ひる(16) | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

  といっても彼らの組織が自ら大々的に組織を名乗ってこれらの活動をおこなっているわけではない。組織の全貌はごく少数の幹部を除いてわからないことになっている。

 彼らの組織は数多くのグループに分かれており、さらにその各グループは細かく枝分かれし、そして各グループ間の横のつながりがないうえに、他のグループがどのような名称でどのような活動をしているのかも知らされていない。

 実際の活動の現場では共同で作業していることがしばしばあるのだが、お互いに同じ組織であるとはわからないようになっているのだ。

「それにしてもこのカシオペア#1は見れば見るほど魂が吸い込まれるようだな」

「それはそうだ。この箱は宇宙を模した美しくてセンチメンタルな箱庭のイメージで捉えられているが実際はそんな抽象的なものではなく、もうひとつの宇宙そのものをこの箱のなかに封じ込めているのだからな。ひとたびこの箱を開けてしまうと、中の宇宙と外の宇宙とが交じり合い、外の宇宙、つまり我々がいまいるこの世界は消えてなくなってしまうということらしい。だからこそ魂が吸い込まれそうな感覚に囚われるのだろう」

「恐ろしい箱だな」

 二本の銀色の金属の棒の上を転がる白い球体、背後には濃紺の星図。あの作品は国立の美術館で見たことがあるが、宇宙そのものだというのか。そんな重要なものを、たったのふたりで、しかも電車なんかで運んでいて大丈夫なのだろうか?

 そんなことを考えていると、いつの間にか男たちの声は聞こえなくなっていた。どうやらほかの車両にでも移ったのだろう。しばらく前方のレールの流れに視線を預ける。風景を割いて進んでいく。