ぼくが江國香織さんの作品を読んだのはこれが2冊目。
ほんとに
なかなか暮れない夏の夕暮れ
って感じの雰囲気。
親譲りの資産家だからか
働いてなくって小説ばっかり読んでる主人公の稔。
この小説のなかでは2つの作品を読んでる。
ミステリの部類に入るのかな。
本編とは直接関係がないはずの2つの小説が
なんだか妙に本編とリンクしてるみたいに感じられるから不思議だ。
江國さんの小説は
登場人物たちの微妙な感情の表現がすばらしいんだけど
この作品は技巧的にも本好きをうならせる。
っていうか
本好きにとっては至福の読書時間を共有させてくれる。
入り込んでいる本の世界から引きはがされて
現実のあれやこれやに戻るときの
本と現実とのあわいのあの感じ。
稔がそんなに早く読むタイプじゃないのもいい感じ。
できるだけゆっくりたっぷり作品の世界に浸かっていたいからね。
稔と雀と波十が
三人で静かに読書する場面が好き。
読書好きの行動原理を理解できない周囲のひとたちの描写もいい。
まあひとそれぞれだから仕方がない。
どっちがいいとかわるいとかはない。
そして
ラストでにんまり。
--なかなか暮れない夏の夕暮れ--
江國香織