このひとの小説はセンスがぼく好みなんだよね。
知性的なのに感情的。
ぼくは
自分の気持ちいいルールをつくって
自分がコントロールできる範囲で暮らす
ことに安心感を得るタイプなんだけど
この小説の主人公もそんな感じ。
そんな彼女が
現実の人間と否応なしに関わらなければならない状況になって
箱庭的小宇宙
たる自分の生活を乱されることになる。
うんざりしたり
気が変になりそうになったり。
ぼくも
自分の生活に他人が入ってきて乱される
のはものすごく苦手で
できるだけ自分のテリトリーに他人を入れたくない。
親しい友人でさえ
テリトリーに入って来られるのはちょっと嫌。
でもこころの中ではそんな
箱庭的小宇宙
に引き込もっているよりも
現実の人間たちとの
自分ではコントロールできない関わりの中にこそ
大きな喜びや楽しみがあって
もちろん悲しみや怒りもあるんだけど
それらの感情の一切が
幸せを感じさせてくれるんだろうな
という予感みたいなものを感じている。
そういう感情生活というのにあこがれる。
後半に一気に劇的になっていくストーリーもいいんだけど
なんてことのない文章のひとつひとつに
人生の楽しみというか
ああそういう感じ方って楽しいかも
って思えるものがあって
ぼくも自分の生活をこういう視点でみつめられたらいいのにな
ってそんな風に思う。
恋愛部分も良かったけど
あかちゃんとの暮らしのところが最高だった。
--最初の悪い男--
ミランダ・ジュライ
岸本佐知子 訳