上田岳弘さんの作品との出会いは
新潮2013年11月号。
川上未映子さんの
ミス・アイスサンドイッチ
と
野田秀樹さんの
MIWA
を読みたくて購入したこの本。
その本には新潮新人賞の発表も載っていたので
文芸誌の新人賞受賞作品ってどんなもんだろう
って興味本位で読んでみたのが
太陽
だった。
その巨大な世界観に惹きこまれてファンとなり
惑星
私の恋人
異郷の友人
塔と重力
ニムロッド
と期待を裏切られることなく読み続けてきた。
そしてこの
キュー。
集大成といえるんじゃないかな。
これまでの作品の世界観を総仕上げしたような作品。
時空を超え
有機物無機物を超え
性も個もあらゆる境界を溶かしに溶かして
やがてやってくる全体の世界。
テーマは
寂しさ
かな。
ぼくは集団に疲れ孤独に癒されるタイプの人間だけど
ときには寂しさに包まれることもある。
寂しさとひとことでいっても
味わい深い寂しさもあれば
疎外感を感じるつらい寂しさもある。
寂しさの感情は
人間が社会的な存在として他者と連帯し
生存率を高めるために必要なものだ
という説明もあるだろうが
そういう説明では物足りないとも感じる。
彼はなぜ最後のひとになったのか。
理解できず
理解されず
理解し合えず。
淡々とした描写で
感動的な涙なんてものは期待してはいけないけど
最後にそれが空から降ってきたとき
ぼくは少し寂しさが和らいだような
そんな気がしたんだよ。
-- キュー --
上田岳弘