地球星人 村田沙耶香 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ほかの作家さんが書いたら

ドン引きされるか

炎上しそうな内容ですが

村田紗耶香さんが書いたら

ぴったりだと思える。

 

いいポジションに収まりました。

 

っていうか狙って収まったというよりは

ここしかありえなかった

ってことなのかもしれませんが。

 

いや

やっぱりプロの仕事なので

狙って収まったんでしょうね。

 

無機質な表現でありながら

かなりグロテスクな内容で

既存の倫理観を蹂躙してるんですけど

そこには

連綿と当たり前のように受け継がれてきた社会的な常識に対する懐疑と

その反動として現実を無視して繰り広げられる行き過ぎた合理主義や理想主義への皮肉の

両面が寓話的に示されているとぼくは思いました。

 

男女を問わず人間を産むための機械とし

産むための性行為

性行為をするための結婚

結婚するための恋愛

恋愛するための社会的すりこみのあれやこれや

をやんわりと強要してくる工場。

 

そういう見方はたしかにあり得る。

 

狙ったわけじゃないとしても

結果としてそうなっている。

 

産みたいひとが産み

性行為をしたいひとが性行為をし

結婚したいひとが結婚し

恋愛したいひとが恋愛する

のはぜんぜん問題ないんだけど

そうでないひとに強要するのはやっぱり暴力だ。

 

ちょっと話がややこしくなるのだが

主人公がもし

父や母や姉からあのような仕打ちを受けなかったり

塾の先生からあんなことをされなかったり

後の友人からあんなことを言われたりしなかったら

どういう価値観を持っていただろうと考える。

 

やっぱり工場側の価値観を持っていただろうか。

 

それとも変わらず宇宙人の目を持てただろうか。

 

一刻も早く工場側に洗脳されたがっていた主人公だが

過去の経験からどうしても洗脳されることができなかった。

 

それにしても

性犯罪は心の殺人というが

あの塾講師もひどいし

やっとの思いで相談した時の母親の態度もひどいし

後の友人たちの反応もひどい。

 

そのひどさを告発する書でもあるこの作品は

被害者になるこどもたちにはもちろん

直接的にも間接的にも加害者になりえるおとなにとっても

必読の書であるかもしれない。

 

 

 

 

 

--地球星人--

村田沙耶香