--

多和田葉子